歩かない、帰りたがらない・・・子どもとの散歩を楽しむには?|理学療法士が伝える!楽しくすくすく育つコツvol.19

みなさんは、毎日の子育てを楽しんでいますか。喜びを感じるひとときもあれば、ふと「こんな時、どうしたらいいの?」「これって、このやり方でいいの?」と、迷いが出てくることもあるのではないでしょうか。運動発達の専門家である理学療法士・得原藍さんによる、楽しみながら子どもの育ちをうながす親子の関わり方のコツを教わる連載です。

<目次>
・子どもとの散歩が苦痛・・・どうしたらいい?
・子どもには、道にあるもの全てが面白い
・離れても見ていてもらえる安心感
・帰る時には早めの声かけで心の準備を
・帰り際のイヤイヤは、他の理由がある場合も

子どもとの散歩が苦痛・・・どうしたらいい?

得原さん、こんにちは!1歳9カ月の男の子の母です。

最近、子どもとの散歩が苦痛でたまりません。徒歩で10分ほどの公園へ毎日遊びに行くのですが、「公園に行こう」と誘うと喜ぶのに、靴を履かせるのにまずひと苦労、外へ出て歩き出してもすぐに他のことに気を取られて立ち止まったりしゃがんで動かなくなったりしてしまいます。子どものペースを大事にしようと思っていったんは見守ってみるのですが、公園で遊ぶ時間が短くなってしまうとそれはそれで機嫌が悪くなるので、結局「ほら、行こう!」と急かしてしまいがちです。(そもそもしゃがんでいる子どもをじっと見ているの自体も苦痛です・・・)
また、道路は危ないので手を繋いでいるのですが、いやがって手をふりほどこうとするのにもストレスを感じます。ベビーカーに乗せれば済んでしまう話ではありますが、歩行の練習も兼ねて散歩の習慣はつけたいと思っています。

わたしも、本当は子どもともっと楽しくのんびりと散歩をしたいのです。何かいいヒントをいただけると嬉しいです。

(千葉県/Mさん)

子どもには、道にあるものすべてが面白い

こんにちは。お散歩について悩まれているとのこと、ちょうどお子さんも自分でいろいろやりたい時期ですし、「〜してほしい」と思ってもうまくいかないことがありますよね。楽しくお散歩をしたいな、というお母さんの気持ち、とてもよくわかります。まずは、歩き始めたお子さんの気持ちについて、発達の観点を含めて一緒に考えてみましょう。

お子さんは1歳9ヶ月ということですが、そのくらいの時期は、少しずつ外の世界への興味が溢れ出てくる頃です。もちろん、子どもによっては新しい場所に慣れるのに時間がかかったりして、人見知りならぬ場所見知りのような様子を見せる子もいますが、ご相談の内容のようによく歩く道でしたら、おそらくその道にある全てに興味津々なのではないでしょうか。

よく歩く道なのに興味津々とはどういうことかしら?と思われるかもしれません。でも、まだこの月齢の子どもたちは「今を生きている」と言っても良いくらい、そのときどきの状況をその都度新鮮に楽しめる時期なのです。まだ、昨日、今日、明日、のような時系列に保っておける記憶が発達途上なので『毎日毎日同じことをする』のも楽しいのですね。大人にとっては何が楽しいの?と思うようなものへ執着したりもしますが、実はこれが大切なことで、毎日同じことを繰り返すことで少しずつ、記憶の回路が出来上がっていっているのです。そして、まずは家の中から、それから近所へ、いつも遊びに行く公園へ、と、彼らの世界の認知も少しずつ広がっていきます。彼らの中に、空間的な地図が体験とともに蓄積されていくわけです。ですから、近くにあるもの、毎日触れるものに興味がある、ということは発達にとってとても大切なプロセスです。

