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JOURNAL

「子どもの自立」が子育ての最終ゴール。祖父母に伝えたい、見守ることの大切さ

2021.06.18

子育て世代と祖父母世代がそれぞれの立場や今と昔の違いを理解して、生まれた命を楽しく育む「子育て、孫育て」を広めているNPO法人孫育て・ニッポンの棒田明子さん。世代間ギャップによるトラブルに悩む人が多かった以前と比べて、コロナ禍ではその関係性が変化していると話します。この変化について、また棒田さんが考える子育てで大切にしたいことについて詳しくお聞きしました。

祖父母の過干渉が、親になる過程を奪うことも

高梨:2011年にNPO法人孫育て・ニッポンを設立されてから10年経ちます。最初に「孫育て」の活動を始めてからは20年近くになりますが、その間、子育て世代と祖父母の関係性で変化したと感じることはありますか?

棒田さん(以下敬称略):世代間ギャップは今もありますが、新型コロナウイルスが感染拡大してから、新たな変化を感じます。コロナ禍でなかなか会えなくなったのをきっかけに、必然的に関係性の距離が取られるケースが増えているようです。私としては、それは良いことかもしれないと思っています。

日本には里帰り出産という文化があり、夫は産後の妻のサポートや赤ちゃんのお世話を祖父母に任せていました。子育て世代、祖父母世代ともにそれがあたりまえと思い、中には頼りすぎ、頼られすぎ、というご家庭もありました。しかし、コロナの感染拡大、そして、男性育休の取得推進が進み、祖父母が一歩引くという距離が自然にとれるようになってきたと感じます。

祖父母のサポートは、とても心強いのですが、祖父母が手を出しすぎてしまうと、子育て世代が親になっていく過程を奪ってしまうこともあるのです。祖父母世代に忘れないでほしいのは、子どもたちを生活的にも経済的にも自立させることが、祖父母自身の子育ての最終ゴールだということです。「孫育て」講座ではそういったことについてもお話しています。

高梨:祖父母にとっては、孫を育てることも大切だけれど、自分の子どもが親になっていくところを見守るのも大切ということですか?

棒田:そうです。祖父母は子どもを愛するあまり、すべて手伝ってあげたくなるんですよね。

娘に「夜中の授乳は私が代わってあげるから、ミルクを飲めるようにしたほうがいいわね」と話しているという祖父母の声を聞くこともあります。たしかに、夜中に起きて赤ちゃんに授乳することは、ママにとって体力的な負担が大きいもの。ですが、それも含めて、赤ちゃんを育てる大切な時間です。ママの考えを聞かずに、自分の考えを押しつけるのはよくないですね。

高梨:私がもし祖父母の立場だったら、「寝不足でかわいそうだから」と、つい手を出してしまいそうです。第三者から冷静な意見をもらえる環境にいないと、判断が難しいかもしれないですね。ミルクをあげることで、母乳をつくる身体のサイクルが崩れることもありそうです。

棒田:昔は、ママがおっぱいをあげ、水分補給の白湯を祖父母があげていたご家庭も多かったようです。今は白湯を与えないので、祖父母が赤ちゃんに直接関わる機会が減り、それならばミルクをあげよう、ということになっているのかもしれません。

育児の主役はパパとママ。必然的にその時代がやってくる

棒田:授乳にまつわる知識は、男性にも知ってほしいと思っています。この数年で、世の中の子育てが大きく変わると思っています。産後、夫が妻と赤ちゃんのとなりにいる時代がやってきます。祖父母は今よりもう一歩引いた立場で、子育て世代を見守ってほしいと思います。

高梨:祖父母は、今までの里帰り出産とは違う関わり方をつくったほうがいいのですね。

棒田:夫である父親が主体となり、祖父母は一歩下がる。そして、パパママたちも、祖父母ありきでなく、まずは夫婦メインでの子育てを軸として、足りないところを祖父母や行政などのサポートに頼る形に変えていく必要があると思います。


出典:NPO法人 孫育て・ニッポン

上記は、「祖父母とのお付き合い10か条」でパパママが祖父母と関わるときの心得をまとめたものです。祖父母たちだけでなく、パパママも祖父母たちの状況を理解する、頼りすぎないことも大切です。そう考えると、今回の新型コロナウイルスは新たな産後のあり方を考える機会になったかもしれませんね。

高梨:コロナをきっかけに、パパの当事者意識が強くなり、祖父母は「違った形でサポートするにはどうすればいいか」と考えるようになりはじめているんですね。

棒田:「孫育て」講座でいつも伝えている、孫育て10か条の最初に出てくる「育児の主役はパパ・ママ、祖父母はサポーター」とも重なります。とても大事なことだと思っています。

