「産後ドゥーラ」の働き方や仕事への熱い思いを、現役ドゥーラの声でお伝えしてきたこちらのシリーズインタビュー。時代の追い風を受け、第一期生を輩出してから10年足らずの短い期間に成長しただけでなく、コロナ禍にあっても需要が増加するなど、その存在は注目に値します。
第3回目は「産後ドゥーラ」として働く有福香織さん、ひらつかけいこさんに、やりがいや喜びを感じる瞬間、またこの仕事で難しいと感じることをお聞きします。聞き手は引き続きマザーリングジャーナル編集長の界外亜由美。子育てママの置かれている状況、今後の展望についても触れていきたいと思います。
安心して頼ってほしいから、「産後ドゥーラ」にしかできないサポートを
界外:「産後ドゥーラ」はお料理をしたり、赤ちゃんのお世話をしたり、ママのご相談にのったり、多岐にわたる役割を果たす点で、ベビーシッターや家事代行サービスとは異なりますね。
ひらつかさん:そうですね。ご依頼内容を遂行することだけではなく、ママの気持ちに寄り添いながら、「産後ドゥーラ」ならではのサポートができるよう、やりがいを持ってお仕事をしています。
有福さん:お料理のサポートで入っているお宅では、下ごしらえまで済ませた半調理品から、温めればすぐ食べられるおかずまで、ご希望に沿って何品ものおかずを作りますから、確かに忙しいです。でも、ただそれだけではなくて、ママの様子はどうかしら? とか今日の体調や困っていることは? と、あえて口に出して聞かなくても、寄り添いの気持ちは常にあります。
お伺いしている2、3時間はあっという間! ママが助かるといいな、ご家族が喜んで食べてくださるように、とお料理にまい進しつつ、でもママともお話がしたい‼ と。いつもそんな感じでカラダが2つ欲しいくらいです。(笑)
界外:仮に私が「産後ドゥーラ」なら、仕事をこなしきれるかどうか…。
有福さん:私も自分の家ではマイペースです(笑)。ただ、「産後ドゥーラ」としてのサポートの時間はまた別。ママに捧げる気持ちで誠実に仕事に励んでいます。
落ち込むことあっても、「産後ドゥーラ」をやめたいと思ったことはない
界外:仕事で悩んだり、落ち込んだりすることはあるのでしょうか?
有福さん:仕事中に失敗をしてしまうと、やはり落ち込みます。
界外:失敗とか、しないように見えますけど。(笑)
有福さん:そんな事はありません。お料理に集中し過ぎて、時にはハプニングも起きます。先日は新築のマンションのお宅の、シンクに渡した水切りのゴムの上に熱いお鍋を置いてしまって…。ゴムが溶けてしまいまして。もちろん弁償はしましたが、申し訳ない…とかなり落ち込みました。
ひらつかさん:他のご家庭のキッチンで料理するのは、実はそれほど簡単なことではありません。お宅ごとに、道具も違えば、物の置き場所もキッチンの設備も違います。このお仕事を始めたばかりのころは戸惑うこともありました。その代わり⁈ それぞれのお宅で便利グッズなど新しい発見も。これはいい! と思ったら、自分でも購入してお仕事にも持参しています。
界外:もう辞めてしまいたいと思ったことはありますか?
有福さん:失敗して落ち込んだりはしますし、壁にぶつかることもあります。それでも他にやりたい事はないと思えるほど、この仕事が好きです。ふわふわの赤ちゃんやお子さんを抱っこしながらのお世話が、とにかくかわいくて仕方ありません。仕事ではあるのですが、お子さんとの触れ合いを通して元気をいただいています。
界外:経験を経て、仕事への余裕が出てきたのかもしれませんね。
有福さん:そうであればうれしいですね。自分の子供が大きくなって、もう抱っこなんてさせてくれなくなってしまったので、それもあるのかなと。
「産後ドゥーラ」として大切にしていること、寄り添いの本当の意味
界外:この仕事をしていてうれしいと思うのはどんな時ですか?
有福さん:ずっとお料理作りのサポートに通っているお宅で、ママが『久しぶりにメロンパンを買ったら、甘すぎて…。こんなに甘いパンをいつも食べていたのか』と。ご自身の味覚の変化に驚いたお話をしてくださいました。
ひらつかさん:素材の味を生かした料理を食べ続けることで、味覚が変わったのですね。
有福さん:はい。これは私に伝えなくては、と思ってくださったそう。とてもうれしかったです。
ひらつかさん:食べることは、やっぱりとても大切ですよね。愛情を込めて作られたごはんの力は偉大ですね!
