小さな子への話しかけのポイント:理学療法士が伝える!楽しくすくすく育つコツVol.42

みなさんは、毎日の子育てを楽しんでいますか。喜びを感じるひとときもあれば、ふと「こんな時、どうしたらいいの?」「これって、このやり方でいいの?」と、迷いが出てくることもあるのではないでしょうか。運動発達の専門家である理学療法士・得原藍さんによる、楽しみながら子どもの育ちをうながす親子の関わり方のコツを教わる連載です。

目次

1.「たくさん話しかけて」と聞いたのに…話しかけすぎもNG?
2.好奇心が育つ1歳以降に合ったコミュニケーション
3.アイコンタクトや指差し…1歳以降は「子どもから」のアクションが増える
4.「言葉のシャワー」から「会話」へ変えていくコツ

「たくさん話しかけて」と聞いたのに…
話しかけすぎもNG?

1歳になる子どもの母です。子どもの心や言葉を豊かにするためにはとにかくたくさん語りかけるといいと聞き、新生児の頃から実践しています。何かをする前には「〜しようね」と声をかけ、上手にできたらほめ、桜が咲いていたら「桜だよ、ピンクできれいだねえ」などとたくさん話しかけていたら、先日夫に「さすがにやりすぎでは?」と言われてしまいました。話しかけすぎるとよくない、ということってあるんでしょうか。

好奇心の育つ1歳以降に合った
コミュニケーションを

こんにちは。ご質問ありがとうございます。お子さんがもうすぐ1歳になるとのこと、おうちの中を探検して、毎日小さな冒険を繰り返している頃でしょうか。新生児のころからたくさん語りかけをしてきたとのこと、それは決して間違った方法ではないですよ。けれど、ご家族の「やりすぎでは?」との言葉にも理由がありそうです。何がその違和感を生み出しているのでしょうか。0歳から1歳にかけての子どもの心身の発達と照らし合わせて考えてみたいと思います。

生まれたばかりの赤ちゃんは、はじめてしっかりと自分の身体に重力を感じ、ぼんやりとした視界の中で生活を始めます。あたたかい羊水に包まれて、お母さんの心臓の音が響く胎内から、まぶしい光と暗闇のコントラストのある世界へ、風が吹き、音が共鳴する世界に、やってきたのですね。そのころには、毎日変わらずそこにある声、ぬくもり、抱かれている安心感で、この世界を安全な場所と認識する、つまり家族の声掛けや抱っこが赤ちゃんたちの生きる縁(よすが)になっていました。今回ご相談くださったお母さんも、ご家族も、ここまで1年間、できる限りの愛情を注いでお子さんを育ててきたと思います。その中で、たくさん声掛けをしてきたことも間違いではありません。

でも、子どもって、この最初の1年でずいぶん成長するものです。抱っこして揺らしてもらうしかなかった新生児の頃と比べれば、きっとずいぶんと身体を自由に動かせるようになっていることでしょう。そして、いつも興味のある方向へきょろきょろと視線を動かし、そちらへ移動しては好奇心の赴くままに手を伸ばしているでしょう。

アイコンタクトや指差し…
1歳以降は「子どもから」のアクションが増える

家族とのコミュニケーションも、ずいぶん変化してきているのではないでしょうか。たとえば、目の前のことに夢中な時には、こちらの話しかけたことにも気が付かなかったり、何か発見があるとお母さん・お父さんのほうを振り向いてアイ・コンタクトをとってみたり、外へ出れば気になるものを指さしてみたり。もしスマートフォンなどに新生児期の動画が残っていれば、ぜひ振り返ってみてください。ずいぶんと、お子さんの世界に対する態度が変わってきたことがわかるのではないでしょうか。びっくりして泣くばかりだった毎日から、新しいことに目を向ける毎日に、変わってきていますね。

赤ちゃんは、寝返りをするようになると、自分で世界を探求していくフェーズに入ります。それまでは、抱っこしてもらわないと近づけなかったものに、自分の興味関心で近づいていけるようになる。鋭敏な感覚を持つ手や口で、なんでも触ってみることもできるようになる。そこからだんだんと、自分より視線の高い大人や兄姉、周囲の子どもたちを真似るように上へ上へと動きを練習していきます。そう、どんどん「人」として成長していっているのです。そして身体と同じように、彼らの心も、外へ外へと動いていっています。おそらく、相談者様のご家族は、外へ興味を向けているお子さんにずっと話しかけているその様子が気がかりだったのではないでしょうか。

「言葉のシャワー」から
「会話」へ変えていくコツ

動き出し、世界を広げ始めた子どもたちに話しかけるコツがあります。それは、話しかけでも、言葉のシャワーでもなく、会話をするように心がけることです。たとえば、お子さんに何かをしてほしいときには、お子さんがいま聞くことができる状態かな?と声をかけ、ひと呼吸置いてみる。お子さんが、こちらを見てチラリと目があったら、「どうしたの?」と声をかけてみる。そこでお子さんが伝えようとしていることを「ああ、◯◯したかったのね。」「猫がいたね。」と、言語化する。ポイントは、お互いの会話のタイミングをはかることです。

相談者さまのお子さんはまだ1歳前ですから、言葉を使って明確な返事ができるわけではないと思います。けれど、お腹が空いたときや眠いときには、それがわかるような仕草をすると思います。それから、遊んでいるときに、ちらっとお母さんを振り返ってなにか言いたそうにしていることがあると思います。その瞬間が、話しかけどきです。それから、ちょうど1歳前くらいには、なにかに向かって指をさし、お母さんのほうを向くような動作もよく見られると思います。そのときには、一緒に「なんだろうねえ?」と、指の先にあるものに興味を示してあげてください。お母さんが、自分の興味のあるものについて話をしてくれている、だからこそ子どもはその言葉を理解して、自分も使えるようになりたいと思うものなのです。
お母さんは話を聞いてくれる人、ぼく/わたしが「知りたいこと」を教えてくれる人、と、思ってもらえるような声掛けをしていきたいですね。

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ライター / 得原 藍

理学療法士。大学卒業後、会社員を経て理学療法士の資格を取得。病院勤務を経てバイオメカニクス(生体力学)の分野で修士号を取得。これまでの知識や経験を生かし、現在は運動指導者の育成、大学の非常勤講師などを務める。また、子育て支援団体との協働で運動発達に関する相談を受けたり、外あそび活動などを行っている。6歳男児の母。