「産褥期(さんじょくき)」とは?「床上げ」とは?産後8週間の過ごし方を予習しよう!|赤ちゃんとの生活「困った!」Q &A

約10ヶ月の妊娠生活を過ぎて、いよいよ迎える出産。
赤ちゃんに会えるのが楽しみですよね。

出産を終えるとすぐに、今度は育児生活が始まります。実は、出産後から8週間までの過ごし方を大切にすると、育児生活がより充実することをご存じですか?

産後8週間は、「産褥期」と特別な呼び方があるほど、産後の身体にとってとても重要な時期になります。「知っておいてよかった」と思えるように、出産前の今、基本的な知識から身に付けておきましょう。

「産褥期」は母体が回復するまでの8週間のこと

妊娠してから約10ヶ月の間、女性の身体は大きく変化します。月経が止まることから始まり、つわりが起きて、体重が増えて、お腹が大きくなって。ホルモンの働きで情緒が不安定になる人も少なくない妊娠期、赤ちゃんをお腹の中で育てて産むための準備を整えるのです。
「産褥期」は、変化を受けた身体の機能が回復し、母体が妊娠前の状態に戻っていくまでに要する期間のことをいいます。期間は個人差がありますが、一般的に分娩後の6週間から8週間といわれています。
昔は、産褥期に身体の状態が戻っていくことを「産後の肥立ちが良い・悪い」と表現することもありました。約10ヶ月かけて変化し、出産でさらに負担をかけた身体が回復するためには、最短でも産褥期の6~8週間が必要とされているのです。

「産褥期」に起きやすいトラブル

妊娠中から出産の間、身体は大きなダメージを受けているため、トラブルが起きやすい状態になっています。昔から、「出産は全治1ヶ月の交通事故と同じくらい、産後の身体はボロボロになっている」といわれているほど。想像以上に身体は傷ついているのです。
もちろん「出産翌日から元気に動ける」という方もいるかもしれません。ただ、出産直後から身体が100%機能するとは限りません。出産で広がった子宮が元の状態に戻るまでには6~8週間かかり、授乳をするたびに、「後陣痛(こうじんつう)」と呼ばれる子宮収縮の痛みが起きる場合があります。会陰切開(えいんせっかい)や裂傷(れっしょう)の傷が痛むことも。帝王切開の場合は、傷の痛みがおさまるまでには時間がかかります。
また、出産をするために身体はホルモンで骨盤まわりのじん帯をゆるめて骨盤が開きやすいようにしています。産後は、骨盤を妊娠前の状態に戻そうとすることで、恥骨や、脊柱の最下部にある尾てい骨、また腰が痛みやすくなります。そのほか、尿が出にくくなったり、逆に尿漏れなどの症状が表れやすくなります。
身体だけでなく、心にも変化が表れます。妊娠から出産にかけてホルモンバランスが大きく変化することで、精神的にも不安定になりがちです。赤ちゃんを迎えて新しい環境をつくろうと張り切る一方で、無理をしすぎる場合も少なくありません。泣く、イライラする、気持ちが落ち込むといったネガティブな変化が見られることもあります。

「産褥期」に大切なのは、とにかく体を休めること

そんな「産褥期」で何よりも大切なのが、身体を休めることです。
「産褥期」の「褥」は、敷ぶとんにあたる「褥(しとね)」を意味しています。昔から、この時期は、布団を敷きっぱなしにして、赤ちゃんのお世話以外は、とにかく休むことを優先させるようにと言い伝えられてきました。
赤ちゃんが生まれたばかりの頃は気持ちが高まりがちで、妊娠前のように家事もこなそうとしてしまいますが、この期間にじっくり身体をいたわることで、体力勝負の育児生活も余裕をもって楽しむことが可能になります。
始まったばかりの育児生活をより充実させるためにも、産褥期は身体を休めましょう。
産院で、産後の過ごし方についての注意点などを聞いてみてください。もし気になる症状があれば担当医に相談するなどして身体をいたわってあげてください。

「産褥期」の家事はまわりの人にまかせよう

「休む」と言っても、妊娠中と違って育児も始まっています。とにかく赤ちゃんのお世話だけに専念して、身体を休められる環境を整えるのがコツです。
6~8週間ある産褥期のうち、特に初めの3週間は、日中も布団やベッドの上で過ごします。この期間は入浴も控え、シャワーで済ませます。産後3週間が過ぎてからは、少しずつ日常生活に戻る準備をしていきますが、それでも無理を感じたらすぐに休めるようにしておくことが大切です。
家事が気になるかもしれませんが、ここは割り切って、パートナーや実家の家族など、信頼できる相手にまかせましょう。できれば妊娠中に産褥期の家事について話し合いを。これから長い子育て生活が始まるのですから、今後の家事分担をスムーズに進めるためにも、子どもが生まれる前に話し合っておくことをおすすめします。
パートナーや家族では家事の分担が難しい場合は、民間の家事代行サービスを活用するのも一つの方法です。さらに、産後の心身に寄り添い、きょうだいのお世話もしてくれる産後ドゥーラや自治体の産後ヘルパーも、心強い味方になってくれるはず。

