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JOURNAL

日本でも、妊産婦さんの望む人がお産に付き添える環境を

2021.07.30

日本初のドゥーラ団体の立ち上げメンバーである松野さんと薬師寺さん。第一回目のインタビューでは出産ドゥーラになったきっかけと想い、葛藤についてお話いただきました。今回はおふたりの活動と、2019年に法人化した「一般社団法人ドゥーラシップジャパン」について伺います。

出産ドゥーラを日本に広めたい

界外:おふたりは現在、どんな活動をされていますか?

松野さん:ドゥーラシップジャパンのメンバーとして、出産ドゥーラをどう日本に広めるか、出産ドゥーラをどう増やすかに力を入れています。ただ、私も出産ドゥーラになりたくて資格を取得したので、機会があれば私自身も出産には立ち会い続けたいです。

もう一つ、日本語教師としての仕事もしています。自治体を通して日本語を話せない女性を支援しています。若い女性が多いのですが、彼女たちが出産する時の相談役や通訳を依頼されることが多いです。日本に暮らす外国人をはじめ、マイノリティの支援を通して、出産ドゥーラに近い活動ができたらと思っています。

薬師寺さん:私は日本の助産師たちと出産ドゥーラをつなげたい、その輪を広げたいという想いがあります。ドゥーラシップジャパンでは、日本で出産ドゥーラを広めるための講座を、専門家を招いて開催しています。そのほかにも、日本の助産師たちにドゥーラについてどう思っているかを聞いたり、出産ドゥーラとして活動する方にインタビューをしています。こういった活動を通して日本の助産師に出産ドゥーラの姿を知ってもらえたらと思っています。

日本で出産ドゥーラ養成講座を開催

界外:任意団体からスタートし、一般社団法人ドゥーラシップジャパンを立ち上げたと伺っています。活動自体は2008年に立ち上げた日本ドゥーラ協会から考えると、長い歴史がありますよね。アメリカなど海外で出産ドゥーラの資格を取得された方々が集まって活動が始まったとのことですが、当時のことを教えてください。

松野さん:最初は私を含めた出産ドゥーラ3人が集まり、日本ドゥーラ協会を立ち上げました。Webサイトを作って、活動を広めるための議論を重ねたものの、しばらくの間はアイデアを形にするところまで進めることができませんでした。ただ、その後もいろんなメンバーが参加してくれて、2016年にワークショップを開催することができたんです。

界外:2008年の立ち上げから8年越しの開催だったんですね。どんなワークショップだったのですか?

松野さん:ニューヨークでドゥーラ養成者として知られるデボラ・パスカリ=ボナロさんを日本に講師として招き、日本での出産ドゥーラ養成講座を開催しました。その後も講演会などを行っています。

界外:その後、どんな流れで法人化されたのですか?

松野さん:講座の開催を続けるうえでも社会的な信用を得るために、以前から「法人化したいね」という話は出ていました。たまたまドゥーラシップジャパンのメンバーに誘った友人が、定款を作るところも含めて事務の複雑な業務をすべて担ってくれることになったんです。私たちの意向をうまく汲み取りつつ進めてくれて、2019年に一般社団法人ドゥーラシップジャパンとして活動を始めることができました。

界外:時間をかけながら大事に温めてきた活動の機が熟して、一般社団法人になったんですね。現在、講座やワークショップ以外にはどんな活動をされていますか?

薬師寺さん:今は新型コロナウイルスの影響で、人が集まる場所を作ることができません。そのため、「ドゥーラタイム」といって、家にいながらオンラインでドゥーラ同士がつながる場を作っています。想いを共有し、モチベーションを高め合い、何か困ったことがあれば相談できる場です。また、私は助産師とドゥーラがつながる場もオンラインで開いています。松野さんはドゥーラに関連する翻訳でも活躍しています。

夫だけでなく、妊産婦さんの望む人がお産に付き添える環境を

界外:日本でドゥーラについて知ってもらうには、同時に海外の出産に関する情報を日本へ広めることにもなるかと思います。海外と日本を比較して、それぞれの良いところや課題を教えてください。

