長引く腰痛を和らげるコツは?:理学療法士が伝える!楽しくすくすく育つコツVol.46

みなさんは、毎日の子育てを楽しんでいますか。喜びを感じるひとときもあれば、ふと「こんな時、どうしたらいいの?」「これって、このやり方でいいの?」と、迷いが出てくることもあるのではないでしょうか。運動発達の専門家である理学療法士・得原藍さんによる、楽しみながら子どもの育ちをうながす親子の関わり方のコツを教わる連載です。

<目次>
1.治らない腰痛。おむつ替えや授乳が辛い
2.腰痛の原因は、お腹周りの筋肉の衰え
3.腹筋復活!寝たままできるエクササイズ
4.生活の中の動作をエクササイズに
5.腰の負担を減らす育児のコツ

治らない腰痛。おむつ替えや授乳が辛い

藍さん、こんにちは。
産後8ヶ月になる双子の母です。
出産後、慢性的な腰痛に悩まされています。整体やオイルマッサージ、鍼などに行ってなんとかしのいではいますが、少し楽になってはまたぶり返しており、根本的な解決にはなっていない感じです。
いまは、おむつ替えや授乳時に座るのがつらいです。
腰痛を軽減する方法や、腰痛になりにくくなる方法など、教えていただけるでしょうか。

腰痛の原因は、お腹周りの筋肉の衰え

こんにちは。ご質問ありがとうございます。双子のお子さんを出産して8ヶ月とのこと、腰痛に悩んでいらっしゃるのですね。整体などのケアも受けられているとのこと、疲れが溜まったときにはそれも大事な対処法だと思います。今日は、産後の身体にどんな変化が起きているか、というお話とともに、いまできる対策について考えてみましょう。

まず、両手でご自身の肋骨を触ってみてください。それから、骨盤のあたりを触ってみましょう。肋骨と骨盤は、いわゆる「体幹」を硬い筒状に支える構造になっています。けれども、その肋骨と骨盤の間、お腹周りは、実は脊柱と呼ばれる背骨しか通っていません。一本の棒で、筒状の体幹を支えていることを想像すると、そもそも腰のあたりで大きな力のコントロールが必要になることがイメージできるのではないでしょうか。このお腹から腰にかけては、本来は背骨とともに筋の活動によって支えられているのですが、妊娠中に筋肉が内側から押し広げられるように伸びたことで、産後の身体はお腹周りの筋肉の活動が低下してしまいます。筋肉の活動が低下すると、立ったり座ったりの姿勢を取るだけでも腰の骨の周りに大きな負担がかかることになり、さらにお子さんを抱いたり世話をしている負担も重なって、ひいては腰痛に繋がります。ですから、産後の腰痛予防に大切なのはまず第一に、お腹の筋肉の活動を取り戻すこと。つぎに、お子さんの世話による腰の負担を減らすこと。この二点を心がけると、徐々に痛みが楽になると思います。

腹筋復活!寝たままできるエクササイズ

まず、お腹の筋肉の活動を取り戻す方法について考えてみましょう。お腹の筋肉と言うと、いわゆるシックスパックと呼ばれるような、お腹の前面に縦方向に伸びている腹直筋を想像すると思いますが、実は、その腹直筋と背骨のあいだにも、筒状の壁になるように筋肉が重なっています。そして、身体を支えるためには、この腹部の側面を支える筋群が、とても大事な役割を果たします。今回はふたつ、この筋群の働きを取り戻すためのエクササイズを紹介しようと思います。

まずひとつめは、仰向けに寝て、軽く膝を立てた状態で、しっかりと肋骨を動かしながら行う呼吸です。仰向けの状態で、手を胸の下あたりの肋骨に当てながら呼吸を観察したとき、呼吸とともに肋骨は大きく動いているでしょうか。もしも、呼吸で動くのがお腹だけで、肋骨が動いていない場合には、吸うときに肋骨が広がるように、吐くときに肋骨が小さく収まっていくように、深呼吸をしてみましょう。(吐く運動は、できるだけゆっくり、細く長く口をすぼめて吐くようにしてください。)
わたしたちは産前、肋骨と腹部が連動して動く呼吸をしていました。それが、お腹で子どもを成長させていくに従って、うまく機能しなくなっていきます。ですから産後は、もう一度もとの呼吸の動きに戻すための練習が必要なのです。この練習をすると、徐々に腹部の筋肉の活動が回復して、腰への負担が減っていくと思います。地味なエクササイズですが、寝起きや昼間休める時間に続けてみてください。

