妊娠中の運動、どのくらいOK?:理学療法士が伝える!楽しくすくすく育つコツVol.40

みなさんは、毎日の子育てを楽しんでいますか。喜びを感じるひとときもあれば、ふと「こんな時、どうしたらいいの?」「これって、このやり方でいいの?」と、迷いが出てくることもあるのではないでしょうか。運動発達の専門家である理学療法士・得原藍さんによる、楽しみながら子どもの育ちをうながす親子の関わり方のコツを教わる連載です。

目次
1.妊娠中の運動、した方がいい?控えた方がいい?
2.まずは妊娠中の身体の変化を知ろう
3.運動時は心拍数が上がりすぎないように注意が必要
4.定期健診で医師に運動の可否を訊ねよう

妊娠中の運動、した方がいい?控えた方がいい?

藍さんこんにちは。妊娠3ヶ月のプレママです。身体を動かすのが好きで、妊娠前にはヨガやジョギングを楽しんでいたのですが、妊娠が分かってから体を動かすことに躊躇しています。妊娠中に運動はOKですか?また、どの程度の強度の運動だったら問題ないのでしょうか。いまのところつわりなどはなく、健康です。適切な運動の目安を教えてください。

まずは妊娠中の身体の変化を知ろう

こんにちは。妊娠おめでとうございます!妊娠前、アクティブに動いていらしたんですね。妊娠も出産も体力を使うので、これまでの運動で培ってきた体力の土台は宝物だと思います。そして、妊娠がわかってから身体を動かすことに躊躇する気持ち、よくわかります。もし自分が無理をしたせいで赤ちゃんになにかあったら・・と思うと、のびのびと運動しづらくなりますよね。まずは、妊娠中の身体の変化についてお伝えしたうえで、どのように運動の可否を判断したらよいか、一緒に考えていきましょう。

まず、妊娠中は、お腹の中で子どもを育てていくことになるので、お母さんの身体もそれに合わせて大きく変化していくものだと思ってください。たとえば、臨月になると、お母さんの血液量は妊娠前の1.3倍から1.5倍にもなると言われています。赤ちゃんに十分な栄養を届けるために、胎盤内で血液を循環させる必要があり、これまでの血液量では足りなくなるので、徐々に適応して身体は血液を増やしていくのですね。

このことだけを考えても、運動中に筋へ酸素を届ける血管が、中を流れる血液の増量でいつもよりも内側からの圧力が高まることをイメージできると思います。これは血圧が高くなりやすいひとつの要因です。また、エストロゲンやプロゲステロンなどの性ホルモンだけでなく、身体の機能を支えるさまざまなホルモンの分泌が変化するので、たとえば運動しなくても呼吸が浅く速くなりやすかったり、大きなお腹を支えるために関節が柔らかくなって反り腰になったり、血糖値の動きが変わったりと、身体にいろいろな影響が出てきます。

運動時は心拍数が上がりすぎないように注意が必要

では、運動をしてはいけないのか?というと、そんなことはありません。「妊婦スポーツの安全管理基準(2019)」には「心拍数で 150回/分以下、自覚的運動強度としては”ややきつい”以下が望ましい」との記載があり、ご相談者さまのように妊娠前からアクティブに動いている場合には医師の許可のもと、妊娠前と同程度の運動を継続しても良い、ということがアメリカやカナダの学会から声明として出されています。今は心拍数を計測できる腕時計などもありますから、運動時には心拍数が上がりすぎないように身体の様子を観察してみてください。また、上記の学会では、週に少なくとも150分程度を分割して行うことが推奨されています。毎日20分程度の運動は、避けるどころか実施したほうが良いのですね。

日常生活の中に運動を取り入れる方法として、たとえばお仕事をしているなら、通勤や職場で階段を使ったり、早歩きをするところから始めてみると、心拍数の変化と運動による疲れ具合の程度がわかってくると思います。ジョギングを再開する際にも、基準となる心拍数の感覚がわかっていると安心して実施できるのではないでしょうか。これまで続けてこられたヨガは、ヘッドスタンドやハンドスタンドのアーサナは避けたほうが良いと思います。身体の重さもバランスも変化しているので、どんなに上級者でも転倒リスクを避けられません。ホットヨガも、妊娠中は大きなリスクになる可能性があるので、やめておきましょう。

定期健診で医師に運動の可否を訊ねよう

最後に、いちばん大切なこととして、ご自身の妊娠の経過を把握していく、ということを挙げさせてください。妊娠前は少し無理ができたかもしれませんが、妊娠中は変化があって当然、これまでの身体とは少し違う、と頭に置いておくべきです。必ず定期的に健診を受け、その上で、医師に運動の可否を訊ねてください。妊娠高血圧や妊娠糖尿病など、しっかり検査をしないとわからない病態もあります。

相談者さまがこれからむかえようとしている妊娠中期は、妊娠中、一番身体が安定するときだと言われています。まずは医師に相談したうえで、ぜひウォーキングで心拍数を確認してみるところから、運動を再開してみてください。運動には気分を改善させる効果もありますから、マタニティ・ライフを明るい気持ちで過ごすことにもつながると思います。

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ライター / 得原 藍

理学療法士。大学卒業後、会社員を経て理学療法士の資格を取得。病院勤務を経てバイオメカニクス(生体力学)の分野で修士号を取得。これまでの知識や経験を生かし、現在は運動指導者の育成、大学の非常勤講師などを務める。また、子育て支援団体との協働で運動発達に関する相談を受けたり、外あそび活動などを行っている。6歳男児の母。