「進まない・・・」「野菜嫌い?」離乳食の悩み|理学療法士が伝える!楽しくすくすく育つコツVol.20

みなさんは、毎日の子育てを楽しんでいますか。喜びを感じるひとときもあれば、ふと「こんな時、どうしたらいいの?」「これって、このやり方でいいの?」と、迷いが出てくることもあるのではないでしょうか。運動発達の専門家である理学療法士・得原藍さんによる、楽しみながら子どもの育ちをうながす親子の関わり方のコツを教わる連載です。

離乳食が進まず困っています

得原さん、こんにちは!生後6ヶ月半の男の子の母です。
先月から、少しずつ離乳食をスタートしています。おもゆから始め、おかゆは大好きでおかわりしたがるほどなのですが、にんじん、かぼちゃなどの根菜系は見向きもせず、スプーンを持っていってもそっぽを向いてしまったり、口をがんとして開けなかったり、なかなか手ごわいです。ペーストをおかゆにまぜても反応はイマイチ・・・無理強いはしたくないのですが、このまま野菜嫌いになってしまわないか心配です。上手に誘ってあげて、一口食べてみてみたら「あれ、おいしいかも?」なんて思ってもらえたらいいのですが、そのきっかけがまったくつかめません。どうしたらいいでしょうか。

(Tさん/お子さん生後6ヶ月半)

離乳食の好き嫌いは心配しすぎずに

こんにちは。ご質問いただきありがとうございます!生後6ヶ月半の男の子と一緒に生活されているんですね。出産から半年、いろいろ慣れないことが多くて大変な時期だと思います。毎日本当におつかれさまです。
ご相談は離乳食について、ですね。おもゆからはじめて、今はおかゆを食べているとのこと、離乳食は5ヶ月頃からスタートしたのですね。にんじんやかぼちゃ、いまあまり好きでなくても大丈夫ですよ。この時期に気に入らないものを一生好きにならないわけではありません。栄養についても、大丈夫です!

とはいえ、食事は生活の基盤ですから、心配になるのもよく分かります。そこで今回は、離乳食の時期ごとの意味合いについて一緒に考えてみたいと思いますので、ゆっくり読み進めてくださいね。

離乳食は、時期ごとに役割が違う

まず、いまの時期の離乳食は、いろいろな食べものを身体に経験させることが目的だと考えてください。これは、味という意味ではなく、成分として、です。大人がイメージする食事というのは、栄養摂取や味を楽しむことが目的かもしれませんが、離乳食を始めたばかりの赤ちゃんにとっては「母乳以外のものを身体に取り込む練習」です。身体にとっては、いろんな食物の成分に慣れていく頃ですし、心にとっても、はじめてのものを口に入れてみる練習をしていく段階です。ほんの少しの量から始めるのは、万が一アレルギーなどがあった際に大きな問題にならないようにするため。ひとつずつ食材を試していくことができれば大丈夫です。生きるための栄養も、まだ母乳やミルクから得ている栄養で十分なので、あまり気にしないでくださいね。

離乳食から「食事」へ変わるタイミング

では、いつごろから、離乳食は大人がイメージする食事に近づいてくるのでしょうか。時期には個人差がありますが、ずり這いなどの「移動」をはじめたら、と思っていてください。この頃になると、食べものを食べものと認識して、自分から近づいていくことができますし、食べることへの意志を表明することもできるようになってきます。移動することでエネルギー消費が増えて、お腹が空くようになるんですね。また、ずり這いを繰り返すことで、背中・胸から首にかけての筋も発達して、もぐもぐと、咀嚼や嚥下も上手になってきます。逆に言えば、それ以前の赤ちゃんの食べる動作は、口に入るものを飲み込んでいるだけ、とも言えるでしょう。噛んだり、飲んだりする動きも運動なので、他の身体の部位の運動や成長と連動して、上手になっていくのです。はいはいで移動するようになる頃には、自分で食べものに手を伸ばせるようになるので、柔らかく煮て、口の中で潰せるような硬さの野菜をスティックのような形でわたしてみましょう。もちろん味の慣れ・不慣れで好き嫌いも出てくるかもしれませんが、お腹が空いて、目の前に食べ物が出されて、自分から手に取るというプロセスは、赤ちゃんにとっても食欲と密接に関係するものです。少し、好き嫌いが解消してくるかもしれません。

