友達と遊びたがらない子ども:理学療法士が伝える!楽しくすくすく育つコツVol.32

みなさんは、毎日の子育てを楽しんでいますか。喜びを感じるひとときもあれば、ふと「こんな時、どうしたらいいの?」「これって、このやり方でいいの?」と、迷いが出てくることもあるのではないでしょうか。運動発達の専門家である理学療法士・得原藍さんによる、楽しみながら子どもの育ちをうながす親子の関わり方のコツを教わる連載です。

<目次>
1.子どもが友達と遊びたがらない
2.ひとりで遊べる集中力もすばらしいこと
3.遊びは本人の意志。ひとりで遊びたい気持ちに寄り添う
4.いま、集団の中で困っていることはないか

子どもが友達と遊びたがらない

得原さんこんにちは!4歳半の子どもの母です。子どもが友達と遊ばないので心配しています。公園で同じ園の友達に会っても、一緒に遊ぶことはまずありません。「一緒に遊ぼうよ」と誘われてもいやがることが多いです。保育園でもいつも一人遊びをしており、集団遊びのときにも隅で砂いじりなどをしているようです。夫に話しても「人見知りなんじゃないか。自分もそうだった」とあまり心配ではなさそうなのですが、私は気になっています。成長に応じて集団での活動がどんどん増えてくると思いますが、このままで大丈夫なのか心配です。

ひとりで遊べる集中力もすばらしいこと

こんにちは、ご質問ありがとうございます。4歳半のお子さんについてのご相談ですね。お友達と遊ぶよりもひとりで遊ぶほうが好きそう、とのこと、お母さんとしては、これから先の小学校生活なども踏まえて、集団活動にも興味を持ってほしいなあ、という気持ちがあるのですね。

まず、「ひとりで遊ぶことができる」ということは、とってもすごいことなんですよ。集中力があるんですね。飽きずに目の前のものと付き合えるということは、この先小学校にいくときに、椅子に座ってしっかり授業を聞く準備にもなることです。遊んでいる様子を見ていて、どうですか?ひとりでも、満足したり、発見があったり、という様子はありますか。声をかけたときに「まだ遊びたい」という意志があるでしょうか。子どもの遊びで大切なのは、まずは夢中になることです。自分ではじまりを決めて、自分で終わりを決めることができる。そのことが、自分で考えて自分で決めて行動することに繋がっていきます。お子さんのひとり遊びの集中力も大切にしてあげたいですね。

遊びは本人の意志。ひとりで遊びたい気持ちに寄り添う

さて、集団で遊ばないけれど大丈夫か?ということについてですが、ご主人は「人見知りなのだろう」とお話されているとのこと、そのことから推察すると、お家で家族とコミュニケーションをとったり、一緒に遊んだりすることはできそうですね。お母さんやお父さん、それからよく知っている大人が声をかけたりすると、振り返ったり、お返事してくれますか?それは大丈夫、ということであれば、話しかけられている内容は理解しているということですし、お友達に「誘われている」ということもわかっているとおもいます。また、みんなと一緒には遊ばないけれど、絶対に保育園に行きたくない、というわけでもなさそうですね。とすると、ひとりで遊んでいるのは自分の意志、ということのようです。「遊ぶ」というのは、本人の意志あってのことなので、「誰かと一緒」を強要することはできませんから、理解がないわけではない場合には、どうしてひとりがいいのか、本人に聞いてみるというのもひとつの手だとおもいます。4歳半ということなので、言葉が出ているようなら、なにかしら理由を話してくれるかもしれません。

4歳半くらいだと、言葉がとっても得意な子はなんでもぺらぺらお話できると思うのですが、ひとりで遊ぶのが好き、という子の中にはそんなにたくさんお話しない子もいます。お子さんはいかがですか。もし、そんなにたくさんお話しないタイプだとしたら、集団の中で自己主張することにまだ慣れていない可能性もあります。お話が得意な子たちがたくさんいる集団だと、その仲間に入って自己主張しながら自分のやりたい遊びをする、というのはなかなか難しいのです。大人でも、みんながガヤガヤワイワイしているパーティーに入り込んでいくのは勇気がいりますよね。もしそうだとしたら、ひとりで遊ぶことを「選んでいるのだ」と思ってあげてください。「みんなに入れない、のではなく、入らない」ということを選ぶ場合もあるのです。

いま、集団の中で困っていることはないか

保育園の先生の見解はどうでしょう?親御さんや家族以外の大人で、一番身近なところにいるのは保育園の先生です。先生たちが話しかけたとき、お子さんは反応するでしょうか。そして、先生の指示や言うことを理解して、自分の意志を発する(イエスかノーかも含めて返答をする)ことはできているでしょうか。保育園の先生がもし「こんな場面でお子さんが困っているようです」というお話をしてくださるようなら、その場面でどうやったらお子さん自身が「困らないようにできるか」を相談していきたいですね。

子どもにとって、社会は段階的に広がっていくものです。お母さんとの一対一から、家族という小さい社会、そのあと、保育園や小学校へ。そう考えると、家族から保育園、というのはなかなか大きなステップです。自分のことをよく知ってくれている家族だけの関係から、たくさんの知らない人たちの中へと出ていく冒険なんですね。そして、小学校になればもっと大きな集団の中へ入っていくことになります。ご質問くださったお母さんも、他の大人も、みな新しい集団の中で自分を探していった経験をお持ちだと思います。著しい発達の中にある子どもたちが、将来出会う集団で「大丈夫かどうか」は、あまり予測がつきません。なので、将来の集団生活を心配することよりは、いま、お子さんが集団の中で「困っていないか」に目を向けていくと良いと思います。もし今、お子さんが保育園で「困っている」のであれば、どんな場面で、どのように本人が困難を感じているのか、近くで見ていてくださる保育士さんに聞きながら、本人にも話を聞きながら、相談していくことになります。そのうえで、なにか助けてあげられることなのかどうか、大人も考えていけるといいですね。

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ライター / 得原 藍

理学療法士。大学卒業後、会社員を経て理学療法士の資格を取得。病院勤務を経てバイオメカニクス(生体力学)の分野で修士号を取得。これまでの知識や経験を生かし、現在は運動指導者の育成、大学の非常勤講師などを務める。また、子育て支援団体との協働で運動発達に関する相談を受けたり、外あそび活動などを行っている。6歳男児の母。