入園前にできる、新生活に向けた心と身体の準備|運動発達の専門家、理学療法士が伝える!楽しくすくすく育つコツvol.7

みなさんは、毎日の子育てを楽しんでいますか。喜びを感じるひとときもあれば、ふと「こんな時、どうしたらいいの?」「これって、このやり方でいいの?」と、迷いが出てくることもあるのではないでしょうか。運動発達の専門家である理学療法士・得原藍さんによる、楽しみながら子どもの育ちをうながす親子の関わり方のコツを教わる連載です。

入園前にしておきたい心と身体の準備

暦の上ではすっかり春ですが、まだまだ気候が不安定ですね。季節変わりには大人も子どももそわそわするもの。とくに、この春から幼稚園や保育園にいくお子さんを持つご家庭では、新しい生活のはじまりにむけた準備に忙しい毎日なのではないでしょうか。今回は、入園前にしておいてほしい親御さんの心と身体の準備についてお話したいと思います。

園生活のコツは、大人のちょっとした先回り

保育園や幼稚園は、毎朝、同じ時間にはじまって、同じ時間に終了します。これまでは、お子さんのその日の体調や様子を見て生活時間を調整していたと思いますが、少しずつ集団生活のリズムに合わせていくことになります。保育士さんや幼稚園の先生は、複数のお子さんの生活をマネジメントするプロなので、多少の睡眠不足や寝起きのグズグズがあっても心配せず預けて大丈夫ですが、家庭でも就寝や起床の時間を一定にすると、保育園や幼稚園での生活に溶け込みやすくなるでしょう。リズムある生活をすると、子どもはのびのび機嫌よく過ごすことができるようになります。
大人からすればこれまで何度も経験してきた春の生活変化ですが、子どもたちにとっては全てが初めてのこと。大人が少し先回りして、早寝早起きを意識した生活を家族全体で心がけておくと、あとが楽です。急がば回れ、です。週末に少しリズムが乱れたなあと思ったら、月曜日のスタートが少し乱れるかもしれないな、と心の準備をしておくと、慌てずに済むと思います。

生活リズムとイヤイヤ期

1−2歳で「なんでもかんでもイヤ!」という時期の子どもたちの保育園スタートは、朝も夜もなかなか大変です。この時期は、子どもの心の発達の中でもとても重要な時期で、これまで形成されてきたお母さん、お父さんとの信頼関係を土台にして、自分の「できる」を試す時期なのです。言葉の語彙が足りないので「イヤ」と言うことが多くなると思いますが、真意は「自分で決めて挑戦してみたい」だと思ってください。
朝の登園準備で「イヤ!」が出てきたら、自分で決めたい!と思う気持ちを尊重して「どっちがいいかな?」を試してみてください。パンにする?ご飯にする?と主食を選んでもらったり、ピンクのパンツにする?水色のパンツにする?など、二択問題を用意します。自分で決めるステップを経ると、それだけで少し気持ちが落ち着く子も多いようです。

家と外で「できる」は違う

保育園、幼稚園は、子どもにとっての「社会の入り口」です。大人にとって、会社や地域のコミュニティが家とは違う場所であるように、子どもたちにとっての園生活は「楽しいけれどそれなりに疲れる」場所でもあります。
もちろん、園では子どもたちができるだけ心穏やかに過ごせるように様々な配慮がなされていますが、帰宅時には心身ともに疲れていることもあります。ですから、朝の元気な時間帯にできたことが夕方はできなかったり、園でできることが家での行動になかなか反映されなかったりします。それが普通です。特に、集団生活をはじめたばかりの子は、もしかしたら、これまでできていたことが一旦できなくなることもあるかもしれません。幼稚園入園前には自分でできていたトイレや着替えが、突然お手伝いなしにはできなくなったり、保育園入園前には毎朝ご機嫌で食事していたのになかなか食べなくなったり。生活全般に慣れるまで、少し心身ともに不安定になりがちなのです。
発達の観点から見ると、集団生活は家庭での生活にはない様々なメリットを与えてくれる場所でもあり、その後の小学校生活への準備段階でもあるので、あまり焦らず、保育園なら4−5年、幼稚園なら2−3年、長期的な視点で子どもの生活を見守ってあげたいですね。

