妊娠出産に関する希望や助産師さんにお願いしたいことを書く「バースプラン」。出産にまつわる妊婦さんの希望をスタッフと共有する目的から、多くの産院で取り入れられています。また、書いていくうちに、思いの整理ができたり、自分の価値観に気づいたりする良さもあります。
そんなバースプランを、日々妊婦さんと向き合うMotherRingサポーターはどんなふうに捉えているのでしょうか。MotherRingサポーターによる「私の理想のバースプラン」、第二弾をお届けします。
MRサポーター西村奈々さんの「私の理想のバースプラン」
ハワイ在住のMRサポーター西村奈々さんは、少人数の家庭保育園を運営しながら出産ドゥーラとして活動しています。ご自身の出産体験から、自分の身体と直感を信じて行うポジティブな出産が、生きる自信につながることを実感した西村さん。そんなポジティブな出産をサポートしたい、との思いからドゥーラを志したのだそうです。詳しくは、西村さんのMRサポーターページをぜひご覧ください。
自分と赤ちゃんが主体となった出産体験が、その後の育児へとよい繋がり方をした、と西村さん
五感や直感を重視する、西村さんのバースプラン
陣痛中の過ごし方は?
「音のない静寂か、自然音のみの音源を流してリラックスして過ごしたいです。うっすらした暗闇でキャンドルの灯火の中で、寄せてくる陣痛の波を乗り越えていきたい。その時に湧いてくる直感にしたがって、自分の身を置きたい場所と体勢をとります。ドゥーラに背中や腰をマッサージやツボ押しも頼みたいです。」
分娩時に望む対応は?
「助産師さんには、会陰(えいん)の保護をお願いしたいです。また、ドゥーラに立ち会ってもらって、適度に励ましてもらえると嬉しいですね。動画や写真撮影もしてほしいです。」
分娩後の過ごし方は?
「生まれてきた胎児を最初にキャッチするのはぜひ自分で、と思っています。へその緒はすぐには切らず、すぐにお腹の上に乗せて抱っこして、自力で乳首までたどりつく過程を見たいですね。胎盤は医師や助産師が軽く引っ張って出すことが多いのですが、私は自然に任せて出したいです。また、お産の後はしばらく興奮状態が続くと思いますが、そのまま赤ちゃんとベッドで眠れる環境を望みます。」
MRサポーターホロウェイ朋子さんの「私の理想のバースプラン」
イギリス在住のMRサポーターホロウェイ朋子さんは、出産準備個別プログラムやバースプラン、産後(アフターバース)プランの作成サービスを提供しています。慣れない海外生活で3度の出産を経験したホロウェイさんは、出産が自分のアイデンティティを取り戻すかけがえのない経験になったといいます。医療の力を使って「産ませてもらうもの」というイメージをもつ人も多い中、自分で選択する主体的なお産を重視しています。詳しくは、ホロウェイさんのMRサポーターページをぜひご覧ください。
3度にわたるイギリスでの出産体験をきっかけに、出産ドゥーラを志したホロウェイさん
ホロウェイさんのバースプランは、家族やケアギバーとのコミュニケーション重視
陣痛中の過ごし方は?
「できる限りの時間を家族に囲まれてすごし、自分が安心し、リラックスできる環境の中で、自分の身体が望むように動きます。」
分娩時に望む対応は?
「自分の身体が赤ちゃんを押し出そうとする感覚に任せて、※ケアギバーには自分と赤ちゃんの力を信じ、そばでそっと、でもしっかりと見守っていただけると安心します」
※ケアギバーとは…身の回りを世話したり生活を手助けしたりする人のこと
分娩後の過ごし方は?