高齢出産、定年退職年齢の引き上げに加え、4世代家庭も増えているので、祖父母世代は親の介護をしている場合も少なくありません。これから先、孫に関わることが難しいご家庭も増えていくでしょう。

高梨:そうなると、血縁関係者だけでないサポートも大切になりますね。

地域の人たちで育児を支える仕組みを広げたい

高梨:これまでの日本は、子育ては家庭の中でやりくりをすることが普通でした。とくに、祖父母のサポートに頼っていた部分が大きいように思いますが、この先、誰がどう関わると良いのでしょうか。

棒田:地域の人の存在が大切だと思います。
祖父母と同居や近居している人は、祖父母のサポートを得られますが、そうではない人も多いです。祖父母のサポートが得られない人は、地域の人がサポートすればいいですよね。自分の孫だけでなく、地域の子ども(他孫(たまご))のサポートに目を向けて欲しい。

また、経済的に困窮している家庭など、本当に困っている人たちにこそ社会的資源がいきわたるような仕組みをつくる必要があると思っています。

たとえば、私は産前産後ヘルパーとして育児中のご家庭にうかがったり、地域コミュニティをもっているので、必要に応じてサポートに入るときもあります。孫とは遠距離でなかなか会えないという方や孫がいない方は、地域の子どもたちを他孫として、「祖父母」のように関わっていただけたらと思うのです。肉親とは遠慮なくものを言い合いトラブルになることも多いですが、他人だとお互い理性が働くのか、パパママ世代も祖父母世代も客観的かつ冷静に話しができているように思います。

高梨:地域の人たちに頼れるようになれば、視野が広がって選択肢が増えるかもしれないですね。

棒田:地域コミュニティでは、妊娠中のご夫婦に、生後2~4カ月くらいの赤ちゃんと出会う場「ぼぼカフェ」を定期的に開いています。この場をサポートしてくれるのは、育児経験豊富な地域のママ・パパたちです。妊婦さんの質問に先輩ママが答えたり、情報を交換したり、先輩ママの育児グッズを試したり、ベビー服のリサイクルやフリマなども開催し、気軽に参加できる場になるように工夫しています。

コロナが流行し、妊婦さんや産後のご家庭が行政の情報を入手しにくいという声が多くあり、妊娠・出産・産後の情報を集約し、LINEで配信する情報サイト「ここみて港北」を昨年5月に立ち上げ、運営しています。行政の支援情報、両親教室や赤ちゃんと一緒に出かけられる場所や講座など、官民問わず役に立つ情報、使える情報の配信と、オンラインを活用した両親教室やおしゃべり広場、お散歩会なども開催しています。

オンライン両親教室やおしゃべりでは、ご近所さん同士をつなげて、お互いに助け合えるネットワークをつくっています。そこに、祖父母世代や子育てが一段落した世代も加わり、少しずつですが、地域で他孫(たまご)ができています。

こんなふうに、できる人ができるサポートをする、そんな仕組みを育てていきたいです。

次回の公開は6/22(水)の予定です。日本の孫育ては、祖父母の過干渉が課題の一つとなっていますが、海外ではどうなのでしょうか? また棒田さんが普段どんな思いで活動を広げているのか、詳しくお聞きします。

プロフィール:

棒田明子
NPO法人孫育て・ニッポン理事長。NPO法人ファザーリング・ジャパン理事。(社)産前産後ケア推進協会監事。妊娠、出産、産後、子育てに関連した情報を発信する情報サイト「ここみて港北」発起人。産前産後ヘルパー。
育児雑誌の編集者、育児サイトの編集長などを経て、2011年にNPO法人孫育て・ニッポンを設立。祖父母と子育て世帯に向けて、世代間ギャップを解消するために大切にしたいことなどを伝える。孫育てを起点に、シニア世代が地域の子どもたちを育てる「他孫(たまご)」や、子育て世帯の子育てを楽しくするためのコミュニティづくりも積極的に広げている。孫1人。。

NPO法人孫育て・ニッポン https://www.magosodate-nippon.org/
「ここみて港北」https://www.kokomite-kohoku.jp/
ぼうだあきこオフィシャルサイト https://aru-bouda.jimdosite.com/

インタビュアー
高梨真紀
ライター。業界紙記者、海外ガイドブック編集者、美容誌編集者を経てフリーランスに。子育て中の女性や働く女性を中心に取材を重ねる。現在は食、散歩、社会的な活動など幅広く活動。ライフワークとして、女性と子どもなどをテーマにした取材も続ける。2人の娘の母。

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