預ける、預かる。ファミリーサポートでワークシェアする|地域で子育てvol.2

歯科医師としての仕事のかたわら、ファミリーサポートの協力会員として活動する川上朝子さん。そのきっかけは、ご自身の復職時に直面した保育の問題だそうです。川上さんに、復職期のことや、ファミリーサポートに関わるようになってからの思いを伺いました。

復職で保育の問題に直面

八田:ファミリーサポートの協力会員として活動している川上さんですが、元々は利用会員だったのですよね。ファミリーサポートを利用したきっかけを教えてください。

川上さん:娘が10ヶ月になった頃に仕事を再開することになりました。週1回の勤務だったのですが、事業所付属の診療所だったため、事業所の保育園に娘を預けられることになったんです。

ところが、娘を抱っこして早朝の電車に乗り、夜遅くまで預ける生活に疑問を感じていたところ、医院の都合もあってそこはすぐに辞めることになりました。

次に、実家の近くで学生時代からつきあいのある診療所ではたらきはじめました。保育園も探したのですが、週に数回しか預けないのに入れるような保育園って、まずないんですよね。実家の母に頼ったりもしましたが、母にも自分の生活があって、いつでもOKというわけには行きません。そんな頃に、ファミリーサポートを初めて利用しました。

自分の望む働き方に合う保育を模索

八田:保育園に入れるために、フルタイムで働く選択肢はなかったんですか。

川上さん:退職するまではフルタイムで、それこそ命を削るようにして働いていたんです。もうあの働き方をしたら身が持たないと思っていました。「歯は削っても命は削れない!」と(笑)。それに、考えてみたら保育園のために自分の望む働き方ができないというのはおかしいんじゃないかという思いもありました。

娘が1歳半になる頃、比較的自由な無認可園に中途入園し、年長の5月まで週3で仕事と登園をしていました。

小学校入学後は学童に入ったのですが、娘が途中から学童に行きたがらなくなったんです。そこでまたファミリーサポートを利用したり、実家に頼ったりするようになりました。さらに習い事を始めたり、働き方改革で夫もサポートできるようになり、そのうち娘も成長して保育の心配をしなくて済むようになりました。

八田:振り返ってみて、どんな風に感じますか。

川上さん:その都度あれこれ手を尽くしながらやってきたんだなと感じます。その間ずっと感じていたのは、保育の仕組みが優しくないということです。一時保育を利用したこともありますが、申請が通るかどうかは当月に入るまでわからないのでヒヤヒヤしていました。一方で、保育園は週に3回では入れないと言われます。もうちょっとどうにかならないかな、とずっと思っていました。

手が必要な時には借り、空いている時には貸す

八田:ご自身の大変だった体験があったから、サポートしたいと思うようになったのでしょうか。

川上さん:そうですね。「ここはもう少しワークシェアできるだろう」とずっと思っていました。

ファミリーサポートも、利用側に立ってみると、お願いしたい条件に合う協力会員さんはなかなか見つかりません。それは、需要に対して供給が全然追いつかないから。それなら、わたしのできることや時間をシェアして、少しだけでも誰かの選択肢になればいいな、と思ったんですよね。

手を借りたい時には借りて、空いている時には手を貸すって、自然なことだと思うんです。ファミリーサポートは、家事代行でもないしベビーシッターでもありません。地域の助け合いを、マッチングする仕組みなんですよね。

ですから、ファミリーサポートの取り組み自体も、もう少し地域内や家庭間のつながりを構築していくものになればいいと思っています。

「無理のない範囲」を守るためにしていること

八田:リクエストに応えているうちに、つい自分のキャパを超えてしまうようなことはありませんか。

川上さん:依頼を受けた段階で、そのまま受け入れるだけでなく、交渉することもあります。ある時に、「18時45分に保育園にお迎えに行ってもらって、19時半まで預かって欲しい」というご依頼を受けたことがあります。これは、自分も小さい子を抱えている身だと厳しいんですよね。

難しいといって断ることもできたのですが、
「自分の生活もあるので、そのスケジュールだとバタバタしてしまって厳しいです。余裕をもって早めの時間にお迎えに行くなら可能です」
と伝えてみたんです。間に入ったコーディネーターは、「それだと料金が余分にかかるから」と気にしていたのですが、利用者さんは「わかります。そうしてください」と快諾してくださって。

結局、お迎えを17時半にして、のんびり歩いて帰って夕ご飯もつくって一緒に食べて、という余裕のある形になりました。

八田:言ってみたら融通がきいたし、その方がお互いにとって良かったんですね。

川上さん:もちろん、わたしも預けていた身なので、できるだけ短く、時間料金の800円ギリギリに依頼したい気持ちもわかるんです。わたしも、こんなに保育料がかかるの?と思いましたしね。わかるけど、一応提案してみたらOKでした(笑)。

八田:ボランタリーな取り組みだからこそ、話し合いやすり合わせは大事なポイントなのかもしれませんね。

次週の更新は9/10。自身も一児の母であり、また、歯科医の仕事を通じて多くの親子と関わっている川上さんが、ファミリーサポートの現場で日々感じていることを伺います。

プロフィール:

川上朝子
歯科医師。ひとりの人として、歯科医師として、患者さんの本質を問い、ひとりひとりの真実に向き合い、その人のその時のタイミングに必要なことを提案し、伝えることを大切にしている。子育ての体験、子育て中に体験した東日本大震災という大きな転機から、非暴力コミュニケーション(NVC)などの共感と真実をベースとしたコミュニケーションを学び、今も探求中。千葉県在住、夫と一女の3人家族。

インタビュアー/八田吏

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ライター / 八田 吏

株式会社 元中学校国語教師。産後ケアの普及に取り組むNPO法人にて冊子の執筆編集に携わったことをきっかけにライター、編集者として活動開始。小学生・中学生の男児、夫と4人暮らし。