トイレを怖がる子ども:理学療法士が伝える!楽しくすくすく育つコツVol.35

みなさんは、毎日の子育てを楽しんでいますか。喜びを感じるひとときもあれば、ふと「こんな時、どうしたらいいの?」「これって、このやり方でいいの?」と、迷いが出てくることもあるのではないでしょうか。運動発達の専門家である理学療法士・得原藍さんによる、楽しみながら子どもの育ちをうながす親子の関わり方のコツを教わる連載です。

目次
1.トイレに行くのを怖がる子ども、どうしたらいい?
2.焦らないでOK。身体の発達に合わせたトレーニングを
3.「トイレがこわい」の理由はさまざま。心の成長をゆったり見守って

トイレに行くのを怖がる子ども、どうしたらいい?

得原さんこんにちは。2歳の子どものことで相談させてください。

先日からトイレトレーニングを始めたのですが、トイレに連れて行こうとするたびに、怖がって大泣きしてしまいます。殺風景すぎて怖いのかな?と、壁に大好きなキャラクターのポスターを貼ったり、ペーパーホルダーもキャラクター付のものに変えてみたりと楽しい雰囲気を出してみたのですがあまり効果はなく、警戒が解けません。トイレトレーニング用のアニメや絵本は怖がることなく、普通に見ているのですが、自分が行くのはどうしても嫌なようです。何が怖いのかもいまひとつ言語化するのが難しいようで、どうやってトイレトレーニングを進めていったらいいのか、途方に暮れています。アドバイスをいただけると嬉しいです。

焦らないでOK。身体の発達に合わせたトレーニングを

こんにちは!ご質問ありがとうございます。トイレトレーニングをはじめたのですね。いろいろ工夫して、トイレを楽しい空間にしようとしていらして、すばらしいです。まず安心していただきたいのは、健康上問題のない子どもたちはいずれトイレを使えるようになります。その早さには個人差があって、時間がかかる理由もいろいろあるのですが、少なくとも「できる」方向に進んでいっている、と思ってください。なので、いちばん大切なのは焦らないこと、とも言えるかもしれません。それを踏まえて、今日は、まずは身体の準備、それから心の準備についてお話したいと思います。

まずは、身体について。これはとても大切なことなので覚えておいていただきたいのですが、3−4歳になるまで、子どもの排尿の仕組みは大人と違います。大人の排尿は、膀胱に尿が溜まってきたことを脳が感知し、トイレに移動して、排尿の準備ができると尿を膀胱に留めるための筋肉がゆるむことで、排尿に至ります。それに対して、3−4歳以前の子どもたちは、膀胱がいっぱいになると反射で尿が出てくる仕組みで排尿しているんですね。膀胱の尿量を感知するための仕組みが完成していないのです。別の言い方をすれば、膀胱に尿をためておくための身体の仕組みがしっかり成熟するまでは、トイレトレーニングは焦らないほうがいい、ということです。この、身体の仕組みの成熟は、外から早めることはできません。また、外からその成長を物理的に確認することもできません。さらに、トイレでの排尿を成功させるために無理に我慢させると、上手に筋肉をゆるめることが難しくなってしまうこともあります。そのことが、少し大きくなったあとでのおねしょなどに繋がることもあると言われているので、まずは身体の成長を待つ、というのが「急がば回れ」だと知っていてください。

そろそろ身体の準備ができるようになってきたかな?ということを間接的に確認するには「おしっこにいきたくなったら伝える」ということから練習していくといいと思います。膀胱に尿が溜まったことを、脳が感知できるようになってきたかを確認するということですね。そのためには、まずはお母さん・お父さんが、日常の会話の中で「あれ?そろそろトイレにいきたい気がする」と口にしてみるなど、「尿が溜まった感覚があるよ」ということを示してあげるといいでしょう。そして、自分で「溜まった感覚」を伝えることができたら、褒めてあげてください。その時点では、まだ、トイレまで我慢することはできないかもしれませんが、そこではじめて、トイレに行く身体の準備ができたと思ってくださいね。

「トイレがこわい」の理由はさまざま。心の成長をゆったり見守って

身体の準備ができたら、つぎは心の準備ですね。トイレを怖くない場所にする工夫はすでにいろいろ取り組んでいらっしゃると思います。その方向性も、間違っていないので安心してくださいね。そのうえで「まだ警戒心が解けない」ということなので、ぜひ試してみてもらいたいことがあります。それは、お母さん、お父さんがお手洗いに行くときに、お互いに許容できる範囲内でその時間を共有してみてください。たとえば、お母さんがトイレに行きたいことを伝えて、一緒について来てくれる?と声をかけ、扉の前で待っていてもらって、できれば数回、扉を開けて用を足す様子を「フリ」でいいので見せてあげてほしいのです。トイレはどうしても、誰かが用を足す様子を「見たことがない」状態になりがちです。ですから、大人もこの中でこんなふうにトイレを使っているし、それは怖くないことなんだよということを感じることができるように工夫できるといいですね。

これまで、トイレを使えない、トイレに恐怖感がある、というお子さんの相談を何度も受けてきましたが、理由は様々でした。たとえば、保育園のトイレに扉がないからできない、という子もいましたし、逆に扉があるからできない、という子もいました。また、排尿はできても排便はできない、など、座ってゆっくり過ごすことが難しい子もいましたし、大人が見ているとできない子もいました。もちろん、ひとりではしたくない、という場合もあります。自宅ではできるけれども、外出先ではできない、などの例も多くあります。けれど、いずれにしても、しっかりと言葉で自分の気持が伝えられるようになってくるにつれて、つまり状況の理解と表出ができるところまで心と言語が発達してくるにつれて、解決していくことが多いです。

お子さんのトイレについて困ったときは、まずは身体の準備のことを思い出し、そのあと、心の準備は急がせずにゆっくり一緒に体験しながら待ってあげることを大事にしてほしいと思います。もし、幼稚園の入園の際にトイレのことが問題になるなどありましたら、率直に園の先生にお伝えして相談することもおすすめします。そして、お母さんと一緒に園のトイレに行ってみる機会を持たせてもらってその時の様子を見たり、子どもの話を聞いてみるなど、お子さんの不安の在りどころを探していけるといいですね。

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ライター / 得原 藍

理学療法士。大学卒業後、会社員を経て理学療法士の資格を取得。病院勤務を経てバイオメカニクス(生体力学)の分野で修士号を取得。これまでの知識や経験を生かし、現在は運動指導者の育成、大学の非常勤講師などを務める。また、子育て支援団体との協働で運動発達に関する相談を受けたり、外あそび活動などを行っている。6歳男児の母。