生活の中での動作をエクササイズに

ふたつめは、無理なくお腹周りの筋肉を回復させていくエクササイズです。こちらは簡単。床を雑巾掛けしましょう。片手で雑巾を押さえ、できるだけ大きな動きで円を描くように腕を動かします。そのとき、手を身体から離すときには背中が少し伸びるように、手を近づけるときには、背中が少し丸くなるように、手と体幹を連動させます。しばらくしたら、雑巾を反対の手に持ち替えましょう。そうすることで、普段の抱っこや授乳で使いがちな利き手だけでなく、反対側の筋肉も使うことができ、左右のバランスよく身体を使うことができます。
この運動のポイントは、手と足の3点で身体を支えながら、片手を大きく動かすこと。体幹は手足を繋ぐ橋のようなものなので、四這いの姿勢からの運動で活動します。いまはモップ型の掃除用具が多いですが、ぜひ取り入れてみてください。

腰の負担を減らす育児のコツ

次に、お子さんの世話による腰の負担を減らすことを考えてみましょう。

質問者さんのお子さんの月齢は8ヶ月とのこと。移動動作が少しずつ出はじめて、身体もずっしり重くなってくる頃ですね。床に屈んでのお世話や、床からの抱き上げ、体重を全部支えるような授乳姿勢はかなり辛くなってくると思います。床でのお世話の際には、両膝を床につくのではなく、片足だけ前に立てて、動作をしてみましょう。そうすると、前方に移動する体重を前に出した足が支えてくれるので、正座のような状態でお世話をするよりも腰はずっと楽になるはずです。もし、ベビーベッドなど高さのある台の上でおむつ替えをしているときには、自分の腰をかがめなくていい高さを探してみてください。たとえば、自分が両膝を床について立て膝の姿勢になると、かがまなくて良いので楽になるでしょう。

授乳の際は、ソファや床などに座って授乳する方が多いと思うのですが、8ヶ月のお子さんでしたら膝に座ってもらって正面に相対する形で授乳しても良いでしょう。そのとき、お母さんは姿勢良く座りましょう。中途半端に屈んだ姿勢が一番腰が辛くなるので、自分が赤ちゃんに近づくのではなく、赤ちゃんのほうから自分に近づいてもらうような授乳姿勢を探すのがコツです。

いかがでしたでしょうか。呼吸、雑巾がけ、お世話の姿勢。どれも地味な方法ではありますが、産後の身体をいたわりながら無理なくできそうな方法を紹介しました。双子の出産は、母親側の身体の負担も大きく、二人同時の子育ても大変です。自分以外の人に頼る道も模索しながら、無理しすぎないよう、生活してくださいね。

infomation-


MotherRingサポーターとは
助産師・ドゥーラ・保育士・ベビーシッター・治療家・リラクゼーション施術者・運動指導者といった、産前産後の家庭へのケアサービスのプロフェッショナルを、MotherRingサポーターと呼んでいます。
様々なケアを提供されている方にMotherRingサポーターとしてご登録いただき、広報活動をお手伝いすることで、産前産後のご家庭が必要なケアを受けられる社会を目指しています。

MotherRingサポーターページへの掲載
MotherRingサポーターのみなさまのサービス内容や受付条件などを、MotherRingサポーターページに掲載いただくことが可能です。

motherringサポーターページの内容・ご利用方法(PDF)

「Webサイトがほしいけど、自分でつくるのは大変……」
「日々のサポートで手いっぱいで、広報活動まで手が回らない……」
といった方のお手伝いをします。
また、産前産後のご家庭にとっても、様々なMotherRingサポーターのみなさまの情報をまとめて見ることができるため、比較検討しやすくなっています。

ご登録までの流れ
①まずは、オンライン説明会にお申し込みください。
オンライン説明会お申し込みフォーム

②MotherRing事務局より、申込書等の必要書類をメールにて送付します。

ライター / 得原 藍

理学療法士。大学卒業後、会社員を経て理学療法士の資格を取得。病院勤務を経てバイオメカニクス(生体力学)の分野で修士号を取得。これまでの知識や経験を生かし、現在は運動指導者の育成、大学の非常勤講師などを務める。また、子育て支援団体との協働で運動発達に関する相談を受けたり、外あそび活動などを行っている。6歳男児の母。