産前産後の女性の身体をケアするセラピストを育成している日本マタニティセラピスト協会。前回のお話で、協会の養成講座に集まる生徒さんのバックグラウンドが、助産師さんや産院勤務の看護師さんといった出産の専門家が増えつつあることで、出産現場の知見を豊富に取り入れた高度な育成カリキュラムが構築されつつあるということがわかりました。最終回、代表の横田真由美さんに伺うのは、協会の向かう未来と、子育てをするお母さんが抱える問題についてです。
(前回のお話はこちらから➡産前産後の自分をいたわるケアの大切さ、伝えたい!Vol.2 現場で生かしてほしいから、実践的なカリキュラムを重視する)
実践的かつ効果的なマッサージメソッドが評判に
八田:前回、養成講座の受講者に、助産師や看護師といった出産の専門家が増えてきたというところまでお話をお聞きしました。
横田さん: はい、ただ受講者の方すべてがそうではありません。一つ言えるのは専門家の方が増えたことで、養成講座で学んだメソッドを出産の現場ですぐに使ってもらえることができるようになりました。現在私自身もたくさんの妊産婦さんを産院でケアしていますし、それこそが力になっています。経験値は大切だとつくづく感じます。卒業生の方との連絡を密にして、技術のアフターフォローをしつつ、現場の声や経験をフィードバックしてもらえることで、養成講座の内容もどんどん実践に即した高度なものにブラッシュアップされているのです。ここまでで十分と思うことなく、これからも積極的にアップデートしていくつもりです!
八田: 協会のメソッドは現在進行形で、常に更新を意識されているのはさすがです。その点がこちらの協会の強みですね。
横田さん: はい。うれしいことに養成講座のコンテンツへの引き合いが多くなり、企業から社内研修に呼んでいただく機会が増えました。
八田: 社内研修のお話、もう少し詳しく教えてください。
横田さん: 一例をあげると、某企業の販売員の方に向けたものがあります。テーマは、産前産後のセルフケアについて。販売時の接客の際に必要な知識が欲しいという事でした。さらに、その企業さんの店舗でのイベントで、ベビーマッサージの知識が援用できるということで、協会のメソッドの一部を抜粋してご提供しました。
八田: それはうれしいですね!
横田さん: はい、卒業生の数はそれほど多くなくても、愚直なまでに丁寧に育成してきた活動が日の目を見たようで、やってきた甲斐があった…と。また別の企業さんでは、ベビーマッサージについて、理論と実技の両方を社員研修の一環としてお伝えしました。
養成講座の内容が確かなことはもちろん、出産の現場で活用され結果を残してこそのご依頼かな、と。本当にうれしいです。今後はこういったさまざまな企業へのコンテンツの提供も推進していきたいと思います。
身体への知識と自分のためのケア法を持っているかどうかが大切
八田: 横田さんが感じる、今の妊産婦さんたちが抱える問題についてお伺いしたいと思います。
横田さん: 今は大家族なんてめったになく、夫婦お2人だけで育児をしているご家庭が多いです。男性側の意識も変わってきたとはいえ、出産は女性しかできないし、その前後の身体の負担も大きいです。まず産前産後のカラダの変化に関する情報を身近なところからでもいいので集めることをお勧めします。
自分がしんどい時にどうケアしてあげればいいか、とか自分の身体が産後どう変化するのかとか、何となくしか知らないまま育児に突入してしまい、予想外の体調不調に対応しきれず、我慢や辛抱の日々になってしまわれる方も見受けられます。その上、産後少しすると、ママの方は復職してからの生活も見据えてこのままじゃ仕事を再開したときに立ち行かない! あれもこれもとこれからのことを想定して気持ちは焦るのに、どうもパートナーにうまく伝えられず、復職の日を迎えてしまって、結局大変な毎日を送らざるを得ない方も。極端な例かもしれませんが、離婚に至るケースも耳にします。
八田: パートナーにうまく伝えられない方が多いのですか?