産褥期に家事をまわりにまかせることの効果を実感できれば、家事も育児も自分ですべて背負わず、肩の力が抜けた状態で育児を楽しむ生活も始められます。ぜひ試してみてください。

「床上げ」はいつ頃?この時期を楽しく過ごすポイント

さて、赤ちゃんのお世話に専念し、身体の休息を第一に過ごす産褥期の6~8週間の間に、「床上げ」の時期を迎えます。

「床上げ」とは、布団を敷きっぱなしの生活から卒業して、少しずつ日常の生活に慣らしはじめる時期のこと。タイミングは「産後から3週間前後」といわれています。ただ、産褥期と同じように、適切な床上げの時期は人によって異なります。大切なのは、身体の声に耳を傾けることです。3週間はあくまでも目安ですので、身体がラクになったのを感じて、赤ちゃんのお世話にも少しずつ慣れてきたら、ゆっくりと床上げをしていきましょう。

床上げをしてからは、家事も自分にとって負担の軽いものから少しずつ始めておくと、産褥期の6~8週間を過ぎた後、日常生活に戻りやすくなります。ただし、無理は禁物です。家事はあくまでも負担なく楽しめる程度に抑えて、身体を休めることを優先に。この時期は毎日の食事作りをはじめ、部屋の掃除や片付けなど、負担の大きな家事はまわりにサポートしてもらいましょう。食洗器や電動掃除機、乾燥機付き洗濯機など、家事の手間を減らす有能な家電もたくさんあります。この時期に購入を検討するのも、賢い時短生活を始めることにつながり、おすすめです。

産後6~8週間目までは、赤ちゃんのお世話にできるだけ専念して、休息をとることを大切にしてください。逆に言うとこの時期は、生まれたばかりの赤ちゃんとの時間を最優先にできるかけがえのない時期。日に日に成長し、変化を見せてくれる赤ちゃんとの毎日を味わうためにも、産褥期はゆっくり休んでください。

産褥期を過ぎ、十分に回復した体と心で、赤ちゃんとの新生活を楽しんでくださいね。

※出典:
女性の健康推進室「ヘルスケアラボ」産後のトラブル
https://w-health.jp/fetation/after-childbirth/
MSDマニュアル家庭版 産褥期の概要
https://msdmnls.co/3jy9cL0

ライター/たかなしまき

◎infomation


MotherRingサポーターとは
助産師・ドゥーラ・保育士・ベビーシッター・治療家・リラクゼーション施術者・運動指導者といった、産前産後の家庭へのケアサービスのプロフェッショナルを、MotherRingサポーターと呼んでいます。
様々なケアを提供されている方にMotherRingサポーターとしてご登録いただき、広報活動をお手伝いすることで、産前産後のご家庭が必要なケアを受けられる社会を目指しています。

MotherRingサポーターページへの掲載
MotherRingサポーターのみなさまのサービス内容や受付条件などを、MotherRingサポーターページに掲載いただくことが可能です。

motherringサポーターページの内容・ご利用方法はこちら(PDF)

「Webサイトがほしいけど、自分でつくるのは大変……」
「日々のサポートで手いっぱいで、広報活動まで手が回らない……」
といった方のお手伝いをします。
また、産前産後のご家庭にとっても、様々なMotherRingサポーターのみなさまの情報をまとめて見ることができるため、比較検討しやすくなっています。

ご登録までの流れ
①MotherRingサポーター登録フォームよりお申し込み
MotherRingサポーター登録フォームはこちら

②MotherRing事務局より、申込書等の必要書類をメールにて送付します。
必要事項を記載し、お申し込みください。


③オンライン面談を実施します。
詳細なサポート内容はもちろん、サポートへの思いなど、お聞かせください。


④登録、MotherRingサポーターページにあなたの情報が掲載されます。
サポート内容をまとめた文章や画像などの掲載情報をご提出いただき、MotherRing事務局であなたの専用Webページを作成し、掲載いたします。

MotherRingは、助産師・ドゥーラ・保育士・ベビーシッター・治療家・リラクゼーション施術者・運動指導者はもちろん、様々な産前産後の家庭へのケアを提供されているみなさまのお役に立ちたいと考えています。上記以外の職種の方も、ぜひ一度お問い合わせください。

MotherRingサポーター登録フォームはこちら

ライター / 高梨 真紀

ライター。業界紙記者、海外ガイドブック編集者、美容誌編集者を経てフリーランスに。子育て中の女性や働く女性を中心に取材を重ねる。現在は食、散歩、社会的な活動など幅広く活動。ライフワークとして、女性と子どもなどをテーマにした取材も続ける。2人の娘の母。