親も一緒に食事を。楽しそうに食べる姿を見せてあげよう

今の時期から離乳食を進めていくにあたって、赤ちゃんが食事を楽しいと思うことができるような工夫も、紹介しますね。

まずは、毎回でなくてもいいので、お母さん自身が美味しそうにご飯を食べているところを赤ちゃんに見せてあげてください。もしお父さんや、そのほかの家族がいる時間があれば、家族で食卓を囲むのも良いでしょう。これまでいろいろな場所でお会いして相談を伺ってきたお母さんたちの中には、食事は赤ちゃんが寝ている間にこっそりぱぱぱっと済ませます、という方が少なからずいらっしゃいました。わたし自身も、子どもが小さいときは夫が単身赴任でいわゆるワンオペだったので、その気持ちもとてもよくわかるんです。手間がかかる赤ちゃんの食事の横で、自分が食べている余裕なんて・・・と思いますよね。でも、赤ちゃんにとっては食べるという行為自体がはじめて。何もわからないまま、ある日お母さんが真剣な顔をしてスプーンを口の中に入れてきたり、はじめての食感・はじめての味のものを急に口の中に入れられたり、それはなかなかスリリングな体験でしょう。赤ちゃんは、大人のことをよく見ています。そして、真似をします。ですから、食べることも、見るだけの時間がたっぷりあっていいのです。大人が食べている横で、もし自分も食べたいようなそぶりがあったら、お母さんの食事と一緒に茹でておいた野菜を少し取り分けておいて、軽く潰して少し口の中に入れてあげましょう。そして、おいしいねえ、と声をかけてあげてください。ご飯って、おいしいんだよ、楽しいんだよ、とお母さんが笑顔で語りかけてあげることが、赤ちゃんにとっての食体験のスタートになります。

「食べる?」「どれから食べる?」赤ちゃんに食事の主導権を

もうひとつは、食事の主導権を少しずつ赤ちゃん自身に委ねていくことです。例えば、食卓に離乳食を出したら、「食べる?」と聞いてあげてください。最初は意味がわからないかもしれませんが、少しずつ理解が進んでいきます。食べる?と聞かれたら、それはご飯の合図なんだな、とわかってくると、気持ちの準備ができてきます。そして、食べものを目の前に並べたら、「どれから食べる?」と聞いてみましょう。はいはいする頃になると、指差しもできるようになってきているでしょう。その頃には、離乳食も種類が増えているでしょうから、口に入れる順番を聞いてみるのです。自分の興味に沿った順番で食べる、というのは、食への興味にもつながります。また、もしカトラリーを使いたい様子があれば、握らせてあげてくださいね。上手に使えるようになるのはまだ先のことですが、自分でお母さんの真似をして何かしたい、と思ったときが一番伸びるときなのです。周りを汚してしまうこともあるかもしれませんが、急がば回れ、誰でも一時期はこぼしたり汚したりするものですから、興味のあるうちにいろいろ体験させてあげましょう。

「楽しく食事をとる」が離乳食のゴール

離乳食のゴールって、なんだと思いますか。それは、楽しく食事をとる習慣をつけることです。お腹が空いたという身体のシグナルを感じて、食べたいという気持ちが湧いて、用意してくれたご飯をワクワクしながら眺めて、何から手を付けるか決めて、楽しい雰囲気の中で食事をする。それをゴールと考えると、時計どおり教科書どおりに食べものを口の中に入れる離乳食って、なんだか味気なく感じませんか。赤ちゃんの受け継いだ人間としての遺伝子の中には、食べたい、と思う気持ちもインプットされています。大人の食事を赤ちゃんがどんな様子で見ているか、口に入ったものをどんなふうに体験しているか、よく観察してみてくださいね。もし嫌そうだったら無理強いはせず、お母さん自身がそれをおいしいねと言って食べてみせてあげて、また次に出してみよう、と気軽に考えてみてください。大丈夫、お母さんがいろいろ頑張ってくれてること、赤ちゃんも感じていますよ。そして、みんな、いつか離乳食を終了して、大人と同じ食べものを食べることができるようになります。安心してくださいね。

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ライター / 得原 藍

理学療法士。大学卒業後、会社員を経て理学療法士の資格を取得。病院勤務を経てバイオメカニクス(生体力学)の分野で修士号を取得。これまでの知識や経験を生かし、現在は運動指導者の育成、大学の非常勤講師などを務める。また、子育て支援団体との協働で運動発達に関する相談を受けたり、外あそび活動などを行っている。6歳男児の母。