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JOURNAL

「こうでなければ」はもっと減らしていい。自分で選ぶ子育てと働き方

2021.09.10

ファミリーサポートで地域の子育て支援に取り組む川上朝子さん。川上さんの本業は歯科医。通常のお仕事に加えて、地域の子育て支援センターで、小さな子をもつ親向けの歯科講座を開催しています。子育てに思いをもつ川上さんが、ファミリーサポートの現場で日々感じていることを伺いました。

新生児サポートとは

八田:ファミリーサポートには、新生児のいるご家庭向けのサポートもあるそうですね。

川上:はい、わたしの住む自治体では、「新生児サポート」といって、生後半年まで利用できる制度があります。利用会員さんのご自宅へ伺って、赤ちゃんの身の回りのお世話、簡単な家事を行うサポートです。

基本的にはお母さんのリクエストに答える形で、通常のサポートよりはやれることが多いんですよね。ただこれも、いろいろ制約があります。

八田:どんな制約があるんですか。

川上:赤ちゃんのお世話はしていいけど上のお子さんの面倒は見てはいけないとか、家にある材料でご飯をつくるのはいいけど買い物をしてはいけないとか、リビングやキッチンの掃除はしてもいいけれど2階の子供部屋の片付けをしてはいけないとか、いろいろあります。あくまで「赤ちゃんとお母さんの生活のヘルプ」なんです。

八田:けっこう細かく決まっているんですね。

川上:行政の福祉の範囲内で、しかもプロではなく有償ボランティアが行うサポートですから、サポート内容もある程度線引きする必要があるのだと思います。でないと、民間のサービスの廉価版のような使い方をしてしまう人も出てきてしまいますから。

「一緒に銀行に来てほしい」という依頼

八田:サポート内容は、掃除や食事づくりがメインですか。

川上:そうですね、他には、赤ちゃんの沐浴も多いです。時々少し変わったご依頼をいただくこともあります。以前、「銀行に行きたいので、一緒に来てほしい」というご依頼がありました。一緒に行くといっても、赤ちゃんを抱っこするのはお母さんで、わたしは本当についていくだけなんです。

「ATMの操作の途中で泣き出したら困るから」とその方はおっしゃっていました。それを聞いた時に(泣くこともあるだろうけど、それくらい大丈夫では?)と一瞬思ったんですけど、よく分からないまま付き添ったんです。

話し相手がほしいのかなとも思ったんですが、そういうわけでもなさそうで。結局そのままバッグだけ持ってあげて、あとはひたすら隣にいました。

八田:1人で行くのは心細かったんでしょうね。

川上:今、その時のことを思い出すと、なんだか泣けてくるんですよね。娘が新生児だった頃のわたしは、そんなふうに人に頼ろうと考えたこともなかったんだと思います。「お母さんになったんだから当然自分でどうにかするべき」と思って。ましてやそこにお金をかけるなんて、自分は考えられなかった。だから、それをやれている人を見て、驚きながらも、どこか興味があったんだと思います。

疲れているならば、選択を見直してほしい

八田:サポート側に立ってみて、改めて自分の過ごしてきた時間を振り返ったんですね。サポーターといっても生身の人間ですし、驚いたり違和感を感じることがあるのも、考えてみたら自然なことですね。

川上:ご自宅に伺ってみて、どうしても反応してしまうポイントってあるんですよね。たとえば、整った部屋で、育児グッズも山ほどある中で、お母さんがとても疲れて見える時。もっと幸せに、楽になる方法があるんじゃないかな、と思うことがあります。

お話を伺っていると、「職を失わないためにもう復職しなくてはいけない」「復職したらこういうグッズが必要」「グッズを買うためには仕事をしなければいけない」というループに入っているように見えて。「〜でなければいけない」は、果たして本当かな? と思うこともあるんですよね。

みんな、いろいろ撰択してここにいるわけです。自分が選んでいるんだと自覚できたら、「じゃあ本当に今の形がいいの?」と問い直し、選び直すこともできるのではないかと思うんです。

わたしの今の、「週4パートタイム」の働き方も選択の結果です。わたしがファミリーサポートを続ける理由は、世の中の母の選択肢を増やすきっかけになったらと思うから。そして、わたし自身もこのサポートに支えられてきたからなんです。

八田:子どもが小さい頃に保育を依頼する体験は、自分が何にどれだけのリソースを割きたいのか、その時に誰のどんなサポートを必要とするのかを改めて考える機会になると思います。もしかすると、自分の選択に自覚的になる第一歩とも言えるかもしれません。わたしの子どもはもう大きいのですが、それでも家族の状況を考えながら決めていることが案外多いことに気付かされます。その都度「親だから」「常識だから」という感覚ではなく、自分の意思で選んでいく体験を積んでいきたいです。

プロフィール:

川上朝子
歯科医師。ひとりの人として、歯科医師として、患者さんの本質を問い、ひとりひとりの真実に向き合い、その人のその時のタイミングに必要なことを提案し、伝えることを大切にしている。子育ての体験、子育て中に体験した東日本大震災という大きな転機から、非暴力コミュニケーション(NVC)などの共感と真実をベースとしたコミュニケーションを学び、今も探求中。千葉県在住、夫と一女の3人家族。

インタビュアー/八田吏

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