好き嫌いが多すぎる子ども|理学療法士が伝える!楽しくすくすく育つコツVol.43

みなさんは、毎日の子育てを楽しんでいますか。喜びを感じるひとときもあれば、ふと「こんな時、どうしたらいいの?」「これって、このやり方でいいの?」と、迷いが出てくることもあるのではないでしょうか。運動発達の専門家である理学療法士・得原藍さんによる、楽しみながら子どもの育ちをうながす親子の関わり方のコツを教わる連載です。

-目次-
1.離乳食も苦戦した息子。4歳になっても野菜を嫌がります
2.大事なのは「楽しいと思える食事の環境づくり」
3.「おやつ」から始めて、楽しみながらチャレンジを

離乳食も苦戦した息子。4歳になっても野菜を嫌がります

得原さんこんにちは。4歳になる息子の偏食で困っています。野菜と魚はまったく食べず、肉はハンバーグと肉団子以外は嫌がります。白米とパンはよく食べています。離乳食時代も相当苦戦したのですが、そのまま偏食へとつながっている感じです。もう少し小さい頃は、野菜なら細かくハンバーグに少しだけまぜたり、少し大げさにおだてたり褒めたりしていまよりは食べていたのですが、成長とともに「食べたくない!」という意思が強くなっているようです。

どうせ食べないものを毎日作り続けるのも辛くて、つい白いご飯やトーストだけの食事にしてしまったり、「いや、これじゃだめだ」と思っておかずを作ってはやっぱり見向きもされずにイライラして叱ってしまったりと、子どものご飯のことが相当なストレスになっています。
身体は大きい方なため、自治体の保健指導では「発育にはいまのところ問題がないので様子を見て」と言われているのですが…。
偏食の子どもとどう向き合うべきか、アドバイスをお願いします。

大事なのは「楽しいと思える食事の環境づくり」

こんにちは。4歳のお子さんが野菜や魚を食べないとのこと、せっかく作ったものを食べてもらえないと悲しい気持ちになりますよね。「栄養バランス」ということを念頭に置くと心配になる気持ちもよくわかります。一方で、少し視点を変えてみると、保健指導では問題ない、と言われたとのこと。これはとても大事なことです。いますぐに発育発達に関わるような状況ではない、ということをまずは頭においておきましょう。それだけでも大きな安心材料だと思います。そのうえで、今日は、4歳という年齢に注目して、食べるということを考えてみたいと思います。

まず、4歳頃の子どもたちは、自分の意志の主張がはっきりしてきます。いやいや期とはまた違って、気持ちの表現ができたり、自分と他者を比較したりすることもできるようになってきます。遊びも、3歳くらいまでは友達と一緒にいるように見えても実は一人遊びが中心だったのに対して、4歳にもなると少しずつ協力や連帯感が生まれてきているのではないでしょうか(もちろんその点でも性格や個人差による違いはあります)。彼らはここから数年かけて、人間関係を広げながら、社会の入口である学校での生活に入っていくことになります。食事との関連性で言えば、集団での食事も増えてきますね。保育園や幼稚園の食事、もしかしたらもうすぐ、宿泊体験などもあるかもしれません。小学校に入れば、給食もあります。つまり、「食事=親とのやりとり」ではない場面が少しずつ増えていくのですね。そうなると、お子さんと食べ物との関係性も変わっていきます。食事が媒介となって楽しい時間を過ごすことも多くなりますし、周囲の子たちがどのように食べているか、という様子も垣間見ていくことになるでしょう。そしてその中で、どのように食べ物と関わっていくか、ということについても少しずつ変化が見えてくることでしょう。少し長い目で、お子さんと食べ物との関わりを見守ってあげるのもよいかもしれません。

食卓は、栄養摂取の場であるとともに、交流や発見の場でもあります。そう考えると、まず大切なのは、食べるという行為自体を嫌いにならない、誰かと食事をともにすることが楽しいと思える環境づくりをしてあげたくなってきます。幸いお子さんは、好き嫌いは多いかもしれませんが、しっかり食べて十分な栄養を取れている。つまり、食べることは嫌いではないのですよね。その部分は、大事にしてあげたいところです。

「おやつ」から始めて、楽しみながらチャレンジを

長い目で食事とお子さんとの関係を観察しながら、おいしいねと食べられたことを喜んでいきながらの日々を過ごせるといいなと思うのですが、ひとつ、相談の中から工夫できる余地があるのではないかと思ったことがあります。それは、いろんなかみごたえの食べ物を、おやつから試していってみる、ということです。ヒントになったのは、お子さんの好きなものが柔らかい食べ物に偏っている、ということ。白米やパン、ハンバーグなどが好きで、野菜はあまり・・・ということですから、もしかしたら硬い触感が好きではないのかもしれませんね。そう考えると、もぐもぐかみかみできるような食べ物で、好きなものはないか、もしあるのならばそこを糸口にして、かみごたえのあるものを試してみるのはどうかと思いました。例えば、りんごのしゃくしゃく。干し芋のもぐもぐ。とうもろこしのつぶつぶ。さまざまな触感のおやつを、家族で一緒に「しゃくしゃくするね!」「つぶつぶだね!」と言葉にしながら口にしてみるのはどうでしょうか。一般的に幼児の口腔内は大人よりも敏感で、苦手な触感や味わいも多いと考えられています。上記のような甘い果物や野菜で、まずはお口の体験を増やしてみるのはどうだろう、と考えました。
季節に合わせて、スーパーに並ぶ果物から、好きなものを選んでもらうのもいいですね。自分が選んだものにチャレンジすることは、きっと苦手のハードルを低くしてくれるでしょう。

どんなときに楽しそうに食べているか。どんなときに食べ物に興味を示しているか。そんなお子さんの様子を観察しながら、無理強いすることなくゆっくりと進んでいって大丈夫です。お母さんもぜひ、お子さんとの食卓でおいしいものを食べてください。幸せそうに食べ物を頬張るお母さんの笑顔も、きっと美味しさの源のひとつになると思います。

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ライター / 得原 藍

理学療法士。大学卒業後、会社員を経て理学療法士の資格を取得。病院勤務を経てバイオメカニクス(生体力学)の分野で修士号を取得。これまでの知識や経験を生かし、現在は運動指導者の育成、大学の非常勤講師などを務める。また、子育て支援団体との協働で運動発達に関する相談を受けたり、外あそび活動などを行っている。6歳男児の母。