「生まれたての赤ちゃんと肌と肌でたっぷりと触れ合うことを一番大切にし、家族と共に、その時だけしかない濃厚な時間を過ごしたいです。
とはいえ、お産はその時が来るまでどうなるかわかりません。一番の理想の形と異なった場合を想定し、その中での理想を書いておきます。
たとえば私の場合、もし陣痛の誘発をすることになったらパートナーにずっとそばにいてもらいたいし、できる範囲で自分の身体が望む姿勢をとったり、できる限り自分が安心できる環境をつくりたいです。帝王切開になった場合は、生まれてくる赤ちゃんの様子をケアギバーに説明してもらったり、生まれてすぐに赤ちゃんの肌と触れ合うことを大切にしたい。そんなふうに、自分が大切にしたいことを明確にしておきたいです。」
MRサポーター木村章鼓さんの「私の理想のバースプラン」
フランス在住のMRサポーター木村章鼓(きむらあきこ)さんは、世界中を旅してさまざまな文化に触れる中で、妊娠・出産・子育て期から更年期、老年期までに及ぶ女性の一生について考え続けてきたと言います。その中で出会ったのが出産ドゥーラの存在です。現在は、オンラインによる相談を中心に、妊婦さんのサポートを行っています。詳しくは、木村さんのMRサポーターページをぜひご覧ください。
初めての出産・産後を迎える女性の不安に寄り添う木村さん(写真右)
木村さんのバースプランは、「生まれてくる赤ちゃんと繋がり直すようなお産」
陣痛中の過ごし方は?
「いつもの日常的な過ごし方を心がけること。例えば、好きな音楽をかけたり、歌ったり、好きな香りを取り入れるなどして、自分の五感や内なる感覚と向き合えるような空間づくりをします。その空間の中で、妊娠中から練習してきたストレッチで身体をゆるませたり、呼吸法や瞑想をしていきます」
分娩時に望む対応は?
「自由に振る舞えるのが理想です。アクティブバースというフリースタイル出産を参考に、自分の直感を頼れるように、周囲がチームとして結束していることが理想です。母子の経過が順調ならば、一律の医療介入がより少ない分娩を望みます」
分娩後の過ごし方は?
「母乳育児が波に乗るように見守ってもらいたいです。サポーターがまわりにいて、その上で母子が一体となって過ごせる時間や空間を確保します。出産のお祝いメッセージがたくさん届くとは思いますが、母体の回復のために携帯電話はしばらくお休みにします。赤ちゃんが眠っているうちにいろいろ用事を済ませたくなりますが、赤ちゃんが眠ったら、たとえ短い時間であっても一緒に眠れるのが理想です」
バースプランは要望書ではなくコミュニケーションツール
最後に、これからバースプランを立てる人へのメッセージを伺いました。
「自分がどうしたいのかを常に想像力を働かせ、何を大切にしたいのか、ここだけは外せない部分などをひとつひとつ問いかけてほしいと思います。自宅出産の予定が病院搬送になったり、自然分娩の予定が帝王切開になったりすることもあります。元々の希望と異なった場合のバージョンもつくっておくと心強いです。また、プラン通りに行けば丸、行かないとバツという風に思う必要はありません。自分のお産のジャーニーを自分で考えるということを大事にしてほしいと思います。」(西村さん)
「バースプランをつくったら、パートナーや家族、ケアギバーと、お産でどんなことを大切にしたいのかを話し合い、関係を深めていってほしいと思います。バースプランは、理想を一方的に伝える要望書ではありません。バースプランの作成を通して、お産について学び、つくったプランを通して周囲とコミュニケーションを深めていくための絶好のツールです。正解のないお産において、自分がどうしたいのか、何を大切にしたいのか、ぜひじっくりと時間をかけて自分と向き合い、自分だけのバースプランをつくってくださいね。」(ホロウェイさん)
「まず、自分の選ぼうとしているお産の場所に、経験のある助産師がいるかどうかを積極的に調べてみてください。また、サポーターになってくれる人たちとのコミュニケーションをできるだけ密にし、可能な限り情報を共有しておくことが大切です。バースプランについても、希望する理由やこまかい想いの部分まで、しっかり伝えておきましょう。
誰と産むか、どこで産むかを決めるのはあなたです。ご自身の選択肢を知って、一番ふさわしい、最善の方法を選んでいきましょう。」(木村さん)
◎infomation
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助産師・ドゥーラ・保育士・ベビーシッター・治療家・リラクゼーション施術者・運動指導者といった、産前産後の家庭へのケアサービスのプロフェッショナルを、MotherRingサポーターと呼んでいます。
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