妊産婦さんの気持ちに寄り添うドゥーラが、出産の選択肢の一つになるように|出産ドゥーラとつくる、自分らしいお産vol.3

まるで導かれるように出産ドゥーラとなったストーリーをもつ松野さんと薬師寺さん。一般社団法人ドゥーラシップジャパンでは、出産ドゥーラを多くの人に知ってもらう活動や、活躍の場を広げるための場づくりに力を入れています。今後、どんな未来に向かっていくのか、お話を聞きました。

海外に比べて選択肢が少ない日本

界外:前回のお話では、海外では妊産婦さんの意思に合わせてお産に立ち会う人を柔軟に選べることが多いと伺いました。それに対し、日本では立ち会える人数が限られていたり、夫が立ち会うのが当然だと思われていることが多いとのこと。日本とは異なる海外の事例をよく知っているおふたりをはじめ、ドゥーラシップジャパンのみなさんは、日本の出産現場が今後どんなふうになることを願って活動をしているのでしょうか。

松野さん:産婦人科医、助産師、ドゥーラなど、赤ちゃんを産む人を囲むチームをつくりたいと思っています。それによって、赤ちゃんと妊産婦さんにとってすばらしい出産体験になればといいなと思います。

出産の現場に関わらず、アメリカは日本に比べるといろいろな面で選択肢が多いと感じます。たとえば、りんごを買いに行くと、日本のスーパーでは数種類のりんごが並ぶのに対して、アメリカは10~20種類の品種が並んでいて、そこから自分にとってベストなりんごを選ぶことができます。

出産においても、日本ではドゥーラはまだ選択肢にすら入っていないと感じます。今後は日本でも、出産のためのチームを作るうえで、ドゥーラが選択肢の一つになれたらいいですね。「私はこういうお産をしたい。そのためにはドゥーラが必要」と妊産婦さんが自信を持って言えるように。ドゥーラを必要としない場合ももちろんありますが、妊産婦さんにとって、ドゥーラが必要だと思った時に自由に選べるといいなと思います。

界外:選択肢が増えるのは良いことですよね。ただ、選択肢が増えることで、自分がどうしたいか、迷ってしまう人もいるのではないでしょうか。
松野さん:これは出産に限らずですが、今は情報があふれすぎています。たくさんの情報に簡単にアクセスできるけれど、本当に正しい情報や欲しい情報にたどり着くのは難しくなっていますね。

ドゥーラ講座は学びの場でもあり、ドゥーラ同士がつながる場でもある。

妊産婦さんに気づいてもらう存在に

界外:正しい情報を得ることは最も大切なことですよね。その上で、「正しいかどうか」だけでも、なかなか決められないのかもしれません。最終的には、自分で決める力が問われると思うのです。だからこそ、ドゥーラという存在がいて、ドゥーラに寄り添ってもらうお産もあることを知ってもらう必要があるのかもしれません。

薬師寺さん:その通りです。まずはスタンダードになることが大切だと思っています。日本では、スタンダードだと認識されると、一気に選ばれやすくなります。ドゥーラシップジャパンの活動もそのために行っています。地道な活動を続けていけば、ドゥーラがスタンダードな選択肢のひとつになる日がくるかもしれないと思っています。

そうなると、友人の出産にドゥーラとして付き添うという経験をもつ人も増えていくでしょう。そういったドゥーラが一人でも二人でも増えれば、それを見ていたお子さんやパートナー、親族の方たちがドゥーラのことを知ってくれる可能性があります。また、妊産婦さんが誰かにドゥーラのことを紹介してくれるかもしれません。そういった、目には見えない地道な輪が広がっていくのではないかと思うのです。

私たちが今できるのは、まずドゥーラになった人たちが気持ちよくドゥーラの活動を続けられるように応援することです。また、「ドゥーラになりたい」という気持ちを持っている人たちを後押しするような縁をつないでいきます。

さらに、世の中の妊産婦さんたちの中で、必要とする人にドゥーラの情報を届けたいと思っています。妊産婦さんが「私はこういう性格だから、ドゥーラが合っているのよね」と思えるような。そんな情報発信ができればと思っています。

想いはあるのですが、私たちはあまり広報活動が上手ではないのです(笑)。活動を大切に温めすぎなのかもしれません。ただ、運が良いことに、出会った人たちはみんな応援してくれるんです。だからこそ、これからはもう少しスピードアップしたり、これまでと違う手法で活動できるといいなと思っています。

界外:きっと、出会うべくして出会った方たちばかりなのだと思います。活動内容やペースも、きっと必要な時にはまた違った機運が自然と訪れるのではないでしょうか。私も、これからもドゥーラシップジャパンの活動を応援していきます。

一般社団法人ドゥーラシップジャパン
https://www.doulashipjapan.org/


松野千恵さん
出産ドゥーラ。日本語教師。一般社団法人ドゥーラシップジャパンの活動では、出産ドゥーラの啓蒙活動のほか、翻訳も手がける。


薬師寺麻利子さん
出産ドゥーラ。助産師。一般社団法人ドゥーラシップジャパンの理事として、出産ドゥーラの啓蒙活動のほか、助産師とドゥーラをつなげる活動も積極的に行っている。

インタビュアー
界外亜由美
産前産後の女性とサポーターをつなぐ「MotherRing」主宰。「MotherRing Journal」編集長。優しさが循環する社会づくりを目指して活動している。「言葉」で伝える制作会社mugichocolate代表取締役。

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ライター / 高梨 真紀

ライター。業界紙記者、海外ガイドブック編集者、美容誌編集者を経てフリーランスに。子育て中の女性や働く女性を中心に取材を重ねる。現在は食、散歩、社会的な活動など幅広く活動。ライフワークとして、女性と子どもなどをテーマにした取材も続ける。2人の娘の母。