気になるトイレトレーニングの始めどき|理学療法士が伝える!楽しくすくすく育つコツvol.14

みなさんは、毎日の子育てを楽しんでいますか。喜びを感じるひとときもあれば、ふと「こんな時、どうしたらいいの?」「これって、このやり方でいいの?」と、迷いが出てくることもあるのではないでしょうか。MotherRingサポーターでもある運動発達の専門家、理学療法士・得原藍さんによる、楽しみながら子どもの育ちをうながす親子の関わり方のコツを教わる連載ですMotherRingJOURNAL読者のみなさんから寄せられた「子どもの発達」や「育児」についてのお悩み相談に、詳しく丁寧にお答えします。

目次
・トイレトレーニングの始め方は?
・親子双方でストレスなくおむつを外すには?
・子どもの身体とトイレトレーニングのタイミング
・はじめてのトイレのハードルを下げよう
・親にも子にもプレッシャーは禁物

子どものペースに委ねたい、といいつつ
実は自分も気が重い・・・トイレトレーニングの始め方は?

得原さん、こんにちは!2歳8ヶ月の男の子の母です。トイレトレーニングについて相談させてください。子どものペースに合わせて進めようと思っていたら、あっという間に友達が続々とおむつを卒業していて、最近になって焦っています。さすがにもう始めた方がいいのでしょうか。トイレトレーニングを始めるべきタイミングや、具体的な進め方を教えてください。
正直いうと、トイレトレーニング自体、気が重いです。「最初は失敗もつきもの」とは分かっていても、子どももおもらしをしてしまうとかわいそうだし、私も掃除や洗濯でストレスがかかりそうです。親子ともども、できるだけ楽しく無理なくトレーニングできるような方法も、教えていただけるとさらに嬉しいです。(東京都:Mさん)

親子双方でストレスなくおむつを外すには?

こんにちは!ご相談くださってありがとうございます。トイレトレーニングについて、いつ始めたらいいのかなあ、と考えていらっしゃるのですね。おむつはいつか外れるだろう、と思ってはいても、いつなのかな?みんなはどうしているのかな?と考えはじめると、答が見つからなくなる気持ち、とてもよくわかります。幼稚園の入園などを控えていることで焦る、というお話もよく聞きます。もしも、親子双方でストレスなくおむつを外すことができたら、ハッピーですよね。
すべての子どもに当てはまる方法、というものはないのが育児ですが、トイレでの排泄について考えるときに、いくつか知っておきたい事柄があります。それをもとに、おむつを外していく段階について考えてみましょう。

子どもの身体とトイレトレーニングのタイミング

まず、3歳前後の子がトイレに行くという行為を、分解して考えてみましょう。

・尿が溜まっている、と気づく
・尿が溜まったと親に知らせる、あるいは自分でトイレに行く
・衣服を脱ぐ
・便座に適切に座る
・座ってから排尿する
・排尿したら親に知らせる、あるいは清拭する
・衣服を着る

注目したいのは、尿が溜まっていると気づいてから、便座に座るまでには時間が必要、ということです。尿意は、1歳から2歳にかけて徐々に感じることができるようになりますが、この頃はまだ膀胱の機能が発達しておらず、膀胱がいっぱいになったら無意識に尿が出てしまいます。膀胱がいっぱいになっても、少しのあいだ筋肉を使って出口を締めておく、という作用が発達してくるのは2歳から3歳のあいだで、個人差も大きいのです。

またその先で、便座にいざ座っても、排尿する時の力の抜きかたがわかるまでに少し時間がかかることもあります。そこは本人が掴むしかないコツなので、直接教えてあげることはできませんが、膀胱の入り口を締める筋肉はリラックスしないと緩まないので、子どもが緊張しないように穏やかな気持ちで見守ってあげましょう。

お子さんは2歳8ヶ月ということでしたね。徐々に身体が尿を溜めておける時間が長くなってきている頃でしょう。お子さんを見ていて、排尿の前にモジモジしたり、遊んでいる動きが止まったり、あれ?おしっこかな?と思うような様子は見られますか。見られてくれば、そろそろ練習する準備はオーケー、と考えられます。ただ、これは身体の準備、ということ。つぎに、心の準備について考えましょう。

はじめてのトイレのハードルを下げよう

トイレに行くためには、心の準備も必要です。意外と多いのが
「トイレの水の音や便器に吸い込まれていく様子が怖い」という子どもの意見です。トイレって、個室ですし、親が入っているところを観察する機会も少ないですし、冬になれば寒いこともあります。子どもにとっては未知の場所なんです。お父さんやお母さんはあそこで排尿をしているらしい、という理解と、それがいま自分がおむつでしている排尿である、ということの頭の中でのつながりも必要です。