離れても見ていてもらえる安心感

また、公園への道すがら、いろんなものに興味を持つ中で、ちらっとお母さんの顔を確認するような様子もあるのではないでしょうか。これは、発達の過程でこれまで一心同体のように認識されていたお母さんから、1メートル、2メートル、と少しずつ離れて自立していく過程において、お母さんを見て心を安心させている行為でもあります。離れても見ていてくれるな、と確認することで、安心して距離をとることができるんですね。そういった意味でも、子どもは少しずつ自分の周辺で安心して動ける範囲を見つけながら育っていっています。ですから、公園までの道のりで立ち止まってしまうときにも、大人が思う以上にいろんな発見と成長をしているのだと思って観察してみてください。そして、ちらっと振り返ったときには、その手の先にあるもの、子どもの目の先にあったものについて「おはなだね」「くるまだね」「ありさんだね」と、声をかけてあげると、言葉の理解も進みます。気になるものがあるときに教えてもらうことが、一番覚えるんですよね。

帰る30分前の声かけで心の準備を

公園までの移動に時間がかかってしまうと公園での遊び時間が短くなってしまう、というお悩みもありましたね。どうしても、遊びを中断されてしまうと不機嫌になってしまいますよね。まずひとつ目に工夫できるポイントとしては、「帰るよ」の前に、30分くらい前から何度か「もうすぐ(ご飯だから・お昼寝の時間だから)帰るよ」の声かけをしてあげてください。突然やめさせられるよりも、事前の心の準備ができたほうが従いやすいです。歩く頃になると、お母さんの言っている言葉の意味は、よくわかっています。わかっている上で、まだまだ「自分のやりたいこと」と「お母さんに言われたこと」を天秤にかけたときに、「自分を我慢してお母さんを優先させる」ということが難しいんですね。この点に関しては、就学年齢に向けて徐々に成長していく脳の機能なので、焦らずにいてくださいね。(前頭葉という部分ですが、最新の研究では30代まで成長を続けると考えられています。)

帰り際のイヤイヤは、他の理由がある場合も

次に試してみることができる方法として、ぐずってしまうときの子どもの様子を観察してみてほしいと思います。1時間、2時間と移動して遊んだあとでぐずってしまう場合、お腹は空いていませんか。また、眠くなってはいませんか。これらの身体的な要素は、子どもが機嫌を保てなくなる大きな要因です。遊んでいるときはそれを凌駕するほどの楽しさなので気づかないでいても、ふと帰るとなって現実に戻ると、空腹や眠気が遊びをやめなければいけないことの不満と重なって、大騒ぎになってしまうことがあります。子どもの胃は小さいので、大人よりも短時間で空腹になってしまいますし、2歳前後ですとまだお昼寝もたっぷりしたい頃ですね。出かける時間を調整して昼寝にかぶらないようにすること、外出の時は簡単に口にできるおにぎりのようなものを少し準備して、帰り際に少し食べてもらうなどすると、少しイヤイヤも減ってくるかもしれません。ぜひ試してみてくださいね。

お母さんがおっしゃるように、この時期にどのくらい外で歩くかは今後の身体の成長のためにとっても大切です。そのことを認識してチャレンジしていること、お母さん、とてもいい視点です!毎日少しでも歩いて、お腹が空くと食べますし、体が疲れると眠ります。子どもの規則正しい生活は心身の発達を助けますから、ぜひこれからも外でのお散歩を続けてくださいね。そうそう、一緒に歩くお友達を見つけると、子どもたちどうしはそれぞれ勝手に歩いていたとしても、お母さんの会話相手がいることで、子どもの道草も楽しめるようになるかもしれませんよ。

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ライター / 得原 藍

理学療法士。大学卒業後、会社員を経て理学療法士の資格を取得。病院勤務を経てバイオメカニクス(生体力学)の分野で修士号を取得。これまでの知識や経験を生かし、現在は運動指導者の育成、大学の非常勤講師などを務める。また、子育て支援団体との協働で運動発達に関する相談を受けたり、外あそび活動などを行っている。6歳男児の母。