歩きはじめの子どもを上手に見守るヒント|理学療法士が伝える!楽しくすくすく育つコツvol.16

みなさんは、毎日の子育てを楽しんでいますか。喜びを感じるひとときもあれば、ふと「こんな時、どうしたらいいの?」「これって、このやり方でいいの?」と、迷いが出てくることもあるのではないでしょうか。MotherRingサポーターでもある運動発達の専門家、理学療法士・得原藍さんによる、楽しみながら子どもの育ちをうながす親子の関わり方のコツを教わる連載ですMotherRingJOURNAL読者のみなさんから寄せられた「子どもの発達」や「育児」についてのお悩み相談に、詳しく丁寧にお答えします。

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目次
・歩きはじめの時期に心配なこと
・歩きはじめは時期もスタイルもさまざま
・子どもはトライアンドエラーを繰り返して成長する
・土や砂利、芝生…いろいろな地面を歩く体験を
・「ここなら転んでも心配ない」と思える環境で見守る
・転んで泣いてしまったときは

歩き始めの時期に心配なこと

得原さん、こんにちは!1歳5ヶ月になる男の子の母です。最近、伝い歩きから少しずつ歩き始めているのですが、よく転ぶようになってしまいました。頭が重いせいか、ころんとひっくり返ることが多く、その都度泣いてしまいます。大人の目が届くときならいいのですが、ちょっと目を話した隙に転び、泣き声で気づくこともあり、ヒヤヒヤします。外で歩かせるのも、転ぶかと思うと勇気が出ず・・・

同じ月齢のお子さんは、もうすたすた歩いているので、ちょっと運動神経が悪いのかなとも思っています。スムーズに歩けるために、親がサポートできることはあるでしょうか。遊びやトレーニング方法がありましたら教えてください。

(東京都/Jさん)

歩きはじめは時期もスタイルもさまざま

こんにちは!転ぶたびに泣いてしまうと、お母さんも心配になってしまいますよね。また、同じ月齢のお子さんがすたすた歩いているのをご覧になって、お子さんの運動についてサポートしてあげたい気持ちになられているとのこと。やっぱり周囲の様子って気になるものですよね。ご相談くださってありがとうございます。ちょっと順序がご質問と逆になってはしまうのですが、はじめに、月齢のわりに上手に歩くようになるのが遅いのではないか、という疑問と、親がサポートできることがあるか、についてお話しさせてください。

まず、歩きはじめの時期というのは、個人差がとても大きいです。早い子では9ヶ月くらいから歩く子もいますし、健康でも2歳近くまで歩かない子もいます。運動の発達は一進一退で進んでいくので、数歩歩くことができたなあ、と思っていても、しっかり歩けるようになるまではハイハイを好む子もいます。

子どもにとっては、歩くのもハイハイも同じように、彼らの好奇心の目的地に辿り着くまでの移動手段なので、そのときに自分が得意な方法を選んで移動するんですね。また、慎重な子はできるだけ転ばないような方法でゆっくり移動しようとしますし、未知のものに対して積極的に関わろうとする子はとにかく速く動こうとして転ぶなど、子どもの性格も歩きはじめのタイミングや歩きかたに影響してきます。

単純に同じ月齢だから同じ頃に歩き始めるわけではありません。安心して見守ってあげてくださいね。

子どもはトライアンドエラーを繰り返して成長する

何かサポートできることはあるか、ということなのですが、例えば、お母さんご自身が子どものころ、自転車に乗る練習をしたときのことを思い出してみてください。何度も失敗しながら、自分なりのコツを見つけるまで練習したのではないでしょうか。実は、子どもの運動発達もそれと同じで、子どもが自分自身でコツを掴むまで自分の意思で練習する、ということが大切です。歩かせようと心が急くばかりに、お子さんの手を持ったり、歩行器で歩かせてみたり、外から働きかけたくなる気持ちはとてもよくわかるのですが、補助輪付きの自転車に乗れるようになることが自転車に乗れるようになることとあまり関係がないように、歩行に関しても、子ども自身でトライアンドエラーを繰り返すしかないのです。