ですからまずは「お母さん、おしっこしにトイレに行くね」と説明してあげてください。そして、トイレは明るく入りやすい雰囲気にしましょう。家族での時間ですから、親の排尿の際にドアの外から子どもに様子を見てもらうこともひとつの方法です。むかしから使われている「おまる」には、トイレの場所としてのハードルと、尿意を我慢する時間のハードルを下げる役割があるわけです。

トイレという場所が怖くなくなったら、モジモジしているときにトイレに誘ってみましょう。そのとき、遊んでいる最中だと嫌がることもあるでしょう。おむつの中でしてしまえば、遊んでいられるわけですから、トイレに行きたくない気持ちもわからないではないですね。まずは遊んでいる最中以外のタイミングを見つけて誘ってみるのもいいですし、「トイレに入れたらシールをもらえる(おしっこできたら、ではなく、まずはモジモジタイミングでトイレに入れるだけでオーケー)」など、遊びの延長にしてしまうのもいいと思います。まだおむつはしているわけですから、

親も焦らずに、コツコツ誘ってみましょう。そして、もしも排尿までできたら、たくさん褒めてあげてくださいね。

子どものプライドを優しく守ってあげる

親がトイレに誘うようになって、ときどきトイレができるようになると、自分から尿意を訴えてきたりすることも出てくるでしょう。それはとても大きな成長です。自分でやりたい、伝えたい、という気持ちの表れですね。それが毎回でなくても、しっかり褒めてあげましょう。

この時期になると失敗なく毎回できるようになることを望んでしまう親心も出てきますが、グッと我慢です。いまお子さんは小さな一歩を積み重ねているので、失敗しても、できなくても、そこはスルーで良いのです。責めなくても、自分で失敗を悲観する子どももいます。感受性が豊かに育っている証拠です。そんな様子が見られたら、大丈夫だよ、少しずつ上手になっていくんだよ、と声をかけてあげましょう。

3歳を超えてくると、子どもも、少しずつ周囲の子どもたちへ目線が向くようになります。保育園など集団の場で自然にトイレができるようになった、という場合、身体の準備ができて、さらに月齢の高いお友だちがトイレに行く様子を見て「自分も!」と思うことで、一気に心理的ハードルを乗り越えられた、というパターンが珍しくありません。

しかしこれは表裏一体で、友だちに失敗を見られたくないからしない、という選択をする子もいます。そういうときに、親に失敗を責められてしまうと、子どもはさらにトイレに行きたい意欲を失ってしまうでしょう。「トイレができないと恥ずかしい」というような社会的な羞恥心が芽生えて行動を制御できるようになるのは、もう少し後のことです。親は受容の気持ちで子どもを見守りたいですね。

親にも子にもプレッシャーは禁物

身体の面からも心の面からも、緊張やプレッシャーはトイレトレーニングの敵です。周囲の大人が感じている緊張は、子どもは敏感にキャッチしますから、まずは大人が余裕を持って接することです。もしも下の子がいるなど忙しい環境で、親が心の余裕を保てないなら、急がば回れでゆっくりトイレトレーニングを始めてもかまいません。子どもを急かしてトイレ嫌いにさせてしまうと余計に時間がかかってしまうので、まずは自身の心身の余裕を振り返ってみましょう。朝でも夕方でも、両親が揃う休日だけでも、親が自分で「少し余裕があるな」と感じるタイミングからトイレトレーニングをはじめてみてはいかがでしょうか。

あと、ひとつ。できるようになっても、あるとき突然オムツに戻りたい、と言うこともあるかもしれません。そういうときには、受け入れてあげてください。一度できたことに戻るのは、それほど難しいことではありませんから大丈夫。心の準備を待てばいいのです。きっと、子どもにも、なにか思うところがあったのでしょう。ただ、それをうまく説明するだけの言語能力はまだ育っていませんから、どうしてか、と悩むよりも、受け入れて、また外したくなったら外そうね、と優しく見守ってくださいね。

参考:
https://www.jhpia.or.jp/product/diaper/baby/physical.html

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ライター / 得原 藍

理学療法士。大学卒業後、会社員を経て理学療法士の資格を取得。病院勤務を経てバイオメカニクス(生体力学)の分野で修士号を取得。これまでの知識や経験を生かし、現在は運動指導者の育成、大学の非常勤講師などを務める。また、子育て支援団体との協働で運動発達に関する相談を受けたり、外あそび活動などを行っている。6歳男児の母。