「バースプラン」は、妊娠出産に関する希望や助産師さんにお願いしたいことを書く、いわば出産計画書のようなもの。しかし、自分が妊娠出産に対して何を望んでいるのか、いざ書こうとするとなかなか言葉にならないことも。バースプランをきっかけに、自分の希望を考え始める人も多いのではないでしょうか。
日々妊婦さんと向き合い、バースプランのサポートをすることもあるMotherRingサポーター。もしも自分で書くとしたら、どんなポイントで書くのでしょうか。プロが本音で考える「私の理想のバースプラン」、第三弾をお届けします。
MRサポーター有山みよこさんの「私の理想のバースプラン」
有山みよこさんは、マレーシア在住のドゥーラです。産前から産後までの幅広いケアを得意としています。中でも有山さんが注力しているのは、「マレー式産後ボディトリートメント」です。これは、ハーブの香りたっぷりのオイルトリートメントを、7日間連続で行うというもの。セラピストに悩みを聞いてもらいながら、身体を整えていきます。慣れない育児や寝不足で疲れの溜まりがちな産後、自分のためだけに過ごせる貴重な時間になりそうです。
緊急時の対応を考えた上で自分らしく過ごす
陣痛時に望む対応は?
「専門家のアドバイスを受けられる環境で、歩けるときには歩いてみます。お気に入りのタオルや音楽、アロマなど、日常的に使っている落ち着けるグッズを持っていきます。そばにいてほしい人に手を握っていてもらえると心が安定します。逆に、距離を置いて欲しい人には出産後、時間を経てから会います。距離をおくべき人との距離が保てることも、大切な環境設定です。
長い陣痛の時間、ともに最初から最後まで伴走してくれる人の存在に感謝ができて、わからないことや不安なことは質問ができる。そんな関係性の中にあることが理想だと思います。」
分娩時の過ごし方は?
「パートナーに出産に立ち会い、手を握って見守っていてほしいです。また、パートナーには上の子が安心して待っていられる環境を整えてもらいます。上の子が立ち会いを希望する場合は立ち会いをしてもらいます。その際、パートナーの他に上の子を見守るために大人を一人同席いただきます。(もし母体搬送になった場合、一晩子守をお願いできる方に来てもらいます。)
産婦人科医が控えている環境で、助産師さんに分娩介助をしてほしいです。いきむときの会陰保護や痔の予防のための手技をお願いします。パートナーを含めた形での、痛みを逃す体勢の提案をしてもらえたら試してみたいです。」
分娩時の過ごし方は?
「その場所でそのまま家族と共にゆっくり過ごしたいです。初めての抱っこはパートナーにしてもらいたいです。写真におさめて大切な記念にします。へその緒は、パートナーや子どもが希望すれば、ぜひやってもらいます。
分娩後、母体や新生児の健康状態を医療者に確認してもらった上で初乳を与えたいです。赤ちゃんが自分のお腹の上に迎え入れ、おっぱいを吸いに自力で探すかどうか様子を見てみたいです。そして、きれいな産着をきせてもらった新生児の様子や家族の様子を、眺めたいだけ眺めています。目を閉じて休みたくなった時に、新生児の見守りをどなたかにお願いして、安心できる環境で休みます。」
MRサポーター伊東清恵さんの「私の理想のバースプラン」
ニューヨーク在住のドゥーラ、伊東清恵さん。日本、エチオピア、東ティモール、スーダン、ヨルダンと、さまざまな国で看護師として働いた経験をもっています。米国ではドゥーラによる病院での立ち会いサポートを認めている病院が多く、伊東さん自身も立ち会いサポートやオンラインでのサポートを行っています。また、ラクテーション(母乳)カウンセリングやヨガなど、産後のボディケアでも人気のサポーターさんです。
理想的でなくてはいけない、と思わないことが大事
どんな風にバースプランを書く?
「自分らしさ120%のバースプラン。自分が自分らしく産める=どうやったら自分らしくいられるか?そのための環境や一緒にいる人、希望する、またはしない医療介入などを書き出しておくと思います。綺麗にまとめなきゃ、とか、みんなが書いているのにならって、といった『こうあらねば』を取り去って、文章でも絵でもなんでも、『お産の時、私はこうしたい!こうありたい!』という希望をまとめられたらいいと思います。」
陣痛から分娩まで、私が重視したいのはリラックスできること=安心できること。どんなことでリラックスできるかは人それぞれだと思いますが、自分だったらこういう環境でこういう人とこういうことをしていたら安心できる、ということがあると思います。そういった、気持ちよく過ごせる方法が入っているといいと思います。
納得のいくバースプランを立てるために、気をつけるべきポイントは?
「形やバースプランそのものにこだわりすぎない!プランなので、実際には当日変えてもいいし、変わる可能性があるものです。それ通りにならないと失敗、ということでもありません。自分の気持ちを整理したり、パートナーや医療者、その他のサポートの人とのコミュニケーションツールとして使えればいいと思います。そして、妊娠中から関係者とシェアして、必要に応じてどんどんつけたしや変更をしていくのが大事だと思います。」
どんな選択肢があるか、情報収集も必要
自分がどんな出産を望むかを考える時、地域にどんなリソースがあるかを知ることも大事です。有山さんは、出産前の情報収集について詳しく教えてくださいました。
「まずは、どんな出産の方法や場所、助産師さんとの出会いがあるのか、地域を広く眺めて情報収集をしてみてください。
出産場所でいえば、自宅、助産院、クリニック、第二次、第三次救急医療機関などがあります。
出産方法には、経膣分娩か帝王切開か、和痛、無痛、促進剤使用の有無、計画分娩かアクティブバースか、家族の立ち合いの有無、産前教育の有無、母乳外来の有無、小児科(NICU)との連携の有無、出産ドゥーラ立ち合いの可否、緊急搬送が必要となった場合の高度医療施設との連携についてなどがあります。
時間はかかりますが、出産にまつわる選択肢を広く情報収集した上で、家族とも話し合いながら、自分自身がどんな出産を望むのかを考えていってほしいと思います。」
バースプランからバースウィッシュへ
最後に、これからバースプランを立てる人へのメッセージを伺いました。
「誰にも遠慮せずに、「こんなこと書いたらだめかな」などと思わずに、自分らしさ万歳で書いてください。もしも誰かにネガティブなコメントをもらっても、落ち込まずに、その他の方法や受け入れてくれる人探しにトライしてみてください。そのプランに寄り添ってくれる人が必ずいるはずですから!迷ったら、助産師さんやドゥーラに相談しながらプランを立てるのもオススメです。
実は、「理想のバースプラン」と聞かれたときに、私自身少し抵抗がありました。バースプランは理想的でなければいけない、と思ってほしくありません。プランというと「その通りにするべき」という印象を持つこともあるので、私の周りでは「birth wishes」「birth preference」という言葉をよく使っています」(伊東さん)
有山さんも「バース・ウイッシュ」という考え方に触れてくださっていました。
「どんなプランならば納得がいくかは、ご自身のその時々のコンディションにも左右されます。おなかのサイズと同様、ご自身の希望も変化していくことを恐れないでくださいね。いいんです、それで。
出産は、新しい家族との出会いであり、人生の中で大切な時間です。まずは選択肢を、あらゆるカードを、集めて、切って、並べて、捨てて、と目の前に広がるあなたの「バース・ウィッシュ」を言葉にしていきましょう。ドゥーラとして、そのお手伝いをさせていただけたら嬉しいです。」(有山さん)
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