界外:ひらつかさんはどうでしょうか?
ひらつかさん:自分1人でできることには限りがあるし、そんなにたいした事は何もできていないと感じることも多いのですが…「あなたが来てくれるだけでいい」と言っていただいたときです。
界外:それはうれしい!
有福さん:うれしいですよね!!
あとは、言葉にすると普通かもしれませんが、心からの「ありがとう」の言葉をいただいた瞬間です。
ひらつかさん:わかります! お料理をたくさん作れることだけが求められているのではないのですよね。
有福さん:おととし、五島列島を旅した際に教会巡りをしまして。ある教会でメッセージカードが置いてあったのです。神父さんの手書きで、ひとつひとつ異なるメッセージが書いてありました。それがとても心に響いて…。好きな言葉があれば、どうぞお持ち帰りください、と。
大切なのは
どれだけ沢山のことや
偉大なことをしたかではなく
どれだけ心を込めたかです
-マザー・テレサ
(オンラインの画面で見せていただく)。
界外:どれだけ心を込めたかは、自分だけが知っていることですものね。マザー・テレサの言葉…改めてすごいと感じますね。
有福さん:本当に。「産後ドゥーラ」としての座右の銘はまさにこれだと、冷蔵庫に貼ってときどき眺めています。
人の気持ちの柔らかいところに踏み込む仕事、難しいと感じる事もあって当然
界外:ひらつかさんは、失敗したり、落ち込んだりすることはあるのでしょうか?
ひらつかさん:失敗とはちょっと違うかもしれませんが、難しいと思うことは、しょっちゅうあります。ママとの会話で、ご相談ごとに近い内容の時は、自分の言葉が浮かんできても、相手が今このお話をして受け止められない状況だったら、と思って言葉にするのをためらったり、自分の発した言葉が相手にとって良かったのかどうか、余計なひと言を言ってしまったのではないかと、後で考えてしまったりすることはよくあります。
界外:「産後ドゥーラ」なら答えを出してくれる、と期待されることも多いでしょうね。
ひらつかさん:子育ての事例や情報で明確な答えがあれば、もちろんすぐにお伝えしています。そうでない時は答えを出すというよりも、自分の考えはいったん横に置いて、良し悪しを勝手に判断したり、過度に同調せず、話されていることをまるごと受け入れるようにしています。ママが安心して自分の気持ちを話せるように、と。
そう言っておきながら、友人と会っておしゃべりするときなど、お互いに自分の言いたい事をわ~っと一気にしゃべって、満足! という事も多々あります。(笑)
界外:ママのためにいるひらつかさんと、それ以外のひらつかさん、どちらもあっていいのではないでしょうか。話すことですっきりしたり、気持ちの整理がついたりする体験があるから、その大切さもわかるのだと思います。そういう会話への気遣いは「産後ドゥーラ」をしながら身に付けたものですか?
ひらつかさん:私の場合は、今までの経験、お仕事も人づき合いもひっくるめて、思ったことをすべてお伝えするより、少し言い足りなかったかな、くらいがちょうどいいと感じることが多かったんです。ただこれはあくまで私なりの失敗や反省を踏まえたやり方です。「産後ドゥーラ」はママへの寄り添いの気持ちは一緒でも、関わり方は人それぞれでいいと思います。
出産の標準が急激に変化、医療の介入が増えている
界外:これまでたくさんのお宅にサポートに入っているお2人だからこそお聞きしたいのですが、今多くのご家庭で共通して見受けられるような問題などはありますか?
