本当に「個人差」で大丈夫?なかなか寝返りを始めない子ども|理学療法士が伝える!楽しくすくすく育つコツvol.18

みなさんは、毎日の子育てを楽しんでいますか。喜びを感じるひとときもあれば、ふと「こんな時、どうしたらいいの?」「これって、このやり方でいいの?」と、迷いが出てくることもあるのではないでしょうか。運動発達の専門家である理学療法士・得原藍さんによる、楽しみながら子どもの育ちをうながす親子の関わり方のコツを教わる連載です。

<目次>
・なかなか寝返りを始めない子ども
・焦らなくて大丈夫。まずは行政の6ヶ月検診で相談しよう
・「寝返り」の手前にはどんな動作がある?
・「あれに触りたい」「あそこまで行きたい」。意思を育む関わりとは
・動き始める赤ちゃんにとって快適な環境を

なかなか寝返りを始めない子ども

得原さんこんばんは。もうじき6ヶ月になる女児の父です。
育児雑誌などで、生後4〜6ヶ月になると寝返りを始める、と書いてありますが、娘はなかなか寝返りをする気配がありません。このまま放っておいていいものか、少し心配です。なんらかの働きかけ次第で寝返りを促せるようでしたらぜひ教えてください。

また、本には「個人差がある」と書いてありますが、こういう場合の「個人差」とはどのくらいの幅を考えればいいでしょうか?専門医に相談した方がいい目安などあれば教えてください。

(静岡県/Mさん)

焦らなくて大丈夫。まずは行政の6ヶ月健診で相談しよう

ご質問をお寄せいただきありがとうございます。お子さんがもうじき6ヶ月とのこと、新生児の頃から比べたら、ずいぶん大きく成長されたのではないですか。ここまでお子さんが元気に過ごされてきたこと、お父さん、お母さんも頑張りましたね。
いただいた質問は寝返りについてでした。確かに、4〜6ヶ月で寝返り、という情報はいろいろなところに掲載されていますね。遅れすぎなら専門医に、ということですが、そろそろ6ヶ月健診もありますね。子どもたちの成長を見守るために自治体が行っている健診では、運動発達についても成長を確認します。案内が来ているようでしたらぜひそちらにも参加してください。

もし本当に、何か医療者が関わらなければならないような問題があれば、健診でなんらかのお話があると思います。単純に「寝返りが遅い」ということだけならば、多くの場合、経過観察しましょうということになります。「経過観察」は、問題あり、というわけではありません。なくて、成長の過程なのでもう少し待ってみましょうか、という意味ですので、あまり心配なさらずに。

0歳児の運動発達の個人差については、一概に何ヶ月程度、といえるものはありません。寝返りのタイミングが4ヶ月の子でも8ヶ月の子でも、順調に運動ができるようになっていけば、それでいいのです。「どのくらい早く寝返ったか、どのくらい早く歩けるようになったか」は、将来の運動能力とも関係がありません。寝返りができた、という「点」で発達を見るのではなくて、そこまでの「道」で見てあげるといいと思います。

「寝返り」の手前にはどんな動作がある?

では、寝返りという運動について、そのためにはどのような動作が「手前の動作」なのか考えてみましょう。

まずは、お母さん、お父さんも試してみましょうか。床で仰向けになって、ご自身でうつ伏せまで寝返ってみてください。身体のどんな部分を動かしましたか。多くの人は、下半身・脚を曲げて寝返るのではないでしょうか。それから、上半身と下半身が捻れるような動きも大切ですね。大人は普段、自然と行っているので気がつきませんが、寝返りって意外と、全身を使う運動なのです。

これを踏まえて、赤ちゃんの運動について考えてみましょう。赤ちゃんの運動の発達は頭から足の方へ向かって進んでいきます。まずは首が据わって、手を自由に動かすようになって、おもちゃや自分自身の手を口に入れて確かめて遊んだりするようになります。そこから、身体を捻ったり、下半身を持ち上げて足の指を舐めてみたり(笑)、仰向けで自由に身体を使えるようになってくると、寝返ってうつ伏せになろう、という動きが出てきます。しっかり寝返りするようになるまでには、斜めになってみたり、横向きになってみたり、そこから仰向けに戻ったり、床でいろんな動きを楽しむ過程も必要です。

