場所見知りする子どもとのおでかけ:理学療法士が伝える!楽しくすくすく育つコツVol.60

みなさんは、毎日の子育てを楽しんでいますか。喜びを感じるひとときもあれば、ふと「こんな時、どうしたらいいの?」「これって、このやり方でいいの?」と、迷いが出てくることもあるのではないでしょうか。運動発達の専門家である理学療法士・得原藍さんによる、楽しみながら子どもの育ちをうながす親子の関わり方のコツを教わる連載です。

知らない子がいる場所が苦手です

得原さん、こんにちは。3歳の子どもを育てています。
家では元気いっぱいでよく遊ぶのですが、児童館などに連れていくと、私のそばからなかなか離れません。ほかの子が楽しそうに遊んでいても輪に入ろうとせず、30分くらいすると「もう帰る」と言い出してしまいます。せっかく来たのだからもう少し遊んでほしい、ほかの子とも関わってほしいと思うのですが、無理にいさせるのも違う気がして、いつも早々に帰っています。
これはいわゆる「場所見知り」なのでしょうか。こういうときは本人が帰りたがったら帰っていいのか、少しずつ慣れるよう促したほうがいいのか、親としてどう関わればよいでしょうか。

子どもには「安心できる場所」と「そうでない場所」を区別する力が必要

こんにちは。ご質問ありがとうございます。3歳のお子さんとのお出かけ、児童館や公園などいろいろな場所がありますね。知らない子がたくさんいる場所で、気持ちがドキドキしてしまうことは誰にでもあること。関わってほしいという気持ちと、無理をさせる必要もないのではないかという気持ちのせめぎあいは、同じくらいのお子さんをお持ちの親御さんみなさんが感じるところなのではないでしょうか。今日は3歳前後のお子さんの心理的な発達について紐解きながら、対応のしかたを一緒に考えていきましょう。

愛着形成、という言葉をご存知ですか。乳児期から幼児期初期にかけて、子どもと身近な養育者の間で育まれる信頼関係のことを指します。お母さんのお腹から出てきた子どもたちは、この世界に何らかの拠り所を探しているのですね。そこで、主たる養育者である両親や、周囲の大人が、子どもたちとの関わりを通して世界の入口になっていく、というイメージを持っていただけるとよいでしょう。日々を共に生活し、身近な存在であることで、子どもたちは養育者に信頼を寄せていきます。そしてその信頼関係を土台にして、少しずつ世界を広げていくのです。

家庭の中で養育者との関係を築いてからが、世界を少しずつ広げていく段階です。生後8ヶ月から10ヶ月ころに、いわゆる人見知りの時期がやってきますね。この時期は、脳の発達も進み、信頼関係を築いてきた養育者と、そうではない他者との区別がはっきりつくようになってくる頃です。運動機能の発達も、ずりばいやハイハイが出て「自分から外へ向かっていく」動きができるようになり、養育者と接触できる安心エリアから、自分で出ていくことができるようになります。関わる世界が急に広くなることで、知らない人や物事に出会う機会も増えますね。ですから、安全を守るための「警戒」も憶えていくわけです。

子どもたちにとっては、よく見知った大人が安心できる「場所」であるからこそ、よく知らない来訪者に対して警戒心が生まれます。人見知りは個人差も大きいですし、日頃からたくさんの人に出会う機会がある場合のほうが、人見知りが出づらいと言われることもありますが、大切なのは「安心な場所」と「知らない場所」を区別できるようになった、ということなのです。

児童館や公園で楽しく過ごすための工夫

さて、3歳の子が児童館や公園ですぐに帰りたくなってしまう気持ちについて、もう一度考えてみましょう。3歳というと、歩行距離も伸び、日常生活の範囲がぐんと広がってくる頃です。走ったり、ジャンプしたりできるようにもなって、人との関わりも充実してきます。だいたい3歳ころから「お友達」という概念が作られはじめると言われていて、それまでは「周囲にいるたくさんの子ども」だった景色が、急に「関わり」とともに感じられるようになってきます。脳が周囲の子どもたちを「関わりが生まれるかもしれない人」として認知し始めたからこそ、人がたくさん集まる場所での緊張がうまれてくるのです。

では、そんな「すこしドキドキする場所」に慣れていくには、どのようなきっかけが必要でしょうか。まずは、前日や当日の朝に「明日は(今日は)〜に行くよ」と声をかけてみてください。そして、あそこに行ったらこんな遊びをしたいねー、と、親御さんご自身が楽しみにしている様子を見せてみましょう。そして、もし徒歩圏内にあるようならば、目的地まで一緒に歩いていってみましょう。自転車や車に乗せてささーっと到着してしまうよりも、自分でいつもの場所から歩いて向かうと、そのあいだに心の準備もできてくるものです。身体と心の地図が、一致してくるのですね。

もしかしたら、歩いている最中に、道端の草が気になって立ち止まるかもしれません。それはそれで良いのです。自分の足で、自分の安全地帯である自宅から離れていく経験には、周辺に慣れ親しむ時間も必要です。それに、それこそが自分で発見する遊びですから、児童館や公園の用意された遊びとは違う興味関心を育てることができるでしょう。

到着したら、まずは親御さん自身がリラックスしましょう。椅子やベンチ、児童館の床に座って、のんびり過ごしてください。お子さんも、その隣でまずはのんびり。自分から立って遊びに行くのを待ってみましょう。「行ってきたら」などは言わず、大人は大人でのんびり楽しそうに過ごします。お子さんがすこし離れようとしたら、追いかけずに見守ってください。「お母さんここにいるね、ちゃんと観てるよ」と声をかけてください。屋内なら数メートル、公園等なら10メートルくらい、遠くから見守れるポジションから見守りましょう。目の端でお子さんを捉えておくようにして、お子さんがぱっと振り向いたときに目を合わせてニッコリ微笑んであげてください。

出かけるとどうしても「遊んでおいで」「これで遊んだら?」など、一緒に玩具や遊具の周囲まで近づいて声をかけてしまいがちです。けれども、大切なのは、お子さん自身が自分の興味で、一歩、遊びに向かうこと。そのときに大切なのが、お母さん・お父さんが背中を見守ってくれている、という安心です。すこし遠くでニコニコ見守ってくれている親御さんがいるからこそ、踏み出せるのですね。自分で「行く」と決めることができたら、一旦、お子さんに任せてみる、ということです。

はじめは、動くことが難しいかもしれませんが、そこまで歩いて出かけたのなら往復の散歩だけでもとってもよい遊びです。そして、5分でもお母さんから離れることができたら、ひとりで遊びに行けるんだねえ、と、感心してあげてください。「自分で」離れる経験を、楽しんでもらいたいですね。

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ライター / 得原 藍

理学療法士。大学卒業後、会社員を経て理学療法士の資格を取得。病院勤務を経てバイオメカニクス(生体力学)の分野で修士号を取得。これまでの知識や経験を生かし、現在は運動指導者の育成、大学の非常勤講師などを務める。また、子育て支援団体との協働で運動発達に関する相談を受けたり、外あそび活動などを行っている。6歳男児の母。