いざという時の頼れる味方、「ファミリーサポート」を知っていますか|地域で子育てvol.1

子どもを短時間預けたいと思う時の選択肢のひとつに、「ファミリーサポート制度」(通称ファミサポ)があります。ファミリーサポート制度とは、育児のサポートを受けたい人と、サポートしたい人をつなぐ制度のこと。 市町村の自治体や社会福祉協議会が運営しています。

有償ボランティアとして地域の子育て家庭をサポートする人たちは、どのような思いから活動に参画しているのでしょうか。

ファミリーサポート利用をきっかけに制度と出会い、現在はサポートする側で活躍する川上朝子さんにお話を伺いました。

子どもの成長に合わせ、サポートする側へ

八田:まず、川上さんの現在のお仕事やご家庭のことを教えてください。

川上:パートタイムで歯科医師をしています。サラリーマンの夫と中学生の娘の3人家族です。結婚後にいったん退職したのですが、娘が1才過ぎた頃から仕事を再開しました。今は週4回、2つのクリニックで働いています。

八田:川上さんは、ファミリーサポート制度の利用と協力のどちらも行っていたと伺っています。詳しく教えてください。

川上:わたしの住む自治体のファミリーサポート制度には、サポートを受ける「利用会員」、サポートを提供する「協力会員」と、両方行う「両方会員」があります。娘が小さい頃は「利用会員」だったのですが、小学校に上がる頃に、空いている時間でサポート側もできそうだと思って、「両方会員」に切り替えました。娘が中学生になった今は、「協力会員」として活動を続けています。

八田:具体的にはどんなサポートをしているのですか。

川上:保育園や幼稚園、学童の送迎とその前後の保育がメインです。保育は協力会員の自宅で行います。保育が夕食時にかかる場合は、利用会員さんと相談の上、夕食の提供もすることができます。

協力会員によっては、送迎サポートだけを行う人もいれば、自宅でのサポートだけを行う人もいます。ボランティアなので、できる範囲でサポートすることが前提になります。

わたしの場合は、園へのお迎えから自宅での保育、夕食の提供までやっています。

夕食は?お風呂は?自宅での預かり保育

八田:ご自宅での保育となると、川上さんのお子さんも一緒に過ごすんですよね。

川上:はい。お預かりしているお子さんと娘がリビングで遊ぶのを見守りつつ、わたしは夕食をつくっていることが多いです。夕食ができたら一緒に食べて、食べ終わった頃にお母さんがお迎えに来る、という感じですね。

一人っ子の娘にとって、いい体験になっていると思います。もちろん、相手は小さな子どもなので、自分の友達と遊ぶようにはいかないですけど。一緒に遊びながら面倒を見てくれています。

八田:預かり中は家族のように過ごしているんですね。

川上:そうですね。ただ、もちろん制約もあります。たとえば、預かり中にお風呂に入れてはいけないことになっているんです。それで、娘が小さい頃は、預かりのお子さんが帰る21時過ぎまで娘もお風呂に入れず、遅くなってしまうこともありました。

八田:そういう場合、どうするんですか?

川上:なかなか難しいですよね。どうしようねえ、と言っているうちにサポートが終了してしまいました。

終了といっても、ファミリーサポートって「お世話になりました、今日で終了です」というはっきりした場面がありません。しばらくご利用のない時が続いて、いつのまにかフェードアウトしているんです。ふとその子の何か小さい荷物が残っていることに気づいて、「ああ、終了したのかな。この荷物、どうしたらいいんだろう」って(笑)。

子どもの個性や成長に触れる面白さ

八田:サポートしていて喜びを感じることはありますか。

川上:自分の子ども以外のお子さんを見るのって、面白いですよね。娘は家ではひとりで静かに過ごすタイプだったので、元気にあちこち動き回っているお子さんを見ると、面食らいもするけれど面白いとも感じます。

とはいえ、基本的に預かっている間は我が家のルール優先です。
「YouTube見たい!スマホで見せて」
って言われて、
「おばちゃんのスマホはYouTube見られないんだよねー」
って答えてます(笑)。

長くサポートしていると、だんだん成長する姿を見られるのも嬉しいです。最初に預かった頃には赤ちゃんだったのに、もう小学生になっているお子さんもいます。街なかで会ったりすると、「大きくなったなあ」なんて思いますね。

ボランティアだからこそやれること

八田:利用会員さんとはどんな形で出会うのですか?

川上:社会福祉協議会が利用会員と協力会員のマッチングを行っています。利用会員の希望条件と協力会員の受け入れ条件が合うと、まずは事前面談があります。事前面談が済むと、申し込みができるようになります。

八田:わたしも以前ファミリーサポートを利用していたのですが、事前面談があったことを思い出しました。預ける側としては安心ですが、協力側としては負担もあるのでは?

川上:そうですね。送迎がある場合、利用会員さんとの面談時に経路の確認や園との顔合わせも行うので、けっこう長い拘束時間になります。また、事前面談はしたけれど依頼がなくて終わることも多いです。ファミリーサポートは「何かあった時の備え」として持っておきたいと考える人も多いので、そこは仕方ないと思うんですけども。ちなみに、事前面談には時給は発生しません。

八田:それはモヤモヤしませんか?

川上:だからこそ、無理せずに自分が気持ちよく動ける範囲でやることを大切にしています。「仕事をしているのにファミサポもやっているなんて」と驚かれることがありますが、逆にわたしの場合は、他に仕事をしていて、収入やアイデンティティが担保されているからこそできるのかもしれません。

ファミリーサポートって、ボランティアだからこそ成り立つ、一種のワークシェアの仕組みだと思うんです。自分の空いた時間や労力を誰かのためにシェアするという感覚が、ファミリーサポート制度の根底にあると感じています。

次週の更新は9/3。川上さんがファミリーサポートに出会うきっかけとなった復職期のお話や、そこで直面した保育の問題について伺います。

 

プロフィール:

川上朝子
歯科医師。ひとりの人として、歯科医師として、患者さんの本質を問い、ひとりひとりの真実に向き合い、その人のその時のタイミングに必要なことを提案し、伝えることを大切にしている。子育ての体験、子育て中に体験した東日本大震災という大きな転機から、非暴力コミュニケーション(NVC)などの共感と真実をベースとしたコミュニケーションを学び、今も探求中。千葉県在住、夫と一女の3人家族。

インタビュアー/八田吏

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ライター / 八田 吏

株式会社 元中学校国語教師。産後ケアの普及に取り組むNPO法人にて冊子の執筆編集に携わったことをきっかけにライター、編集者として活動開始。小学生・中学生の男児、夫と4人暮らし。