薬師寺さん:日本の良いところは、助産師のドゥーラマインドが高いことです。海外の助産師はもっと妊婦さんと距離を取ることが多いように感じます。私は産院やバースセンターのドゥーラも経験しましたが、私が知っている限り、海外の助産師は、陣痛を見たり赤ちゃんの心拍を見たりするために病室を訪れます。そして、結果が分かったら、基本的にはすぐに病室を出ます。

日本の助産師は、陣痛中の妊婦さんのいる病室に入ったら、ベッドサイドに座ってマッサージをしながら「痛いよね」と声をかける人が多いように思います。また、分娩室では付きっきりで寄り添うなど、ドゥーラのような役割を果たすことが多いと感じています。だからこそ、日本はドゥーラがお産の現場に入りにくいという難しさもあるのですが。

界外:海外の助産師の立場は、日本の助産師より、医師に近いものがあると聞いたことがあります。同じ助産師と呼ばれていても、日本とは役割が違うのでしょうか。

薬師寺さん:そうだと思います。もうひとつ、日本の特徴として、妊産婦さんが家族以外の人にお産に付き添ってほしいと思っても、夫が第一優先になりがちではないでしょうか。でも、誰もが夫に付き添ってもらいたいと思っているわけではないと思うんです。海外だと、妊婦さんが「ドゥーラにお願いしたい」、「友人にそばにいてほしい」と言えば、大体の場合、意見が通ります。
界外:それは日本のイエ制度なども影響しているかもしれませんね。私は、産む人が付き添ってもらいたい人を選ぶことが一番大事という考えに賛成です。ただ、出産が子育ての第一歩だと考えると、子どもを一緒に育てるパートナーに出産に参加してもらうのは良いことではないかという思いもあります。

薬師寺さん:たしかに、子どもを育てていくパートナーである夫に一緒にいてもらえたらいいのだけれど、お産の記憶は一生を左右するくらい強く残ると思うのです。夫が付き添った記憶が良いものであることを願いますが、そうではない人もいるのではないでしょうか。
たとえばドゥーラもお産に付き添って、夫が妊産婦さんに対して効果的な対応ができるようにドゥーラがサポートできると、妊産婦さんにとって良い思い出になる可能性が高いと思います。日本では立ち会える人数が限られていることも気になります。妊産婦さんのことを考えれば、その人がその人らしさを発揮できるように、良い思い出になるようにサポートすることが大事で、そのために誰がサポートするかという判断がもっと柔軟になればと思います。

助産師はお産に関して多くのスキルを持っています。妊産婦さんも、出産のような極限状態において、頼りになる助産師を求めていると思います。そうすると、出産の現場では夫は何もできなかったとなる場合もあるでしょう。実際に、「助産師のサポートはすばらしかった」という感想が多いと私自身も感じています。そこに出産ドゥーラが加わり、夫に適切なアドバイスができれば、夫に対しても助産師への感想と同じような思いが生まれるはずです。そんなサポートが増えることを願っています。

次回は8/6(金)に公開予定です。
松野さんと薬師寺さんに、未来について語っていただきます。出産ドゥーラとして長く活動されてきたふたりが思い描くのはどんな世界なのか。優しい言葉が続きます。お楽しみに。(つづく)

一般社団法人ドゥーラシップジャパン
https://www.doulashipjapan.org/

松野千恵さん
出産ドゥーラ。日本語教師。一般社団法人ドゥーラシップジャパンの活動では、出産ドゥーラの啓蒙活動のほか、翻訳も手がける。

薬師寺麻利子さん
出産ドゥーラ。助産師。一般社団法人ドゥーラシップジャパンの理事として、出産ドゥーラの啓蒙活動のほか、助産師とドゥーラをつなげる活動も積極的に行っている。

インタビュアー
界外亜由美
産前産後の女性とサポーターをつなぐ「MotherRing」主宰。「MotherRing Journal」編集長。優しさが循環する社会づくりを目指して活動している。「言葉」で伝える制作会社mugichocolate代表取締役。

ライター
高梨真紀
業界紙記者、海外ガイドブック編集者、美容誌編集者を経てフリーランスに。子育て中の女性や働く女性を中心に取材を重ねる。現在は食、散歩、社会的な活動など幅広く活動。ライフワークとして、女性と子どもなどをテーマにした取材も続ける。2人の娘の母。

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