入園前に「おはなし」してあげましょう

新しい生活がはじまる子どもたちも、心がそわそわしてくる頃です。0歳や1歳の子どもでも、生活の微妙な変化を感じとっています。入園の少し前から、「もう少し暖かくなって、桜が咲く季節になったら、保育園(幼稚園)というところに行くんだよ。そこではやさしい保育士さんや先生たちが一緒に遊んでくれて、お昼ごはんもお友達と一緒に食べるよ。」そんなお話をしてあげてください。どんなところだろう?誰がいるんだろう?何をするんだろう?という情報を、事前に少しでも耳に入れておくと、子どもの気持ちも違ってきますよ。

<参考資料>
服部伸一他『テレビ視聴時間の長短が幼児の生活習慣に及ぼす影響』小児保健研究、2004
服部伸一他『曜日別にみた幼稚園児の生活時間について』小児保健研究, 2007
白井万土香他『幼児の対人行動に関する縦断的研究』 神戸大学発達科学部研究紀要, 2002


得原 藍
理学療法士。大学卒業後、会社員を経て理学療法士の資格を取得。病院勤務を経てバイオメカニクス(生体力学)の分野で修士号を取得。これまでの知識や経験を生かし、現在は運動指導者の育成、大学の非常勤講師などを務める。また、子育て支援団体との協働で運動発達に関する相談を受けたり、外あそび活動などを行っている。6歳男児の母。

◎infomation


MotherRingサポーターとは
助産師・ドゥーラ・保育士・ベビーシッター・治療家・リラクゼーション施術者・運動指導者といった、産前産後の家庭へのケアサービスのプロフェッショナルを、MotherRingサポーターと呼んでいます。
様々なケアを提供されている方にMotherRingサポーターとしてご登録いただき、広報活動をお手伝いすることで、産前産後のご家庭が必要なケアを受けられる社会を目指しています。

MotherRingサポーターページへの掲載
MotherRingサポーターのみなさまのサービス内容や受付条件などを、MotherRingサポーターページに掲載いただくことが可能です。

motherringサポーターページの内容・ご利用方法はこちら(PDF)

「Webサイトがほしいけど、自分でつくるのは大変……」
「日々のサポートで手いっぱいで、広報活動まで手が回らない……」
といった方のお手伝いをします。
また、産前産後のご家庭にとっても、様々なMotherRingサポーターのみなさまの情報をまとめて見ることができるため、比較検討しやすくなっています。

ご登録までの流れ
①フォームよりお申し込み
フォームはこちら

②MotherRing事務局より、申込書等の必要書類をメールにて送付します。
必要事項を記載し、お申し込みください。


③オンライン面談を実施します。
詳細なサポート内容はもちろん、サポートへの思いなど、お聞かせください。


④登録、MotherRingサポーターページにあなたの情報が掲載されます。
サポート内容をまとめた文章や画像などの掲載情報をご提出いただき、MotherRing事務局であなたの専用Webページを作成し、掲載いたします。

MotherRingは、助産師・ドゥーラ・保育士・ベビーシッター・治療家・リラクゼーション施術者・運動指導者はもちろん、様々な産前産後の家庭へのケアを提供されているみなさまのお役に立ちたいと考えています。上記以外の職種の方も、ぜひ一度お問い合わせください。

MotherRingサポーター登録フォームはこちら

ライター / 得原 藍

理学療法士。大学卒業後、会社員を経て理学療法士の資格を取得。病院勤務を経てバイオメカニクス(生体力学)の分野で修士号を取得。これまでの知識や経験を生かし、現在は運動指導者の育成、大学の非常勤講師などを務める。また、子育て支援団体との協働で運動発達に関する相談を受けたり、外あそび活動などを行っている。6歳男児の母。