横田さん: 自分の危機に気が付くのが遅いというか、普段から身体の声をきいて、小さなほころびのうちにメンテナンスやケアするのと同じで、パートナーへのSOSの声も小出しにする習慣をつけないと、一気に爆発してしまいます。自分をよく知って対策を施すことは身体に対しても、パートナーへのメッセージの伝え方においても大事だと思います。
八田: 出産で変化する身体のことをまず知っておくこと、準備の必要があることがわかれば、気持ちを上手く伝えられずに焦ったり、感情を爆発させたりしないで済むという事ですね。
横田さん: はい。例えば、産前から自分の身体に関心があり、ホルモンバランスなどによる出産後の身体やメンタルの変化を知識として知っている方は、やはり赤ちゃんとの暮らしが始まっても、スムースに入っていけているように見えます。育児自体は大変ですし、メンタル面もナーバスになりますから、皆さん日々いろいろあるのはもちろんですが、知って備えている人は違います。
また、復職への意気込みも、妊娠前からパートナーと話し合っておくくらいの方がベターだと思いますが、気が付いた時でも遅くありません。復職の相談は、「あれもやってくれない、これもやらないし、なんでやってくれないの!(怒)」と爆発する前に、なるべく早く、不満というか、問題が小さなうちから始めてみては。そうやって、一回向き合っておくと今後も絶対ラクなはずです。自分の身体の声が聞ける人は、自分の抱える問題にも気づきが早いと、ママを見ていて感じます。
八田: 身体の声を聞ける人は、自分の抱える問題にも気付きが早い…なるほど。
横田さん: 私はそう感じています。これが子供が大きくなってくると、もっと問題が大きくなります。学校に行かなくなるとか、赤ちゃんの頃とは別の大変さ。だからこそ、出産はいいチャンス。これを機に自分を知ること、合わせて身体の声を聞いて、不調を整えることから始めてみると、その後の人生いい方向に行くように思います。妊産婦さんなら、マタニティケアもぜひ試してみてください。ご自身の身体の声を聞いてケアすることで、家族みんなの幸せにつながるのですから。
◎infomation
MotherRingサポーターとは
助産師・ドゥーラ・保育士・ベビーシッター・治療家・リラクゼーション施術者・運動指導者といった、産前産後の家庭へのケアサービスのプロフェッショナルを、MotherRingサポーターと呼んでいます。
様々なケアを提供されている方にMotherRingサポーターとしてご登録いただき、広報活動をお手伝いすることで、産前産後のご家庭が必要なケアを受けられる社会を目指しています。
MotherRingサポーターページへの掲載
MotherRingサポーターのみなさまのサービス内容や受付条件などを、MotherRingサポーターページに掲載いただくことが可能です。
motherringサポーターページの内容・ご利用方法はこちら(PDF)
「Webサイトがほしいけど、自分でつくるのは大変……」
「日々のサポートで手いっぱいで、広報活動まで手が回らない……」
といった方のお手伝いをします。
また、産前産後のご家庭にとっても、様々なMotherRingサポーターのみなさまの情報をまとめて見ることができるため、比較検討しやすくなっています。
ご登録までの流れ
①MotherRingサポーター登録フォームよりお申し込み
MotherRingサポーター登録フォームはこちら
②MotherRing事務局より、申込書等の必要書類をメールにて送付します。
必要事項を記載し、お申し込みください。
③オンライン面談を実施します。
詳細なサポート内容はもちろん、サポートへの思いなど、お聞かせください。
④登録、MotherRingサポーターページにあなたの情報が掲載されます。
サポート内容をまとめた文章や画像などの掲載情報をご提出いただき、MotherRing事務局であなたの専用Webページを作成し、掲載いたします。
MotherRingは、助産師・ドゥーラ・保育士・ベビーシッター・治療家・リラクゼーション施術者・運動指導者はもちろん、様々な産前産後の家庭へのケアを提供されているみなさまのお役に立ちたいと考えています。上記以外の職種の方も、ぜひ一度お問い合わせください。