今回、マザーリングジャーナルにご登場いただくのは、日本マタニティセラピスト協会代表の横田真由美さんです。横田さんは、生まれてくる子どもがお腹にいる産前、そして出産という大仕事を終えた産後の身体をケアする現役マタニティセラピストであり、そのマタニティ期のケアをもっと世の中に広めたいと、セラピストを育成する協会を立ち上げ、講師も務めています。これまでたくさんの女性をケアしてきた中で、妊婦さんはもちろん、女性の心や身体の健康のために伝えたいことなども含め、様々なお話をご紹介します。
ママも赤ちゃんもハッピーになれる身体のケアを目指して
八田: まずは、日本マタニティセラピスト協会について、どういう活動をしているのかを教えてください。
横田さん: 産前産後のママの身体をケアする「マタニティセラピスト」とベビーマッサージを教える講師「ベビーマッサージセラピスト」の育成をしています。
八田:マタニティセラピストは主にどんなケアをするのでしょうか?
横田さん: アロマオイルを用いたボディマッサージによって、血行を改善したり、リンパの滞りを流したりして、むくみや冷え、妊産婦さん特有の腰痛や肩こり、疲労感などを解決に導きます。
八田: ベビーマッサージの方は、赤ちゃんへのマッサージのやり方を教える先生を育成しているのですよね?
横田さん: はい。ベビーマッサージの教室を開くことができる、「ベビーマッサージセラピスト」の資格が得られます。ママが産後、自分の赤ちゃんとどう触れ合えばいいのか、子育ての第一歩ともいえるベビーマッサージのやり方を教える先生を育成しています。今の世の中、ママが1人で育児を抱え孤独になりがちです。ご両親の協力や、赤ちゃんのケアをてつだってくれる人が周りにいない環境でも、ベビーマッサージを学んでおくと、安心して育児をスタートできるとのお声は多いです。
八田: 自分の身体をケアしてくれて、それと同時に赤ちゃんのケア法も教えてくれるセラピストが身近にいるのは、心強いですね! 横田さんは現役のマタニティセラピストとして、産院で妊産婦さんのケアをされているわけですが、最初からこのお仕事を目指していたのでしょうか?
横田さん: 私はアロマセラピストの資格を取得して、フェイシャルエステや、アロマオイルを使用したボティのマッサージを行うセラピストでした。さらに経験を積んでネイルなども含めたサロン経営をしていたのですが、自分が結婚し、妊娠して子育てをするという事を考えたときに、サロン経営&セラピストの仕事は、私には両立することが難しいと感じたのです。そこでやむなくサロンは閉めることにしました。その後、自分が妊娠し、出産した産院で、本当に偶然なのですが、産後トリートメントができるアロマセラピストを探していたのです。
病院内でのボディトリートメントでママの心と身体をリセット
八田: 産後トリートメント? エステ的なマッサージが病院内で受けられるのですか? 私も2人子どもを産んでいますが、出産後にそんなマッサージサービスは聞いたことがありませんでした。
横田さん: 大阪など関西圏では出産と産後トリートメントがセットになっている産院が多いです。東京在住の方が大阪に里帰り出産の際、そのサービスに感動したと聞いて、東京では一般的ではないことを知ったくらいなのです。フェイシャルだけだったり、ボディトリートメントと両方受けられる産院もあったり、フットマッサージのみだったりとサービスの内容はそれぞれですが、妊婦さんはそれも産院選びの要素のひとつにしていると思います。総合病院などサービスがない病院もありますが、私の知る限りほとんどの産院では、産後トリートメントがもれなくついています。関西人はそういうサービスに惹かれやすいからなのかも(笑)。
八田: 関西の方に限らず、惹かれる人はとても多いと思います(笑)! 仮に私がそういった病院で出産したとしたら、どんな施術がうけられるのでしょうか?