どうでしょう、今、お子さんは仰向けでどんな遊びをされていますか。おもちゃを口に持っていって遊びますか。足を持って身体を揺らしたり、仰向けのまま少し回転して、いつの間にか頭と足が逆方向になっているようなことはありますか。横から話しかけたり、自分の横にあるものに興味があったら、横を向いたり、横へ手を伸ばそうとしますか。まずは仰向けでできる限りの様々な動きができるようになることが、寝返りの「手前」で大切なことです。今どのような動きが出ているか、観察してみてくださいね。

「あれに触りたい」「あそこまで行きたい」。意思を育む関わりとは

次に、運動に関わる意思について考えてみましょう。赤ちゃんの動きって「興味がある方向」に向かって「手を伸ばしたい」「移動したい」と思うところから出てきます。ですから、首がすわって、差し出したおもちゃを両手で掴んで、床でごろごろ遊べるようになってきたら、おもちゃは横に置いておいてもいいんです。厳しくしろ、というわけではなくて、「自分でとってごらん」という気持ちで優しく見守ってあげてください。そう、赤ちゃんはもう、全てをお世話される時間から離れようとしているんです。

身体が少しずつ自由に動かせるようになってきたら、意思が動きに現れてくるようになります。欲しいおもちゃに手を伸ばしたい、おもちゃのある場所にいきたい、もっと広い視野でお部屋を眺めたい、そんな意思から、動きは出てきます。そこを大人は汲み取ってあげて、どの程度助けてやるのか、考えていきたいところですね。もちろんまだまだ思う通りには身体を動かせませんし移動もできませんから、お母さん・お父さんの方を見て、大きな声を出して呼んでみたり、泣いて訴えたりすることもあるでしょう。家族ですから、お互いのやり取りの中でちょうどいい手助けの形を探してみましょう。

動き始める赤ちゃんにとって快適な環境を

動きを見守ってあげることの他に、いくつか環境の調整についても考えたいと思います。仰向けで寝たきりの状態から、寝返って動いていくようになるわけですから、赤ちゃんにとっての快適な環境も変わってきます。

もし、普段柔らかいベビーベッドにいる時間が長く、床(カーペットや畳くらいの硬さのところ、フローリングでもOK)の上であんまり遊んだ経験がないようでしたら、ぜひ、床で過ごす時間を増やしてあげてください。比較的硬い床面のほうが、身体を回しやすいです(大人も、ウォーターベッドのような柔らかいところでは動きづらいですよね)。

それから、ベビーベッドの大きさにも注意してください。長い時間ベビーベッドにいる場合、寝返りをしようとしても柵があって転がれない、ということもあります。寝ついてからベビーベッドに下ろして睡眠をとってもらうのは良いですが、動き出した赤ちゃんの「居場所」としては、ベビーベッドは狭いです。何度回ろうとしても柵に阻まれて廻れない場合、回らない、ということを選択する子どももいます。やっても無駄だ、と判断してしまうということですね。せっかくやろうとしていたのに、もったいないですよね。

この先、寝返りからずり這い、ハイハイへと移行するにも、居場所の広さはどうしても必要になってきます。お部屋の模様替えも含めて、一時的に「床を移動する人(赤ちゃん)に快適な環境」に整える必要があります。でも大丈夫、これは一時的なことです。歩き出して、椅子やベッドに自分で登ったり降りたりできるようになれば、大人と同じ環境に戻していくことができます。

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ライター / 得原 藍

理学療法士。大学卒業後、会社員を経て理学療法士の資格を取得。病院勤務を経てバイオメカニクス(生体力学)の分野で修士号を取得。これまでの知識や経験を生かし、現在は運動指導者の育成、大学の非常勤講師などを務める。また、子育て支援団体との協働で運動発達に関する相談を受けたり、外あそび活動などを行っている。6歳男児の母。