身体の地図を作るための親子の身体遊び|運動発達の専門家、理学療法士が伝える!楽しくすくすく育つコツvol.8

みなさんは、毎日の子育てを楽しんでいますか。喜びを感じるひとときもあれば、ふと「こんな時、どうしたらいいの?」「これって、このやり方でいいの?」と、迷いが出てくることもあるのではないでしょうか。運動発達の専門家である理学療法士・得原藍さんによる、楽しみながら子どもの育ちをうながす親子の関わり方のコツを教わる連載です。

身体の地図を作るための親子の身体あそび

「身体の地図」という言葉を聞いたことがありますか。人間の脳には、全身から受け取る感覚と、全身を動かすための運動の地図が作られています。大人でも子どもでも、この地図は身体を使うことによって書き換えられていくと考えられています。そして、生まれて間もない乳幼児期は、この地図が作られていく時期でもあります。しっかりした地図を作るためには、赤ちゃん自身がしっかり身体を動かすこと、そして関わる大人が身体の動きを大切にしてあげることが重要です。今回は、新生児期から親子でできる身体あそびを紹介します。

『脳に作られる身体の感覚と運動の地図』
「看護roo 看護師イラスト」サイトより https://www.kango-roo.com/ki/

胎内から作られる身体の地図

実は、身体の地図は、お母さんの胎内にいる頃から少しずつ作られています。お腹の中で動く赤ちゃんたちは、自ら身体を動かして、子宮の壁の感覚を脳に刻み込んでいたんですね。お母さんのお腹から出たあとも、一生懸命、身体を動かそうとします。新しい世界でどのように身体を動かしたらいいのか、どんな動きのときにどんな感覚が得られるのか、試行錯誤しているのです。
生まれてからも、その試行錯誤はずっと続いていきます。まるで小学生が自転車の運転を練習するように、トライアンドエラーを繰り返しながら身体を動かして、そのプロセスで身体の地図は詳細に精密になっていくのです。

床でのゴロゴロと素手での抱っこ

まず大切なのは、赤ちゃんの自由な動きを妨げないことです。それには、あまり柔らかすぎない布団の上で、ゴロゴロしている時間が大切です。ご機嫌なときには、ゴロンとさせてあげましょう。抱っこは、赤ちゃんが丸くなるように横抱きにしてあげてください。素手での抱っこのスキンシップは、大事な身体あそびのひとつです。ベビーキャリアで拘束するのではなく、手で優しく包み込まれる感覚を赤ちゃんに感じさせてあげましょう。
(子育て支援施設amigoで紹介している抱っこの動画「【新生児】首すわり前 赤ちゃんの抱っこのコツ https://youtu.be/ZKxaZm3IwRk も、参考にしてみてください。)
素手での抱っこをいろんな大人にしてもらうのも、赤ちゃんにとってはいい経験です。体格や、抱きかたや、揺れ、声かけなど、抱っこから赤ちゃんが感じるさまざまな要素にバリエーションが生まれます。この記事が公開される頃はまだコロナ対策中で社会情勢が整わないかもしれませんが、まずは家族や親戚から、複数の大人が赤ちゃんと触れ合うことができるといいですね。

お腹の上でうつ伏せしてみよう

うつ伏せは危険、と言われることがありますが、見守りのもとで短時間うつ伏せになるぶんには大丈夫です。それどころか、運動発達にうつ伏せは欠かせません。まずは、仰向けになったお母さん・お父さんのお腹の上で、うつ伏せにしてあげましょう。心臓の音や、体温や、身体の揺れを感じるあそびです。はじめは1〜2分、泣いて嫌がったら、起こしてあげてください。
首の据わっていない赤ちゃんをうつ伏せにするときには、大人が座って安定した状態で、抱っこの姿勢でしっかり首を支えて、ゆっくり後ろに倒れるようにすると安心です。起き上がるときも同じように、首の支えは忘れないでください。産後すぐのお母さんは腹部の筋が回復していないので、背中にクッションを当てるなどして、ゆっくり動いてくださいね。

手足を優しく触ってあげよう

新生児期は、手足が床から浮くような状態になっていることが多いですね。その姿勢で手足を動かして、何かと接触できるかな〜?と探しているようにも見えます。その後、首がしっかりしてくるにつれて手足のポジションも変わってきて、少しずつ何かに手を伸ばそうという動きも出てきます。お母さんやお父さんに余裕のあるとき、赤ちゃんがゆったりしているときに、手足を優しく触ってあげてください。

触るときには、膝に抱えたウサギの背中を撫でるようなやさしさで、手足を満遍なく触ってあげます。掌や、足は、軽く握ってあげましょう。
外から身体に触れられることで、赤ちゃんは、自分の身体への認識が強くなっていきます。スキンシップをとることで、これから先、自分の意思でしっかり身体を動かす土台を作ってあげることができます。

ゆらゆらあそびをしてみよう

首が据わるまでは、しっかり首を支えて、まあるい抱っこの姿勢のまま一緒にゆらゆら揺れてみましょう。首が据わったら、縦抱きでも大丈夫です。大人は、下半身をしっかり使って、ゆっくり上下左右に揺れてあげます。赤ちゃんの耳の奥には、大人と同じように三半規管があって、感じた揺れを脳に届けています。運動の発達には、首から下の身体の動きと、視覚や平衡感覚への刺激が大切になります。ゆったりしたリズムの歌を歌ったり、歌が得意でなければ鼻歌でも構わないので、楽しい気持ちを共有するようにあそんでみてください。

基本は「自分の動き」を大切にすること

さて、いくつか親子でできる身体あそびをご紹介しました。首が据わって身体がしっかりしてきてからは、もっと大きな動きを安心してできるようになってくると思います。ここまでご紹介したあそびを継続しながら、お子さんの好きな身体あそびを探してみてください。触られるのが好きかな?揺れるのが好きかな?好みはあれど、大人の身体との触れ合いはいつも子どもたちの身体にとって大切な刺激になります。
ただし、基本的には、子どもが自分で身体を動かせる状態にあることが、運動発達の基本条件です。その子が、仰向けの状態から、自分でできる動きまで、を意識して時間を過ごせるように配慮してあげてください。床から寝返って、ハイハイして、自分でお尻を持ち上げて床に座れるようになって、そこから立ち上がる。先取りしようとせず、本人のペースでじっくりと運動を経験させてあげましょう。

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ライター / 得原 藍

理学療法士。大学卒業後、会社員を経て理学療法士の資格を取得。病院勤務を経てバイオメカニクス(生体力学)の分野で修士号を取得。これまでの知識や経験を生かし、現在は運動指導者の育成、大学の非常勤講師などを務める。また、子育て支援団体との協働で運動発達に関する相談を受けたり、外あそび活動などを行っている。6歳男児の母。