横田さん: フェイシャルのマッサージとお顔の保湿パック、そしてボディのアロマトリートメントマッサージです。
八田: いいですね(笑)。 出産後はカラダのあちこち、背中や腰が痛かったりしますし、何よりも癒してもらいたい!って気分になりますよね。
横田: 本当にそうですよね。そういう時、つまりカラダが疲れて癒してほしいとか、どこかが痛い、つらいという信号は我慢せず受け止めてあげてください。そこで身体の不調を解決してあげる習慣を付けるのは大事です。皆さん意外に自分の身体を過信しがちですし、真面目なかたも多いので、つい我慢してしまったり頑張りすぎかな、と。そのときは乗り越えられる程度の辛さかもしれないけれど、子育てはずっと続きますから。その後もっと大きな問題が身体に起きたときに対処できなくて、取り返しのつかないダメージを受けてしまう方をたくさん見てきました。頑張るのはいいけれど、身体の声を聞いてあげる習慣をぜひつけてほしいです!
一筋縄ではいかない妊産婦さんの身体のケア
八田: 出産した産院でアロマセラピストとしての仕事を始めたのはいつ頃でしょうか?
横田さん: 2009年からです。フリーのセラピストとして産院に出向き、出産して3、4日後のママさんに向けて産後トリートメントを行っていました。例えばその産院で月に20件の出産があれば、月8回ほど産院に通い、月に5件なら、月に2回通うイメージでしょうか。予定を合わせる都合上、厳密に月に何日とは決められないのですが、産後の私には働きやすいペースでした。また、これまでセラピストの仕事はしていたとはいえ、妊産婦さんへのケアは初めてでしたから、とても気を使います。病院内で施術できるのは、いざという時の安心感がありました。
八田: そこからは順調に?
横田さん: とんでもない! 出産した産院でお声をかけてもらったまでは本当にありがたかったのですが、イザ始まってからが大変で、毎日壁にぶちあたっていました。フェイシャルの場合は今までの経験を生かせましたが、例えばむくみでお悩みの方には、普通ならリンパマッサージの方式で、滞りのある部分を流せば改善する事が多いのですが、妊産婦さんには歯が立たない。丁寧に時間をかけたとしても改善しにくいなど、目に見えた効果が出にくいのです。何よりデリケートな時期の身体に対して、どこまでやっていいのか、というのも悩みどころです。
当時は身近にマタニティのケアをされているセラピストもいなくて。私が学んだアロマセラピストの養成講座の教本にも残念ながら具体的なことはあまり記述されていなくて。妊産婦さんにアロママッサージはできますし、効果的であることは明白ですが、その先が…。
八田: 教本の内容が薄く、ほぼ役に立たなかった、と。
横田さん: はい。ただマタニティケアが遅れているのは日本だけなんです。海外、特に欧米は進んでいて、それこそ文献もたくさん。それを読んだり、中医学の鍼灸の先生にお話を伺ったり、アロマオイルを輸入する会社のセラピストの方にお話を伺ったり、できることは何でもしました。そうして苦労して調べたうえで、例えば同じお悩みの妊産婦さんに同様の施術をしても、人によって全く正反対の結果が出て、頭を抱えたことも。正直スタートして最初の2年くらいは試行錯誤の日々、一人一人違う妊婦さんの状態に合わせ、その都度人に聞いたり、文献を調べる、いや調べつくすという感じでした。
八田: 2年間ももがいていらしたとは。でも、その試行錯誤の経験が、現在の日本マタニティセラピスト協会の養成講座のカリキュラムや教本にも生かされているのでは?
横田さん: はい。愚直にやってきた分、実践的な内容になっていると思いますし、現在進行形で、ブラッシュアップもしています。そうやって経験を積んでたくさんの妊産婦さんのケアするうちに、遠方で私が行けない場所にも、このマタニティケアを広めたいと思い、協会の立ち上げを考え始めました。
※次回は、協会立ち上げの経緯と、横田さんが経験したセラピスト養成の難しさや素晴らしさなどをお聞きします。(次回は10月29日(金)公開予定です)
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