「いたいのいたいの飛んでけ!」はダメですか?:理学療法士が伝える!楽しくすくすく育つコツVol.59

みなさんは、毎日の子育てを楽しんでいますか。喜びを感じるひとときもあれば、ふと「こんな時、どうしたらいいの?」「これって、このやり方でいいの?」と、迷いが出てくることもあるのではないでしょうか。運動発達の専門家である理学療法士・得原藍さんによる、楽しみながら子どもの育ちをうながす親子の関わり方のコツを教わる連載です。

-目次-
・子どもが転んで泣いちゃった!
・まずは大人も落ち着いてから声かけを
・「いたいのいたいの飛んでけ!」が効く場面もある

子どもが転んで泣いちゃった!

こんにちは。2歳の子どもを育てています。

最近、歩いたり走ったりするのが楽しくなってきたようで、公園や家の中でもよく転びます。そのたびについ「危ない!」「大丈夫!?」と大きな声を出してしまったり、「痛かったね、痛かったね」と慌てて抱き上げたりしているのですが、それまで泣いていなかったのに、私の反応を見て大泣きしてしまうこともあります。

逆に、「痛いの痛いの飛んでいけ〜!」と気持ちをそらしたほうがいいのかなと思うこともあるのですが、本当にそれでいいのかもわかりません。

子どもが転んだとき、親はどのように声をかけたり、関わったりするのがよいのでしょうか。

まずは大人も落ち着いてから声かけを

こんにちは。ご質問ありがとうございます。2歳のお子さん、走ることが楽しくなってきたのですね。新しい運動を獲得すると、とにかく一生懸命試したくなるもの。意欲たっぷりに成長していて微笑ましいです。

走っていて転んでしまう場合に限らず、家の中で潜ろうとした机の角に頭をぶつけてしまったり、階段で躓いてしまったり、一緒にいるとハラハラする場面が増えてくる頃ですね。その際に大人が近づいていって抱き上げたり、泣いてしまった子をあやすために「痛いの痛いの飛んでいけ〜!」と声をかけることも、よくあることです。ただ、ご質問では、大人の反応を見て大泣きしてしまう、ということに注目されています。とても良い視点だと思いました。今日は「子どもが転ぶ場面」を順に追いながら、話を進めていってみましょう。

まず、子どもは転ぶものです。大人のように安定した歩行ができるようになるには、3歳くらいまでたっぷりと歩く時間を確保することが重要だと考えられています。3歳くらいになると、運動学的に大人に近しい歩行ができるようになります。それまでは、筋肉の活動がぎこちなく、躓いたときにも「転ぶのを防ぐ一歩」が出づらいのです。

2歳のお子さんが転ぶときには、おそらく「行きたい場所」に一心に向かっていたりして、気持ちが身体よりも先走っていることが多いのではないでしょうか。躓いて、急に倒れるものですから、とても驚きます。それほど痛くなくても、驚きで泣いていることもあります。見ている大人としては、自分では絶対に転ばないような場所で転ぶので、こちらも驚きます。思わず大きな声が出てしまうのも仕方ありません。けれど、この場面でまず大人が気をつけたいことは、びっくりしたお子さんに、大人のびっくりした声や態度が重なると、子どもはさらに混乱する、ということです。こちらも無意識の反応なので致し方ないですが、ここでぐっとこらえて近づいて、大きな怪我がなかったかを確認することがまずは大事でしょう。

アッ!と思っても、まずは近づいて寄り添い、手を添えて「大丈夫かな?起きられるかな?急に転んでびっくりしたね」と声をかけてあげてください。ここで、自分で動いて起き上がることができれば、まずは身体の様子は大丈夫。泣いてしまって起き上がれないようなら、静かに抱き起こしてあげてください。それから、あらためて周囲を見渡して、近くの縁石など危険物に頭をぶつけたりしていないか確認します。とても事務的に感じられるかもしれませんが、ここで大人が落ち着いて対処できると、お子さんも必要以上に不安にならずに済むものです。①びっくりしたね、②怪我がないか確認させてね、と対応している間に、泣いているお子さんも少しずつ落ち着いてくるでしょう。もしも擦り傷などできていたら、③痛かったね、と気持ちを代弁してあげてください。まだ、咄嗟の出来事に語彙が追いついていない頃なので、お子さん本人は混乱の中にありますが、信頼している親御さんが落ち着いているのを見ると、安心できます。そして、今の自分の気持ちを、「びっくりした」「痛かった」という語彙と、しっかり結びつけることができます。その繰り返しで、ひとりで転んでしまったときの気持ちを整理していけるようになりますから、急がば回れで対応していきましょう。

「いたいのいたいの飛んでけ!」が効く場面もある

ここまで対応できて、お子さんも落ち着いてきたら、「痛いの痛いのとんでけー!」の出番です。痛かった?と聞いて、痛かった、とお子さんが話したら、痛いのが飛んでいくおまじないをかけるのですね。擦り傷があればなおさら、子どもも気持ちが揺れていますから、おまじないの出番です。擦り傷を流水で洗う際におまじないをかけてもいいでしょう。絆創膏も、協力な精神安定剤になります。傷が隠されることで、安心するのでしょうね。わたしも子どもが小さいときには、市販の絆創膏とマジックペンを持ち歩いて、「アンパンマンがいい?ドラえもんがいい?」と、気持ちを紛らわせながら膝に貼った絆創膏に絵を描いてあげていました。そうすると、そのあとも気持ちよく遊べることが多かったです。ぜひお試しください。(絆創膏はきれいに流水で洗ってから。そうでないと化膿の原因になりますので、帰宅後に必ず一度確認をし、きれいな水道水で洗って、貼り直してください。)

いざというときにはなかなかうまくいかないかもしれませんが、このように、お子さんの驚きを受け止めていくと、その場限りではない成長に繋がっていきます。たとえば、不意に驚くことが起きたときに、お子さん自身が気持ちを整理することができるようになっていきます。転んでしまったことを受け入れ、驚いた気持ちを鎮め、切り替えていくきっかけを、大人が寄り添って声をかけることで促していきたいところです。大きな声で「痛かったねー!痛かったねー!」と状況を打ち消してしまうと、お子さんが「転ぶ=痛い=大きな声で対処」という流れに親しんでしまうことにもなりかねません。「あっ!」と大きな声が出ても、まずは、近寄って子ども自身がどう状況を捉えているか確認してあげましょう。

大人も同じだと思いますが、転んだ直後は「おどろき・とまどい・はずかしさ」が一番にくるもの。そこで大騒ぎをしないことで、その後の復活がスムーズになります。気持ちが落ち着いたら、つぎの遊びに向かうためのおまじないが功を奏します。子どもも少しずつ大きくなって、転んだときの気の動転を自分でおさめられるようになっていきます。大人はそれを支えてあげたいものです。

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ライター / 得原 藍

理学療法士。大学卒業後、会社員を経て理学療法士の資格を取得。病院勤務を経てバイオメカニクス(生体力学)の分野で修士号を取得。これまでの知識や経験を生かし、現在は運動指導者の育成、大学の非常勤講師などを務める。また、子育て支援団体との協働で運動発達に関する相談を受けたり、外あそび活動などを行っている。6歳男児の母。