みなさんは、毎日の子育てを楽しんでいますか。喜びを感じるひとときもあれば、ふと「こんな時、どうしたらいいの?」「これって、このやり方でいいの?」と、迷いが出てくることもあるのではないでしょうか。運動発達の専門家である理学療法士・得原藍さんによる、楽しみながら子どもの育ちをうながす親子の関わり方のコツを教わる連載です。
-目次-
・夫が帰宅するときの物音で子どもが起きてしまう
・赤ちゃんの睡眠を整えるカギは「体のリズム」と「環境」
・自然な入眠を促す「メラトニン」分泌のしくみ
・「目が覚めても安心してまた眠れる」工夫を
夫が帰宅するときの物音で子どもが起きてしまう
藍さんこんにちは。
9ヶ月の息子の眠りが浅く、ちょっとしたことで起きてしまうので悩んでいます。特に、夫が毎晩22時すぎに帰宅するのですが、その音で必ず目覚めてしまい、そこから24時過ぎるまでなかなか寝付けない、ということが多く、困っています。できるだけ音を立てないようにしてもらってはいるのですが・・・
リビングに隣接した和室に寝かせており、なかなか静かな環境をつくってあげられないのも悩みです。狭小マンションでもできる赤ちゃんの眠りやすい環境づくりのヒントをいただけたら嬉しいです。
赤ちゃんの睡眠を整えるカギは「体のリズム」と「環境」
こんにちは!ご質問ありがとうございます。9ヶ月のお子さんを育てていらっしゃるのですね。新生児の頃に比べたら、少し長く眠れるようになってきた頃でしょうか。それでも、一旦眠ったら朝までぐっすり、というわけにはいかない悩ましい時期だと思います。個人差はありますが、お腹の中にいた赤ちゃんがお腹の外の昼夜のリズムに身体を適合させ、睡眠リズムが整ってくるのには1年はかかると言われています。あまり焦らず、少しずつの成長を見守っていきたいですね。
さて、それでもやっぱり、睡眠には工夫があります。いま、さまざまな睡眠トレーニングが流行していますが、その中には学習性無力感(訴えてもだめだから諦めて訴えなくなる、といった消極的態度の学習によって生まれる態度のこと)を引き起こすことをトレーニングと呼んでいる方法もあります。状況によってはそれが必要なときもありますが、まずはそれ以前の身体のリズムを整えていくことを考えていきたいところです。質問の中にある「環境」も大事ですね。ひとつずつ整理していきましょう。
自然な入眠を促す「メラトニン」分泌のしくみ
まずは、赤ちゃんの身体の生理的な機能の話です。わたしたち人間には、地球の昼夜と連動した概日リズムという時間間隔があると言われています。赤ちゃんの時期は、まだこの時間間隔が発達途上です。夜、眠くなるのには、夜になると分泌されるメラトニンというホルモンが必要なのですが、そのホルモンが生成されるようになるには生後3−4ヶ月かかると言われています。その後は、徐々に分泌が安定していきます。このメラトニンが生成されるようになってから、それがタイミングよく十分に分泌されるには、まずは「朝日を浴びてしっかり起きる」ことが大事だと考えられています。眠る準備なのに朝から!と驚かれるかもしれませんが、昼間をしっかり過ごすからこそ、夜に眠ることができるのですね。まずは、朝起きる時間を決めてみましょう。そして、朝起きたら、遮光カーテンを開けて光を浴びるようにします。しっかり目を覚ますためです。もし、寝室に遮光カーテンがないようなら、ぜひ導入してみてください。夏の日の出は早いので、空が明るくなる時間になると目が覚めてしまうというお母さんの相談もよく聞きます。しっかり暗い部屋は、小学生以降もずっと睡眠を助けてくれますので、検討の価値があると思います。
さて、そして、日中はしっかりと身体を動かすこと。動けば疲れてよく眠れる、というだけではなく、運動によって、メラトニンの生成が助けられることも科学的にわかっています。9ヶ月のお子さんは、もうはいはいやずり這いなどができるようになっているでしょうか。どこかに「移動したい」という赤ちゃんの意欲を刺激して、たくさん身体を動かしてもらう中で、動くことが好きになっていってくれるといいですね。動くとお腹が空く、お腹が空くとよく食べる、よく食べることで充足しよく眠ることができる。このルーティンをおぼえておくと、この先のお子さんの体力づくりにも繋がってきます。
つぎに、体温について。特に今の時期はまだ暑さが残っているので、赤ちゃんにとって暑すぎない環境をつくるのも大事な安眠の条件です。暑いと眠りが浅くなるので、もし眠っているときに額がしっとりしているようなら、もう一段階の薄着を検討してみてください。汗を顕著に書いていなくても、寝返りが多いようなら、暑いと感じているかもしれません。様子を確認してみてくださいね。
「目が覚めても安心してまた眠れる」工夫を
そして、最後になりましたが、ご相談の物音について考えてみましょう。こちらは大人の生活音を消すことはできませんから、物音でうっすらと目が覚めたときにより早く再入眠する方法を考えると良いと思います。少し手間ではありますが、赤ちゃんがふと目を覚ましたときに、部屋が暗く、隣に眠っている(あるいは眠っているふりをしている)お母さんがいる、という状況を作ってみてください。お父さんの帰宅時間がわかっているようなら、そのタイミングでお母さんが寝室に戻って「入眠したときの安心した状況」を再現します。物音でうっすら目覚めたときに、「なんでもない、大丈夫」と思ってもらう、ということです。毎回でなくてもかまいません。隣で眠っているふりをしてみてください。そして、もしそれで再入眠できて「目が覚めたときの不安感」が覚醒の原因なのだとわかれば、眠るときにお気に入りのタオルを手に持ってもらったり、別の「もの」に気持ちを落ち着かせる役割を代替してもらうような手段を探していきましょう。
赤ちゃんは、なんだか、眠ることでお母さんと離れてしまうような気持ちになっているのかな、と感じることがあります。わたしたち大人が入眠時に感じるような、ふわふわと別世界が侵食してくるようなあの心持ちを、怖いと感じるのかもしれません。生後9ヶ月、まだ、眠るという経験を300回もしたことがないのですから、仕方ないかもしれませんね。大丈夫、少しずつ、眠れるようになっていきます。そのために、生活のリズムと、安心を育てていく。大人にできることは限られていますが、とても大事で地道な道のりです。子どもの生活を、身体の面からも支えていきたいですね。
-infomation-
MotherRingサポーターとは
助産師・ドゥーラ・保育士・ベビーシッター・治療家・リラクゼーション施術者・運動指導者といった、産前産後の家庭へのケアサービスのプロフェッショナルを、MotherRingサポーターと呼んでいます。
様々なケアを提供されている方にMotherRingサポーターとしてご登録いただき、広報活動をお手伝いすることで、産前産後のご家庭が必要なケアを受けられる社会を目指しています。
MotherRingサポーターページへの掲載
MotherRingサポーターのみなさまのサービス内容や受付条件などを、MotherRingサポーターページに掲載いただくことが可能です。
motherringサポーターページの内容・ご利用方法(PDF)
「Webサイトがほしいけど、自分でつくるのは大変……」
「日々のサポートで手いっぱいで、広報活動まで手が回らない……」
といった方のお手伝いをします。
また、産前産後のご家庭にとっても、様々なMotherRingサポーターのみなさまの情報をまとめて見ることができるため、比較検討しやすくなっています。
ご登録までの流れ
①まずは、オンライン説明会にお申し込みください。
オンライン説明会お申し込みフォーム
②MotherRing事務局より、申込書等の必要書類をメールにて送付します。