土や砂利、芝生…いろいろな地面を歩く体験を

ただひとつ、手伝ってあげられることを挙げるとすれば、いろんな地面をたくさん歩かせてあげることをお勧めします。お休みの日には広い公園に行って、土や、砂利や、砂や、芝生の上を一緒にたくさん歩きましょう。歩く時は、お子さんのペースで歩くのが理想です。いろんな路面を歩く中で、子どもは自分の身体を支える足の裏の感覚を養っていきます。そして、不安定な姿勢になってしまったときの身体のバランスの取りかたも学びます。

「ここなら転んでも心配ない」と思える環境で見守る

土や芝生は、転んでもそれほど痛くないですし、アスファルトよりも安全です。角がある縁石や大きな段差があるときなど、大人から見て「転んだ時に大怪我につながりそうだな」と思う環境は避けたほうが良いですが(ご自宅でも、頭をぶつけそうな高さの家具の角などにはゴムやシリコンのカバーを付けてもいいですね)、なだらかな坂や段差の小さめな階段などは、チャレンジングで子どもは大好きですから、ぜひ見守ってあげてほしいです。

手をつきながら坂道を登ったり、小さな身体のうちにたくさん転ぶことも、大切なんですよ。転んで、ごちんと頭をぶつけて、はじめて「この転びかたは危ない、じゃあどうしよう」と心身で考えていくことが運動の習得につながります。小さいうちにこれを経験することで、身体が大きく重くなって転倒時の衝撃が大きくなったときの大怪我を防ぐことができるのです。ですから、ぜひ、お母さんご自身が、(ここならそれほど心配せずに転ぶことを見守れるな)と思える環境をご自宅周辺で探してみてください。そして、子どもたちのチャレンジを、心の中で励ましながら、やさしく見守ってあげてくださいね。

転んで泣いてしまったときは

そうそう、転んで泣いてしまったときの声かけについても、ひとつアドバイスさせてくださいね。子どもは、転んでしまったとき、痛さよりも驚きで泣いていることが多いです。もちろん、ごちん!は痛いのですが、大人から見て「そんなに泣かなくても・・・」と思うような状況のときには、驚いているんですね。ですから、大人は大騒ぎせずに、そっと近寄って手を差し伸べて「大丈夫?痛かったね。驚いたね。」と声をかけてあげてください。驚いて混乱している状況で「わー!大変!」と大人まで慌ててしまうと、子どもの混乱は深まってしまいます。ここで必要なのは、痛かったことに対しての共感と、お母さんがここにいてあなたを見守っていたよ、という安心感です。慌てず騒がずやさしく対処してあげることで、そんなに大したことなかったな、次もチャレンジしてみよう、という気持ちが湧いてきます。お母さんは冒険の安全基地なのです。チャレンジがうまくいって、お母さんのほうを振り返ったら、そのときはニコッと褒めてあげてくださいね。

お子さんは、伝い歩きから独歩(上半身の支えなしで歩くこと)へ向かっているとのこと。今は、新しい方法での歩きかたを模索している頃ですね。転んでも泣いてもまたチャレンジしていること、すごいですね。ゆったりした気持ちで見守って、心に勇気を与えてあげてくださいね。大丈夫です、このまま上手に歩くようになっていきますよ。

歩きはじめの子どもをみるポイント
・土、芝生、砂利などいろいろな質感の地面を体験させてあげよう
・公園など、子どものトライアンドエラーを安心して見守れる場所を見つけておこう
・転んで泣くのはびっくりしたからかも。大人は慌てず対処しよう

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ライター / 得原 藍

理学療法士。大学卒業後、会社員を経て理学療法士の資格を取得。病院勤務を経てバイオメカニクス(生体力学)の分野で修士号を取得。これまでの知識や経験を生かし、現在は運動指導者の育成、大学の非常勤講師などを務める。また、子育て支援団体との協働で運動発達に関する相談を受けたり、外あそび活動などを行っている。6歳男児の母。