MotherRingジャーナルでは、妊娠や出産、母子保健に関する世界中のニュースをお伝えします。世界各国の話題や最新ニュースに触れることで、産前産後のご家庭やサポーターのみなさんに、新しい発見や希望をお届けしたいと考えています。
今回ご紹介するのは、ガーディアン紙（英）のウェブサイト「The Guardian」のニュース記事です。
記事によると、新型コロナウイルス感染症に感染したことのある母乳育児中の女性は、最大10ヶ月間、コロナウイルスを中和する抗体を母乳中に分泌し続けるという研究結果が発表されました。また、モデルナ、ファイザー、ジョンソン・エンド・ジョンソン各社のワクチン接種で獲得した抗体が、母乳にどのくらい移行するのかについての研究結果も発表されています。
感染者の88％が母乳中に抗体をもつことが明らかに
ニューヨーク・マウントサイナイ病院のレベッカ・パウエル博士は、新型コロナウイルスに感染した75人の女性から母乳を採取し、そのうち88％が新型コロナウイルスウィルスを中和する働きをもつことを明らかにしました。また、最大10カ月間、母乳の中に抗体が分泌され続けることも明らかになりました。
これまでにも、母乳中に新型コロナウイルスに対する抗体が検出されたことがありましたが、その抗体がウイルスを中和できるか、コロナウイルスに感染した後、どのくらいの期間、抗体をつくり続けるのかは不明でした。今回の研究結果によって、それらが明らかになりました。
また、パウエル博士は、母乳から分泌される抗体が乳児だけでなく重度の新型コロナウイルス患者にも有効であると考えているようです。
ワクチン接種で獲得した抗体はどれくらい母乳に移行するか
パウエル博士は、ワクチン接種による母乳中の抗体についても研究を進めています。
50人の女性に、ファイザー社、モデルナ社、ジョンソン・エンド・ジョンソン社（以下J&J）のいずれかのワクチンを接種。それぞれのコロナウイルスに対する抗体の母乳への移行を調べました。
その結果、モデルナワクチンを接種した女性は全員、ファイザーワクチンを接種した女性は87％が、母乳中にコロナウイルスに対する抗体を持っていることが分かりました。一方、J&J社のワクチンは、母乳中にコロナウイルスに対する抗体を持っていた女性は38％にとどまりました。
「モデルナやファイザーのような“RNAワクチン”で作られる抗体のレベルは、他のワクチンに比べて非常に高いことがわかっています。感染から身を守るためには、必ずしもそれほど多くの抗体は必要ではありません。ですが、授乳によって乳児を感染から守るには、血液中の抗体がどれだけ多く乳汁中に移行するかにかかっています。J&Jで採用されている“ウイルスベクターワクチン”では、刺激される抗体の量が少ないため、乳汁中の抗体の量も少ないのだと考えられます」とパウエル博士は述べています。
研究チームは現在、アストラゼネカ社のワクチンによって引き起こされる母乳中の抗体反応も調査中です。
Antibodies in breast milk remain for 10 months after Covid infection – study
コロナの感染後、母乳中の抗体が10ヶ月間残る-研究結果
The Guardian
Mon 27 Sep 2021 06.00 BST
コロナ禍でも、安心し満足できる妊娠〜子育てを
コロナ禍での妊娠・出産・育児には、さまざまな不安があると思います。今回の研究結果は、そんな不安に対して、希望の持てるニュースになったのではないでしょうか。また、各社のワクチンによって、母乳に分泌される抗体量に違いがあることも明らかになりました。産前産後の女性にとって、判断の指標になれば幸いです。
コロナ禍でも安心し満足できる妊娠・出産・育児ができるよう、MothrRingジャーナルでは、今後もさまざまな最新のニュースをお届けしたいと思います。
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