有福さん:「産後ドゥーラ」のお仕事とは少し離れるかもしれませんが、肌で感じるのは、出産への医療の介入が増えていることでしょうか。それに対してこうあるべきという意味ではもちろんありませんが、急速に増えた感を抱きます。
ひらつかさん:それは、私も感じます。中でも無痛分娩を選択される方はとても増えてきていると実感します。出産の日にちが決まるため、旦那さんのお休みが取りやすい、産後の計画が立てやすいと。また、産後の回復が早いとおっしゃる方も多いです。
有福さん:痛みに耐えかねて気が遠くなったり、いきみ過ぎて体力を使い果たすことはないと思いますし、お医者様は問題ないと言われると思います。ただ、産後にママが動けなくなるのは、今はしっかり休みなさいという身体からのサインだと思うのです。なので『無痛分娩だったので元気です』とおっしゃるママほど『今だけは休んで! 感じないだけで、本来は養生するべき時期なのだから』とお伝えするように心がけています。
界外:もし自分がこれから出産するとしたら、痛みがなく、産後の回復が早く、その後の計画も立てやすいですよと言われたら、とても合理的な出産方法だと思います。一方で、自然の流れに任せた方法で産みたいと思う気持ちも。正直迷ってしまうかもしれません。
ひらつかさん:出産については、一概にこれがいいと言えない部分があると思います。いろんな出産方法を調べられて、それぞれのメリット、デメリットを正しく理解した上で、その方のベストな選択ができるといいな、と思っています。
おいしく食べる、気持ちよく暮らす、そのためのサポートを上手に利用してほしい
界外:これからの目標や、やりたいことはありますか?
ひらつかさん:今のママたちの中には、家族のための食事づくりを頑張ろうとしすぎて、ストレスの原因になっている方が多いように感じます。お話をきいていると、手作りで、バランスが良くて、ダシもとって、できるだけ添加物も少なく…と。たしかにドゥーラでも、そういったお食事をご用意しています。でも、ご自分でつくる時には、外食や中食、デリバリーに頼ることがあったっていいと思います。
有福さん:現役のママたちの大変さには、インターネットに溢れているキラキラした子育て情報や、専業主婦がほとんどだった頃の、ママたちの母親世代の子育て観も影響しているように思います。
真面目なママほど「こうあるべきではないか」と考えすぎてしまうのかもしれませんね。難しく考えすぎず、もっと肩の力を抜いてもらえたらな、と思います。とはいえ私自身もいろいろな情報に振り回されていたので、今だから言えることではあるんですけれど。
ひらつかさん:仕事など、目標のために頑張っているママや、やりたいことのある女性を応援したいと思って「産後ドゥーラ」になりました。その後、大変なのは産後だけじゃないと感じることが増えて、その人の人生で手助けを必要としているタイミングに最適なサポートができるようにしたい、と。それが今の目標です。
界外:有福さんはいかがですか?
有福さん:明確に今これをやりたいというのはまだ見えていませんが、ひらつかさんの新しいチャレンジには大変共感することが多く、もし私にもできることがあるのなら協力したい、という気持ちです。
ひらつかさん:毎日おいしいごはんを作る、掃除や洗濯をしたり、整理整頓などの家事をして、暮らしをきちんと整えていくことは、忙しい現代人にとってはかなりの労力を要します。人1人にできることは限られていて、時にはエネルギーが枯渇してしまうこともあるのではないでしょうか。そうなる前に人に頼ることも選択肢のひとつ。この先、産後だけに限らずサポートが必要とされる時代がやってくる、そんな予感がしていて、ワクワクしています。前向きに人生に立ち向かう女性に協力していきたい! 女性の人生を応援したい! という夢の実現に向けて精進したいと思っています。
界外:今日はとてもいいお話をお聞きすることができました。どうもありがとうございました。
有福香織(ありふくかおり)さん
1975年生まれ。広島県出身。大学卒業後、結婚。アパレル会社での仕事に携わったのち、2度の出産を経る。その際、ココロも身体もボロボロだった自分こそ「産後ドゥーラ」が欲しかった! と。その気持ちを胸に2012年「産後ドゥーラ」第一期生として、仕事を開始。
ひらつかけいこさん
1976年杉並区生まれ。特許庁に勤務していた時に25歳で1人目を出産。ほぼ年子で2人目を出産する。産後の生活の大変さを知らずに無理をした経験、シングルマザーの経験から、仕事をしているママ、目標に向かって頑張るママの力になりたいと「産後ドゥーラ」になる。2児の母。
インタビュアー 界外亜由美(かいげあゆみ)
産前産後の女性とサポーターをつなぐ『MotherRing』主宰。やさしさが循環する社会づくりを目指して活動している。「言葉」で伝える制作会社『mugichocolate』代表取締役。
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助産師・ドゥーラ・保育士・ベビーシッター・治療家・リラクゼーション施術者・運動指導者といった、産前産後の家庭へのケアサービスのプロフェッショナルを、MotherRingサポーターと呼んでいます。
様々なケアを提供されている方にMotherRingサポーターとしてご登録いただき、広報活動をお手伝いすることで、産前産後のご家庭が必要なケアを受けられる社会を目指しています。
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